ホテル東横INN弘前駅前の裏に、あまり弘前の人にも知られていない建物がある。吉井酒造の事務所と倉庫である。弘前駅前の日本チケットの前の道を線路側に行くと、左手に門が見える。個人の建物であるので、内部については全くわからないが、門の左手に事務所とそれに連結した白壁の倉庫がある。かなり大きな倉庫で、幅が20m以上、奥行きも30mくらいある。外から見る限り比較的、コンデションもよい。門の右手にも白い漆喰で塗られた小さな蔵のようなものが並んでいる。グーグルマップで見ると倉庫の裏には、さらに幅は15mくらい、奥行きは50mくらいのさらに大きな倉庫があり、奥は突き当たって右に30mくらい曲がる。そしてこれに連結するような形で別の幅15m、長さが30mの倉庫がある。コの字になった倉庫を合わせると、恐らくは全長で100m以上ある。
できたのは昭和14年で82年経つ。台風で、大きな倉庫の屋根が飛ぶ被害があったものの、その後、綺麗に修復された。全体的にはあまり利用されていない割にはよく管理されている印象を受ける。それでもオーナーであった吉井千代子さんが2年前に亡くなり、その後、この土地、建物が今後、どうなるのかは全くわかっていない。千代子さん自身、子供がいなかったので、その縁者が相続したものと思われるが、活用方法がなければ、壊され、土地売却となる。隣の日通の空き地と同様に、駅前の大きな更地ができるだけであろう。
明治頃のレンガ倉庫であれば、函館の金森レンガ倉庫や横浜の観光スポット、赤レンガ倉庫のように多くのテナントを入れて再開発という手はある。それらに比べるとこの吉井酒造の倉庫、事務所はそれほど古くはない。それでも戦前の古い建物であり、場所的には弘前駅前のいいところである。全く内部も知らないので、かってな推測で話をするが、その活用方法について検討したい。
まず入口の事務所と白壁倉庫は、レストランや青森市のA-Factoryのような観光物産品を売る場所が良かろう。駅にも近く、利便性は高い。一方、総全長100m以上ある大きな倉庫については、土を敷きしめ、雪の降る冬場の運動場にすれば、どうであろうが。弘前市も武道館近くに克雪トレーニングセンターがあり、人気があって利用者も多い。ここの大きさは幅が50m、横が55m、高さは15mと、野球場の内野くらいの広さである。吉井倉庫は克雪センターほど幅はないものの、全長はそこそこあり、ランニングやピッチングなどはできよう。またギリギリかもしれないが、フットサルコートやテニスコートも作れるかも知れない。また子供用の土の公園兼運動場も保育園など冬場の運動場のない園児には必要かもしれない。雪の降る弘前では、屋内の広い場所はそれだけでも貴重である。
他にはベルギーやフランス、リトアニアなどヨーロッパ各国に見られる屋内型のマルシェもいいかも知れない。肉や魚、野菜などの食材を売るだけではなく、花屋、ワインショップ、イートインの屋台などの立ち並ぶもので、若い人にさせれば、おしゃれなものになるに違いない。昔、えきどてプロムナードでしていたマルシェのようなものが、この倉庫に集結して、店をすれば、それは楽しいものになろう。また津軽三味線は全国的に知られており、毎年、弘前でも全国大会が開かれているものの、観光設備としては、常設演奏場としては津軽ねぷた村くらいしかなく、「津軽三味線博物」のようなものがあってもいいかも知れない。
色々と活用のアイデアはあるし、特に若者の知恵を借りれば、かなりおしゃれな空間に生まれ変わる可能性もある。ただ若者は資金、経営面では経験が不足しており、弘前市、国と所有者が協力して検討し、例えば国、市、民間企業、所有者が改築、リノベーションを行い、それを起業する若者に貸す。さらに最近ではクラウドファンドという手もあり、そのまま何もせずに、壊されるには避けたい。弘前市が音頭をとって、是非とも弘前れんが倉庫美術館につぐ新たなプロジェクトに臨んでほしい。
少なくともニュース、テレビや雑誌特集などでいいから、この建物を取り上げてもらい、その内部について紹介してほしいものである。