2024年7月12日金曜日

歯科経営コンサルタント2

 


歯科医院経営と言えば、かっこよく思えるが、街中華店のレベル、普通の商店街のお店のレベル、こうした小規模経営であることを認識すべきで、はっきり言って経営コンサルタントが必要なレベルほど大きな歯科医院は少ないと思う。特に最初のうちは患者数も少なく、少しずつ増えていくため、最初から経営コンサルタントは必要ない。また矯正歯科の経営コンサルタンについて言えば、倫理性はほとんど欠如しており、全くの素人にアライナー矯正を勧め、患者への不利益については全く考慮していない。甘いと言われるかもしれないが、医療分野の原則は患者の利益になることで、矯正歯科を全く勉強もしていない人にアライナー矯正を勧めることが、患者利益に反するということがわからない連中なのである。内科の先生に「先生、金になるので、美容外科も始めましょう」と平気に囁く連中である。まず最初に自分が実験台になればいいのだが。究極の経営コンサルトの目標は、アライナー矯正による詐欺商法や、治療途中で倒産した東京プラス歯科矯正歯科のような形かもしれない。

 

経営コンサルタントがよく口にする強引な自費診療への勧誘方法は、昔のマルチ商法の売り方の虎の巻と同じだし、取れるだけの検査を全ての患者にする予防歯科経営も、患者にとっては迷惑な話である。よくある話だが、歯石のない歯肉に超音波スケーラーをかける、小学生にもかける、歯石があってもなくてもかける、透明の歯石を取るという業務をこなすように指導されている。歯式のスタンプが押され、勝手にポケット値が書かれていたり、明らかにポケットのない若年者も全て測定する。さらにひどい自費誘導の方法として、これは実際に体験した話であるが、横浜のある大きな歯科医院に知人の娘が勤務していた。横浜に住む娘から詰めたレジンの一部が虫歯になっていると連絡が来たので、ここを勧めた。するとう蝕が深く、歯髄に達していたなら、自費診療になるという。マイクロスコープによる精密治療になるからだという。もちろんこれは明らかに保険医療制度に反している。それも親が歯科医、知人の娘とわかっているだけにタチが悪い。厚労省にチクれば、一発で指導になるし、おそらく全ての患者にこうしたシステムでやっているなら、保険医療機関の取り消しにつながる。おそらくこうした先生に言い分によれば、自費に誘導しないと経営できない、みんなやっている、きちんとした治療は保険でできないなどの言い訳であろう。であるなら最初から自費だけで治療すればいいが、そうした勇気もない。看板のみ保険でした方が集客がよく、いったん来院してから自費にしていく、よくある歯科経営セミナーのやり口である。

 

このブログにも、保険治療費があまりに安くて経営が成り立たないというコメントがよく来る。そうした問いに対して、厳しいようだが、現行の診療体制に不満であれば、自費のみの歯科医院にすれば良い、抜歯、歯内療法、義歯、補綴全て自費で、自分の思う最高の治療をすれば良いと答えている。多くの場合はそのまま返答はない。もちろん私も父親と兄も歯科医なので現状はよくわかっているが、それでも前述したような横浜の歯科医院のようなあからさまな自費誘導には眉を背けるだろう。同様に通常の倫理観をもつ多くの歯科医師は、いくら経営コンサルタントが、“アライナー矯正が流行っています。アイテロを買えば、一年で元が取れます。”と言われても、“いや。矯正治療などしたこともないし、自信もないし、もし治らなければ怖いんでやめます”というだろう。逆に自費診療と保険診療で、治療を分けられるのが不思議である。私のところのような矯正歯科専門歯科医院は基本的には自費治療ではあるが、約2割が顎変形症や口蓋裂患者で、保険診療である。両者の治療について、材料も技術も全く同じで、自費診療だけ力を入れて診るというのは不可能に近い。また歯内療法はマイクロスコープを使うので自費というなら、その実績を見てみたい。マイクロを使えばいい治療とは限らず、1020年の経過を見て判断できるものである。森克栄先生のように30年以上の経過を見ている先生であれば、自費治療でもいいが、卒業後、1、2年の先生がマイクロを使ったからと言って森先生と同じか高い料金を請求するのはどうかと思ってしまう。

 

結局は、若い先生方が経営コンサルタントに頼るのは、いかに楽して儲けたいかということに尽きる。40年前のことであるが、ある先生が横浜で自費専門の歯科医院を開いた。全く患者は来ず、生活するのも苦しく、奥さんがパートで働いていたという。それでも少しずつ患者が集まってきて、ようやく軌道に乗ってきたのが10年後だったという。保険ではいい治療ができないと信じているなら、大変であるが、最初から自費だけの歯科医院を開業したら良い。


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