当院ではマルチブラケット装置による治療終了後、保定に入ってから、1ヶ月後にレントゲン検査(セファロ、パントモ)を行い、その後、2ヶ月後、さらにそれから3ヶ月後に保定装置の着用は夜間だけとなり、今度は6ヶ月ごとにみていく。保定2年で、最終検査をして模型、レントゲン(セファロ、パントモ)、口腔内、顔面写真を撮って、問題がなければ終了とし、何かあれば連絡してもらうようにしている。
最近は2年検査を終わって時点で、患者に矯正治療をして良かったかと聞くとほぼ100%はしてよかった、みんなから歯並びがきれいと言われる、人生が変わったなどの感想を聞く。もちろん多少不満があっても聞かれるとこう答えると思うが、それでも治療者としてはこうした声はうれしい。
矯正治療の目的は、教科書的には咀嚼機能の改善、発音の改善などの機能的改善も書かれているが、ほぼ90%は見た目の改善が大きい。とくに成人患者の場合は、ほぼ100%は見た目の改善を希望して来院する。そのため最終的に患者が治療結果に満足したかが最重要となる。残念ながら、不満足のまま終わることもあるが、術者としては常に最善の治療結果を求めている。とくに治療後期になってくると、かなり細かい要望が増え、それに対応することが多いが、中には勘違いもあるので、ここのまとめてみる。
1.上の前歯の段差
上の真ん中の一番大きな前歯、中切歯と隣の側切歯との段差が気になる患者は多い。これは中切歯と側切歯では幅が違い、コンタクトポイントをきれいな曲線にするためには必ず段差ができる。以前のスタンダードエッジワイズ法ではここにファーストベンドを入れたくらいである。どうも真ん中の前歯に比べて隣の前歯が引っ込んでいるという患者にはこうした説明をしている。また切縁部も本来は中切歯に比べて測切歯は少し低くなるが、これも不満に思う患者さんがいる。バイオプログレッシブの流派ではここを揃えることもあるので、患者が希望すればベンドをいれて修正する。
2.ブラックスペース
上下の前歯の歯肉に三角形のスペースができることがある。これをブラックスペースというが、前歯の形態が三角に近いほど、あるいは歯の長さが長いほど、こうしたブラックスペースが出来やすい。この場合は、隣接面を細いバーでディスキングして隙間を閉じれば、かなりブラックスペースが減少するので、上顎切歯では多用している。一方下顎切歯ではもともと歯が小さいので、できればディスキングしたくないので、そのままの場合も多い。
3.歯と歯の隙間
歯と歯の間の隙間、問題になるのは第一小臼歯抜歯ケースでは第二小臼歯と犬歯の隙間を気にする方も多い。もちろんこの隙間は原則的には閉じるのが基本であるが、前歯部、臼歯部の咬合関係が緊密な場合、なかなか閉じない、閉じてもまた開くことがある。保定中に開いた場合は、犬歯の遠心にレジン充填で形態修正をすることもある。
4.前歯のねじれ
前歯のねじれを気にする方も多い。一見してもほとんどねじれがわからないほどのものでも、ねじれていると主張する。基本的には患者が満足するまで修正する。
5.口唇の突出感
非抜歯で治療した場合、最初にいくら説明しても、口元の突出感を気にする人が多い。多くの場合は4本の小臼歯を抜歯することになるが、治療方針の変更のために治療期間が延びる。個人的な意見では、日本人などアジア人は白人の横顔、口元が入った顔貌を好むため、70%の症例は抜歯症例となる。そのため、抜歯症例が不得意なアライナー矯正では患者も不満がでるだろう。
以上、治療における患者の要望を列挙したが、装置撤去前であれば要望にそえることもできるが、撤去前に何度も次回はずすが気になる点はないかと確認してから外しても、あとでここが気になると言い出す患者がいる。これは術者としては再装着の材料代や時間を考えると避けたい。
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