2018年1月26日金曜日
2018年1月24日水曜日
弘前市の地番
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新町 明治六年ころの地番 |
現在の新町の地番 |
2018年1月17日水曜日
都会の歯科医院
国民皆保険が施行されたのが昭和38年だが、当初は5割負担で、本人負担なし、家族3割負担となったのは昭和43年ころで、その頃から歯科医院に来院する患者は飛躍的に増えた。それまで歯科治療は基本的には保険が効かず、金がない人は歯が痛くなっても今治水などを塗って痛みを押さえていた。また今では考えられないが、ゴールドの開面金冠と呼ばれるものを前歯につけるのが金持ちも証でもあった。今見ると、こっけいなものであるが、当時は別段、変だとも思わなかった。
こうした訳で、私が中学校に入るころから、歯科医院だった我が家も急速に潤い、借りていた診療所、二階の狭い家から、近くのところに住居を引っ越すことなった。“パントモ買ってハワイに行こう”のキャッチフレーズでパントモX線撮影装置が売れたのはこの頃で、ほぼ全患者にパントモを撮っていたので、確かに1年程でハワイ観光するほどの収入となった。患者は多く、朝9時に診療所を開けるのだが、8時ころから行列ができるため、早目に診療所の玄関の鍵を開けた。昭和38、9年ころに歯科用タービンが売り出され、それまで電気エンジンで削っていたものが歯科用タービンの普及で一気に早くなった。それにより一日、十数人しかみられなかった患者数が大幅に見られるようになった。子供も大人も虫歯が多く、朝の9時から夜の10時まで患者が途切れない。
この頃から、歯科医も増長するようになり、安い保険点数でやっていられない、同じ治療するなら自費でする、保険医を辞退すると言い出した。日本歯科医師会でも保険医総辞退という運動をおこしたり、医科とは歩調を合わせないようになった。昭和50年になると、ポーセレンがかなり普及するようになり、これで歯科医はさらに潤い、医師より歯科医の方が収入の多かった時期でもあった。時計は金無垢のロレックス、車はベンツ、愛人を囲う人もいた。この時期が絶頂期で、その後は、歯科医師数の増加に伴い凋落していく。当時のバブリーな歯科医院は、その後はみごとに凋落している。
ここ十年ほど東京、大阪など都会を中心に、自費を主体とした歯科医院が増加している。昭和50年頃と違うのは、当時は患者が多くいて、保険でも充分な収入があったが、それ以上の収入を求めたのに対して、現在は保険収入で経営が厳しいため自費診療を行う。廉価の診療費で多数みるという方法がとれないため、高額な自費診療で稼ごうとする。例えば、歯石除去は保険が適用できるが、拡大鏡をつかった場合、自費となり50万円という歯科医院がある。また虫歯を取っていって神経までいったなら、ここからはやはり拡大鏡を使った保存治療となり、その費用に15万円、さらに補綴処置に20万円かかると言う。まあやりたい放題で、私からすれば、こうした歯科医院は医療法に違反しているから、保険診療は一切しない、自費診療だけにすればよいと思うが、初診、検査、抜歯などは保険で、補綴、歯内療法、歯周治療など、おいしいところだけ自費にしている。
東京に住む娘のことだが、少し下の歯がでこぼしている。すると親が矯正歯科医と知っていても、平気で若手の素人の歯科医が矯正治療を勧める。それも200万円という。怖いものしらずである。また、私のところで矯正治療を受け、高校卒業後に上京して、大学に行く患者が多いが、何かの事情で都内の歯科医にいくと、すべての金属のインレー、クラウン、充填などは再治療を勧められる。こちらで私が見て、明らかに問題はないと判断した患者でもそうで、“白くて目立たないのにしましょう”と言って全顎の歯科治療を勧められる。
田舎の、それも矯正専門医がこうしたことを言うのはかなり批判があろうが、東京の歯科医に聞くと、田舎は患者が多く、保険でも収入が多く、経営的に問題ないだろうが、都内では家賃、人件費などがかかり、保険診療では厳しくてやっていけないという。確かにそうだろう。だったら何も都内で開業する必要はなく、群馬、埼玉、茨城など周辺地域を探せば、もっと患者の多いところがあろう。私の場合は、生まれは兵庫県だが、開業に有利な青森県で開業した。商売とはそういうもので、患者数の少ない都内で開業するなら、そうしたことはわかりそうなものである。さらに言うなら、保険医療機関を標榜しながら、自費に誘導するというのは、明らかな医療法違反であり、こうした姑息な手段を取るのなら最初から自費診療だけで診療すればよい。是非、勇気を持って自費診療だけでやってほしいし、患者からすれば、最初から保険は効きませんと言われた方が、治療途中で軟象をとって露髄した瞬間に自費になるよりはいいだろう。父も歯科医、兄も兵庫県で歯科医院を開業していて、私も子供のころから歯科の状況はある程度わかっている。都会でもまじめにやっている歯科医院がほとんどと思われるが、一部の歯科医院の自費誘導が露骨であり、ホワイトニングが特定商取引法に入ったように、矯正歯科など歯科治療(自費)への締め付けも今後、厳しくなる可能性がある。
