2012年2月16日木曜日

歯科用感度400増感紙



 歯科用レントゲンによる被爆線量を下げる方法の一つとして、増感紙の感度を上げる方法がある。通常のパントモ写真やセファロにおいては、大体感度200から250が使われているが、ヨーロッパでは被爆線量への制限が厳しく、ヨーロッパ放射線学会のガイドラインでも感度400の増感紙を使うことが推奨されている。

 そこで、当院でも感度400への移行のため、コダックのレイネックス400を注文した。納期がかかると言われたが、今書いている雑誌原稿に一部載せたかったので、納期を急がせた。

 レイネックス250からの移行であるから、単純に照射時間は250/400になると考え、成人の場合、照射時間を1.2秒で撮影しているので、0.8秒で試してみた。何枚か私や、従業員で撮影したが、どうしても全体的に明るく、メリハリもきかない。そこで照射時間を少し上げていくと、大体1.0秒で同質な画像が得られた。一応、朝日レントゲンにも問い合わせたところ、単純な感度比率だけでは決まらないようで、1.0秒くらいとの返答があった。

 この場合の被爆線量は、ほぼ照射時間に比例するので、1.0/1.2であるから約20%の軽減となる。これで画像の鮮鋭度がかなり落ちるようであれば意味ないが、上の写真が感度250、下が感度400で肉眼的には全く変らない。そこで従来の250の照射時間の大体0.8倍を目安に撮影している。ここ3週間ほど定期検査、および小児の撮影すべて感度400で撮影しているが、大きな問題はない。ただ今回は、たまたま私のところのセファロ撮影機は、すべてマニュアルで撮影しているので、こういった変更も容易であった。ただオート撮影の場合は古い機種では対応できないようだ。それ故、オート設定で撮影しているパントモも感度400するか今、迷っている。

 またデンタルフィルムは機械の設定を変えれば容易にD感度からE,F感度に変更できるので、フィルムがなくなり次第、感度の高いものを使用したい。

 今回、歯科用レントゲンについて、ある程度調べたが、結論として、デジタルレントゲンの被爆線量の優位性はそれほど大きくはなく、フィルムと同等あるいは1/2くらいということであった。確かに画像を落としていけば、1/10の線量でも撮影が可能かもしれないが、本来診断のためのレントゲンというのは最高の画像を求めるもので、いくら1/10とは言われても、そういった条件で撮影する歯科医はいない。

 HP上で当院のレントゲンはデジタルのものを使っており、その被爆線量は従来の1/10で安全です とうたっている歯科医院は多い。ただこういった先生に聞くと、メーカーがそういっているのだから、そのまま信じてHPに載せているという。確かに歯科医には責任はなかろう。一部メーカーは英文によるHPでもこういった宣伝文句を掲げているが、特にヨーロッパでは規制が厳しく、シロナ、プランメカなどヨーロッパのメーカーは数年前まで従来の50%、70%の線量の軽減とカタログ上でもうたっていたが、今はデジタルだからといって直接的な線量の軽減については書いていない。むしろ子供ではパントモ、セファロの撮影範囲を小さくする、歯列中心に細長く撮影するなど、照射域を狭めて線量軽減に努めており、これは確実の被爆線量の軽減に繋がっていく。日本のメーカーも是非とも実際、歯科医院での設定を基準にして測定し、結果を報告すべきであろう。そうしないと歯科医は、被爆線量を気にする患者には「この装置での撮影は1/10被爆線量です」と説明することになり、患者から歯科医が訴えられる可能性も全くないとはいえない。

 ただコダックは倒産し(医療用フィルムは今のところ問題ない)、またメーカーのほとんどの機種がデジタルになっている状況で、いつまでフィルムでもつか、さらに現在の機種が使えなくなった場合は、どうするかまだまだ悩みは尽きない。

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