私は兵庫県尼崎市に生まれ、その後、宮城県仙台市、鹿児島県鹿児島市、宮崎県宮崎市に住んだ。このうち、冬に雪が降るのは仙台市くらいであるが、日本海側の仙台市の積雪はしれたもので、一晩で10cm以上雪が降ることはほとんどない。もちろん鹿児島市や宮崎市で雪が降るのは数年に一度くらいだし、尼崎市の雪が積もったという経験は数えるほどしかない。こんなに雪の降るところで住むようになったのは、1994年に移り住んだ青森県弘前市だけである。
鹿児島にいた時は車に乗っていたが、弘前まで車を運ぶのが大変なので、鹿児島で車を売ってやってきた。しばらくは家内の実家で暮らしていたが、ここには車を止めるスペースもなく、取り立てて車を持つ必要性もなかったので、弘前に来ても車を買わなかった。もう一つ、車を持たなかった理由は、とてもあの雪道を運転する自信がなかったこともある。そのまま30年間、車には乗っていない。よく友人から車なしでよく生活できるなあと言われるし、子供の小中学校でも車を持っていない家は一軒もなかった。不便は不便ではあるが、住まいと職場が歩いて7分、病院、スーパーなので日常生活に必要な場所も全て歩いていける環境なので何とかやっていける。
雪が降り始めるのは、毎年12月の中頃で、それが3月末くらいまで続く。今年の雪の量は異常であるが、例年は今頃から本格的な雪のシーズンで、これが2月末くらいまで続き、3月になると雪の量は増加から減少に向かう。4月になってもあちこちに雪の残渣は残り、全く雪が視野からなくなるのは4月の中頃で、一度は5月の桜祭りの期間に積もるほど雪が降ったことがあった。つまり雪で本当に大変な時期は1月と2月の2ヶ月間であるが、青森県津軽地方ではこの2ヶ月のために、全ての生活が関わる。
まず灯油代が高騰する。ボイラーによる融雪を行っている家では、冬季の灯油代がバカみたいに高い。ある医院では、10台分の駐車場があり、ボイラーによる融雪を行っているが、冬場1ヶ月の灯油代が実に40万円以上かかる。また違う歯医者さんでは、冬場の除雪を業者に頼んでいるが、シーズンで25万円、さらに排雪するために一回数万円、全部で50万円以上の支出となる。こうした雪に対する費用は雪が降らない、少ないところではゼロだけに、全く無駄な費用といえよう。さらにいうなら、雪が落ちない無落雪の家では数トン以上の雪が屋根に乗っかっているので、家屋の痛みも激しく、一冬すぎると、屋根や壁、庭木などあちこちに被害が出る。もちろん車高の低いスポーツカーなどは冬場乗れないし、ポルシェなどの高級車も雪道は走れない。
細かなことを言うと、私の家では、冬になると庭木を縛ったり、支えをつけたりなどの雪囲いを業者さんに頼み、さらに一階の窓全てに柵を張り巡らせる。あらかじめ窓枠に細長い板を差し込むようなフックを取り付け、雪が降る前に小屋に保存していた幅10cm、長さ50cmくらいの板を全ての窓に差し込む。また雪の重さで壊れないように庭に水道やエアコンの室外機、灯油タンクなどには大きな板で囲む。リビングの大きなガラス戸には、特注した大型の雪用の防雪柵をつける。四つの大きな柱を斜めにガラス戸の上下の立てかけ、そこに1.5mくらいの長い板を20本くらい差し込み、柵にし、雪からガラス戸が壊れるのを防ぐ。この取り付けも歳をとると年々厳しい。
私のところは、屋根には雪止めをつけておらず、全ての雪が下に落ちるようにしている。家の痛みは少ない反面、家の周りが雪だらけとなり、その処分が大変である。家の周りにできた高さ4mくらいの雪山を崩し、周りに雪を平らにする。そこに行くまでが大変で、スコップで雪を削りながら、雪が一番高くなった場所まで到達するのであるが、新雪があると足が50cm以上も潜ってしまい、そこから脱出するのも一苦労である。特に家の裏手は到達するまでも大変で、裏にアパートの駐車場があるので、万一うちの雪が崩れて車に被害があると大変なので、数年前に頑丈な雪のガードをつけた。
雪用のプラスティックのスコップが3本、シャベルが5本、鉄、アルミ製のスコップが3本、スノーダンプが3台、氷割りコンパル、ツルハシ、さらに電動の除雪機が2台、まだまだ除雪用の道具があるし、これも毎年買い換える消耗品である。ある意味、津軽人は雪の2ヶ月を過ごすために全ての生活を集中しているといえる。津軽人の性格形成に大きく関与しているのは間違いない。
5 件のコメント:
雪国のハンディは大きいですね。暖房の費用、雪かき雪下ろしの労力と雪から家を守るための装備、スタッドレスタイヤの購入と危険な冬道の運転など。温暖な雪の降らない地方に住みたいと思う時がありますね。
これだけは住んでみないとわかりません。今でこそ多少便利になったのですが、これが江戸時代、明治時代の雪の冬となると想像もできません。プラスティックのシャベル、スコップの前は、鉄製、その前は木製だったのでしょう。冬の青森の日常生活については、あまりわかっていません。雪下ろししないと屋根が落ちるので、木製のスコップのようなもので落としていたのは間違いありませんが、落ちた雪を足で押し固めるのでしょう。家の周りは全て板で覆っていたので、昼間でも室内はかなり暗かったでしょう。
昨日もすごい雪でしたね。もう雪の捨て場所がなくなりました。朝、除雪車両が腰までの高さに盛り上げていき、車を出すことも不可能でした。雪国のハンディを痛感しました。
これだけたくさんの雪を有意義に利用できればいいのにと、毎年考えてしまいます。
逆に言うと、こんなすごい雪を市街地で見られるのは世界でも
ここだけかもしれません。地吹雪体験ツアーの次は、除雪機による歩道作り、屋根の雪下ろし体験でしょうか。一生残る思い出になるでしょう。
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