2025年10月1日水曜日

イスラエルという国



イスラエルというと極東の日本からすれば、よほど遠い国で、ぼんやりした印象しかない国の一つである。ナチスドイツで徹底的に虐殺されたユダヤ人が戦後、自分たちの国として作ったのがイスラエルで、中東という地域に作られたため、数回の中東戦争を経て、独立国として存在している。アメリカの強力な支援がある。防御のために核兵器を持っているが、アメリカは黙っている。などなどのイメージである。またマスコミ、ことに映画関係者の中にユダヤ人が多くいるせいか、ユダヤ寄りのハリウッド映画が多く、古くは「ベンハー」、「栄光への脱出」、新しいところでは「シンドラーのリスト」、「戦場のピアニスト」、「ライフイズビューティフル」(イタリア映画)、などから、可哀想だというイメージを持つ人も多い。しかしながら、最近のイスラエルのパレスチナ人への虐殺については、自分たちが昔ナチスドイツからあれだけ虐待され、殺されたと同じことをなぜ、ユダヤ人はするのか、疑問に思う人も多い。私もその1人で、パレスチナ人犠牲者は2025.9の段階で6.8万人を超え、これは一方的な虐殺といえよう。ひどいことである。

 

このイスラエルの論理をわかりやすく説明しているのが、イスラエルの歴史学者、イラン・パペ教授の解説である

https://nordot.app/1236210441196290377?c=899922300288598016

 

彼の説明によると、イスラエルの国家的核心、シオニズム運動について「シオニズム運動は一種の植民地主義に基づいています。ただ大英帝国によるインド支配のような、先住民搾取が目的の植民地主義と異なり、(米国のように)先住民をその土地から排除することが目的で、歴史家の間では“入植者植民主義”とや呼ばれています」としている。そしてパレスチナ人を追い出す過程として、村落を焼き払い、家屋を破壊し、住民追放や民間人の虐殺をした。まさにナチスドイツが行った民族浄化と同じことをしたとしている。

 

こうした危険なシオニズムの考えは、世界のユダヤ人の間では少数派であるが、イスラエルでは多数派をしめている。建国当時、欧州系ユダヤ人の数が少なかったため、中東や北アフリカのアラブ系ユダヤ人を呼び寄せるも、これらの人を「原始的で非近代的」と差別し、見下した。同じイスラエルにも、欧州系ユダヤ人と外見は周辺のアラブ諸国と変わらないアラブ系ユダヤ人がいて、支配階級は欧州系というヒエラルキーが存在した。これは知らなかった。そして今度は収入の低いこれらアラブ系ユダヤ人が劣等感と承認欲求からアラブ系のパレスチナ人に対して過激で暴力的になった。つまり、イスラエルは、欧州系ユダヤ人>アラブ系ユダヤ人>パレスチナ人という階層にわかれている。

 

欧州系ユダヤ人は左派と右派にわかれ、武力によるパレスチナ人追放を重視するシオニスト右派は、劣等感を抱いたアラブ系ユダヤ人の支持基盤となってきた。比較的、パレスチナとの和平に取り組んでいた左派が2001年の米国多発テロ事件以降、次第に右派に押されるようになり、今日のネタニヤフ政権につながっていった。欧州系ユダヤ人=右派+左派、右派=アラブ系ユダヤ人という構図となる。さらにネタニヤフ政権には、イスラエル国内でも差別的と禁止されていた極右の閣僚がいて、彼らはユダヤ人を反ユダヤ主義から守る名目で暴力を肯定した。パレスチナ人への偏見を容認する学校教育や軍隊教育、マスコミで、国民に浸透している。これが現在のパレスチナ人の虐殺に要因となっており、極端なジオニズム政策が民族浄化につながっている。

 

もちろん世界のユダヤ人の多くは、こうした入植者植民地政策を拒否しているが、ここ20年間のイスラエルは、完全に右派による洗脳で国民の多くは右派が推進する苛烈な政策を支持している。さらに悪いことにどんなことをしてもイスラエルをアメリカは常に支持すると考え、また実際にアメリカ、トランプ政権もこうしたイスラエル右派を支持している。トランプのアメリカも、また開拓時代に西部へインディアンを追い出す入植者植民政策をしていた国だけに、感情的にはイスラエルの政策を理解できるのだろう。

 

アメリカ政府がイスラエルを完全に拒否し、イスラエルの根幹政策であるシオニズムを撤廃させる以外にパレスチナ問題は解決できないのかもしれない。難しい問題である。

 

*欧州系ユダヤ人(アシュケナジム)とアラビア系ユダヤ人(ミズラヒム)の割合は、前者が44%、後者が45%と拮抗しているが、いまだに政治経済は欧州系ユダヤ人が牛耳る。

 


 

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