2025年10月15日水曜日

ネットでいい矯正歯科医院を見つけるのは難しい


日本でもIT企業を中心に、いわゆるスタートアップ企業が続々と出ている。若い方がこうした新しい試みをすることは、日本にとってとても大事なことである。ただあくまで一部の企業であるが、過剰に業績を強調する会社がある。昔は、世間に認知される手段が、新聞、雑誌、テレビに限られていたし、これらのマスメディアはある程度のチェックが入ってから取材されるので、そこにあまり自己宣伝の要素はない。ところが今やSNSの普及により、ツイッター、フェイスブック、インスタ、You-tubeで簡単に発信でき、かなり誇張したものを流している。もちろんいまだにオールドメディアと称するテレビや雑誌、新聞では、発信にはかなり慎重に精査しているが、ネット上では嘘も含めてある意味、フェイク情報が満載しており、その判断は非常に難しい。

 

こうしたアメリカ的な経営方向、S NSを縦横に使い、会社の価値を実際以上に高く見せる手法は、さらにいうと株価操作とも言える楽天的な将来性を語る手法は、うんざりである。会社業績が悪い会社ほど、より会社の将来性、未来は明るいと言うし、そうした情報を大量に流す。結果、株価が上がることこともあるが、最近では、会社、アナリストのこうした予測を、Googleの口コミ同様にあまり信じていない。

 

一例を挙げると、ここ数年、雨後の筍のように出現したマウスピース矯正、A社はホームページで国産メーカの中でのシェアーは40%を占めているというが、B社のアンケート調査では、A社のシェアーでは全体の6%、国内シェアーの10%しかないとしている。そしてA社は年商60億円を公言しており、これに従えば国内のマウスピース全体の市場は60億円÷0.61000億円となる。

 

厚労省の患者調査によれば、年間の初診の歯科矯正患者数は292000人で、アナリストは歯科矯正の平均治療費は100万円なので、これをかけると約3000億円が市場としている。実態は学校検診や本人が歯並びを気にして、歯科医院に行っても実際に治療する人は少ないし、治療する人は何件もの歯科医院を回るため、矯正歯科の市場はこれほど大きくはない。全国には矯正歯科専門医院が約1000軒あり、それぞれ年間多く見て100名の治療開始者がいると計算して、年間で10万人、平均治療費を80万円として800億円、一般歯科での治療する人も同数いて、少し高いが治療費も同額として80億円、計1600億円くらいが実態であろう。予想値の半分くらいである。

 

1600億円が新規矯正患者による年間の収入だとすると、1000億円規模となっているマウスピース矯正はすでに年間の矯正治療費の52.5%ということになる。アメリカでのマウスピース矯正の普及率は23%で、ワイヤー矯正が77%だが、アメリカより日本の方が、マウスピース普及率が高いことになる。アメリカでも、最大手のインビサラインを扱うアラインテクノロジー社の株価が暴落し、1/6 になっており、その理由として顧客数の減少が挙げられている。スマイルダイレクト社の倒産も含めて、すでにこの業界が下降局面に入っていると思われ、さらに業者の言うようにシェアーであれば、これはもっと厳しい。どこかに統計、アンケート上の嘘があるとしか考えられない。

 

これは私の少し知っている業界の話であるが、同じようなことは今やネット上では当たり前になっており、統計、調査上の嘘をつくことが普通になっている。Googleの高評価の口コミがヤラセというのはよく知られているし、化粧品や健康食品の満足度調査も適当と思っている人も多い。本当に正しい情報を得るのはますます難しくなっている。さらにわかりにくくしているのが、専門医の資格を持つためには各学会での倫理規定を守らなくてはいけない、そして多くの学会では医療広告法に違反する不適切な広告を禁止している。つまりまともな治療を行うところは学会の倫理規定で、ネット上で派手な広告が出せない。いざ治療をしようにも上位検索の多くは、専門医でないと言うこともありうる。どこで治療しようかと検索すると怪しい歯科医院が上位となり、まともな歯科医院は学会の倫理規定で派手なHPは出せず、下位となる。またGoogleの口コミの多くもやらせである。企業競争の激化によりますます巧妙な宣伝手法が取られるようになり、さらにアメリカ式ビジネス手法が広まる結果、倫理のなくなった金と訴訟のリアルな世界に日本も入ろうとしている。難しい時代である。


 

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