2018年1月12日金曜日
医療の平等性
日本では、健康保険に加入していれば、誰でも、どこの病院に行ってもよく、天皇陛下を手術した著名な先生から、健康保険の安い費用で手術を受けることは可能である。これが公的保険制度のないアメリカだと、こうしたドクターに手術してもらうのは1000万円を越える費用が必要であり、実体は金持ち専門の医者となる。スーパドクターは凄い邸宅に住み、自家用飛行機や別荘を所有する。一方、貧乏人は、大学の若手の研修医や人種差別的になるが、インド、アジア系の先生の手術を受けることになる。
アメリカ人の資本主義による平等感覚からすれば、金持ちで、高い医療費が払えるなら、より高度な治療を受けることができ、金がなければ最低限の治療しか受けられない。金があれば高いホテルに泊まるというのと全く同じ発想であり、貧乏人はそれに対して不満はいわない。イギリスはアメリカと違い公的保険が発達し、基本的には医療費は無料となる。すばらしい制度のように思えるが、まず日本のようなフリーアクセスがなく、あらかじめ決めておいた家庭医のところに行き、問題があればより上位の病院を紹介され、そこで検査や治療を受ける。問題は家庭医から紹介され検査までの日数が相当かかり、場合によっては数ヶ月かかる。そのため、一刻も早い検査、治療を受けたい患者は、自費による治療を受けることになる。矯正歯科でも、保険は適用できるが、保険患者は午前中など、学校を休まなくてはいけない時間しか予約を入れないし、患者に通院時間を選べない。一方、自費の患者は好きな時間に予約を取れるようになっている。日本ではこうした自費と保険患者にサービス面で区別することは大きな問題となり、指導や保険医の取消を食らう。他にもドイツや北欧などの公的保険が充実している国も、自費と保険では、患者サービスに差をつけることが多い。アメリカでは、例えばコロンビア大学医学部附属病院では、金持ち専用の病院を持っている。要するに日本を除く国では(中国も含めて)、医療面での公平とは金があるものはいい治療、いいサービスを受けられ、金がない、公的保険は最低限の医療を受けることが普通なのである。
こうした日本の医療の平等性は、世界でも稀あるいは唯一のものであり、日本に住む外国人からすれば、安全性とともに大きなメリットと考えている。実際、外国語指導助手(ALT)の先生の中には、これは津軽の場合だが、腰や顎の手術を受けたいがアメリカでは数百万の費用がかかるため、わざわざALTに応募する人がいる。日本では安い費用(通常数万円)で治療することができるためである。こうした制度を維持するには国も財政上大きな負担となっているが、一方、安い医療費で治療を行っている医療従事者の負担も大きい。実力のある医師は、限られた時間で多くの患者をみても、新卒の医師と同じ稼ぎでは、割に合わないと思うだろう。それよりはこうした名医は、一人当たりの治療費を多くして、見る患者を少なくする方が負担も少なく、収入もよい。最初に言ったようにアメリカの名医の手術費用は日本の数十倍であり、雑用もなく、手術だけして、リッチな生活をしている。最近は日本のネットでも、やれ医療、サービスは欧米に劣っている、もっと高度な治療を受けさせろという声も強いし、また医療ミスがあれば、すぐに訴訟ということになるが、こうした費用面のことは無視される。格安レストランと高級フレンチレストランの味とサービスを比較するようなもので、格安レストランで“なぜここでは外国産の肉ばかり使うのか”と文句を言うようなものである。
医療の平等性、この日本のメリットは、何としても維持してほしいところであるが、ただ歯科では歯科医師数の過剰から平等性は崩れているし、将来的には医科の方もそうなるであろう。
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