前回は買取業社の査定について書いたが、同じように古着も家具も、リサイクル店に持ち込んでも、二束三文か、買取できませんということになるのだろう。逆に捨てるのも金のかかるようなので、それならいくら安くても買い取ってもらった方が良いということか。
私の好きな掛け軸など、今の家には和室、床間がないため、さっぱり人気がなく、それこそ1本、1000円以下で買い取られるのだろう。それを売ると言っても、買うのは、年配の方が多く、その人が亡くなれば、またただ同然で買い取られることになる。それがリサイククルということなのだろう。ただ近年、そこに進出してきたのが、メルカリである。この世界では売り手が、骨董屋、古着屋などを通さずに、そのまま買い手を探し、売ることができるのは画期的であり、かなり高価で販売できる。例えば北欧に家具、わかりやすく言えば、ハンス・ウエグナアーのYチェアは人気の家具で、新品を買うと10万円くらいはする。これを近くの2ndストリートに持ち込み、査定してもらってもせいぜい1、2万円であるが、メルカリでは送料込みで8万円前後で買われている。昔、大鰐のホテルの食堂で、このYチェアが20台以上使われていた。このホテルが倒産したが、おそらく業者は一台一千円くらいで買い取ったのだろう。安く買えれば買えるほど儲けが多い商売である。ただあんまり買取価格が安すぎると、特に掛け軸につては人気がないので、1本、500円と言われれば、だったら捨ててしまえと思う人もいるが、その中には、かなり重要な作品もあろう。絵の価値については、わかる人がフィルターをかけてみてくれればいいが、結局はわからないので、全て一緒くたになって捨てられてしまう。これはしょうがないことかもしれない。
私の掛け軸のコレクションは、全く無名の明治から昭和の画家の作品がほとんどで、それゆえ、オークションでの買値も1万円以下の安いものである。作品自体はしっかりしたいいものであるが、それでも人気はなく、おそらく骨董屋に持って行っても買い取られないか、1000円以下の買取価格となろう。それなら死ぬまで持ち続けるかというと、それは残された家族に迷惑をかける。できれば美術館や博物館で引き取ってくれれば良いが、これも各地の美術館は収容物でいっぱいで原則寄贈はお断りというところも多い。20作品ある土屋嶺雪の絵については、加古川市の松風ギャラリーで以前、「播磨ゆかりの日本画家3人展:福田眉仙、森月城、土屋嶺雪」の企画展示をこともあり、興味を持ってくれるかもしれない。また3点保有する田中蘭谷については出身地の山梨県立美術館で作品を保有していることから、ここへの寄贈も可能かもしれない。また香川芳園については、出身地の京都の京都京セラ美術館に納めたいのだが、以前、これまでの研究結果を京セラ美術館のキュレーターに送ったが、そのまま返事もなく、あまり興味がなさそうである。そのため、知人のいるアメリカ、オハイオ州のシンシナティー美術館に寄贈を考えている。これまで作品としては3点ほど寄贈し、館内でも展示してくれている。海外の美術館では作家名より、作品そのものが美術館の展示の面白いかを見るので、たとえ5千円で買ったものでも展示してくれる。現在、土屋嶺雪の作品20点、田中蘭谷3点、山元春汀3点、香川芳園2点、望月玉泉1点、三浦文治1点、近藤翠石1点、前川文嶺1点、立脇泰山1点のカタログを作り、それをシンシナティー美術館の友人に送った。その中から選んでもらって寄付することにした。何点選んでくれるかわからないが、作者のとっても自分の作品が海外の美術館で展示されるのは名誉なことである。
シンシナティー美術館は全米でも最も古い美術館の一つで、創立は1881年。全米美術館、博物館ランキングでは31位で、シンシナティーの市民が作った美術館として市民から愛されている。収蔵品は67000点、日本美術コレクションだけでも3000点ある。運営は財産と企業、個人寄付 で成り立っている、メトロポリタン美術館の収蔵品数は300万点に比べて東京国立博物館で12万点と、日本に比べてアメリカの方が寄贈を受け入れやすい環境にあるのだろう。
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