2025年9月8日月曜日

台湾有事

 



アマゾンプライムで、中国による台湾侵攻を描いた「零日攻撃」が見られる。直接的な中国軍による台湾侵攻を描くのでなく、サイバー攻撃や、マスコミへの浸透工作など、有事の別の戦争をリアルに描いている。

 

ウクライナ戦争は、これまでも戦争概念を一変した戦争として歴史に残る。当初は、ロシア軍による電撃的な侵攻ですぐにウクライナが降伏するかと思われたが、実際の戦闘が始まると、従来の戦争様式と全く変わり、実践経験の多いロシア軍もどうしようもなくなっている。従来の戦争概念であれば、制空権を握られると、もはやどうしようのなく一方的にやられる方程式であったが、大型の防空システムだけでなく、兵士1名が持ち運べるスティンガーのような携帯型地対空ミサイルも活躍しており、コスト/パーフォマンスから高い航空機が使えなくなっている。またこれほどドローンが兵器で用いられた戦争は初めてで、全ての戦闘方法論を変えることになる。

 

個人的に、一番恐れたのは、ロシアによる核使用で、もしウクライナ戦争で、ロシアが核兵器をウクライナの首都、キエフはじめ、主要都市に使うと、これほど安上がりの兵器はない。核兵器を持たないウクライナからすれば、ロシアが核攻撃をすれば、これは降参しか方法はない。さらにこれほど簡単で、費用の安い兵器はなく、もし最初にロシアが核攻撃すれば、ロシア側のこれほど犠牲者を出さなくてもよかった。ロシアの指導者からすれば喉から手が出るほど使いかった兵器であろう。ただ流石にウクライナへの核攻撃は、北朝鮮も除く全世界からの非難をおそれ、ブーチン大統領も使えなかった。これは被爆国、日本のこれまでの核廃絶運動も影響したのだろう。

 

例えば、映画のように中国が台湾に侵攻したとしよう。現状では、中国の上陸能力ではとてもじゃないが、台湾には侵攻できない。ある研究によれば、現状の中国の渡海侵攻能力は数万人の兵士を運ぶ程度であり、非常事態の台湾は100万人の戦闘動員が可能で、3万人の中国軍の上陸はほぼ壊滅する。中国政府として中国兵の死者がもっとも少なく、費用もかからない方法と言えば、核攻撃しかない。高雄に一発、次に台中の一発、核攻撃で、次は台北いえば、ほぼ降伏するであろう。核兵器ほど安くて効果的な兵器はない。

 

台湾の面積は、ほぼ九州と同じ、人口は九州が1390万人に対して2340万人と約一千万人多い。太平洋戦争は、広島、長崎の原爆とソ連の満州侵攻で終戦となったが、もし通常兵器で降伏をさせようとするなら、日本へ上陸しなくてはいけない。九州上陸作戦はオリンピック作戦と言われた。その作戦計画では、投入戦力はおよそ200万人、航空戦力は6000機以上、艦艇は正規空母20隻、軽空母6隻、軽空母45隻、駆逐艦422隻、戦艦24隻、という途方もない規模である。こうした戦力を持ってしても、九州を全て占領するには20-50万人の戦死者とその数倍の戦傷者を出すと予想された。

 

当時に日本軍は、特攻作戦に代表されるような死をも恐れない狂信的な軍事組織であったので、これとは比較はできないにしても、ウクライナ戦争でのロシア軍の戦傷者数を見ると、台湾侵攻による中国人の死傷者も相当な人数になると予測される。さらにいうなら、イギリス、日本のような四方を海に囲まれた国を侵攻し、占領するのは、陸続きの国への侵攻に比べて数倍の労力を必要とする。特に台湾に場合、西側の海は大陸棚で浅いが、東側の深く、自衛隊の最も得意な深海底での潜水艦待ち伏せ攻撃の格好の的で、中国海軍の艦艇は一切、航行は怖くてできない。これは中国の原子力、通常動力の潜水艦でも同様で、中国の台湾侵攻が始まれば、自動的に日本、アメリカの潜水艦は台湾東海域に派遣され、中国の海中、海上船舶の破壊活動を行う。戦闘機による支援は日米の介入があからさまになるが、潜水艦の支援は見えないので、まずこの方法をとり、台湾への海上交通路を確保する。

 

いずれにしても島国に対する戦争は第二次世界大戦のおけるドイツによるイギリスの攻撃くらいしか思いつかず、これも完全に失敗した。中国人民解放軍の本格的な戦争は、朝鮮戦争と中越戦争くらいしかなく、すでに45年、いずれの戦争も勝利したとはいえず、一人っ子政策を相まって、中国軍の実力は疑問視される。一方、台湾でも、ドラマに見られるように戦争が始めれば逃げるという人も多く、頑強な抵抗があるかは不明である。ドラマのような、政治家、マスコミに対する浸透工作をして、台湾を親中国国家にし、自然に統合していくプロセスが現実的な路線であろう。かって社会党の議員で、絶対戦争反対、自衛隊がいらないという人がいた。中国から攻められたらと質問されると、その場合は、すぐに降伏すれば命ばかりは取られない。現に日本はアメリカに占領されたが、発展したと言っていた。結構、説得力のある意見で、これをマスコミ、ネットで徹底的に流し、国民を洗脳すれば、核を使わず、軍隊で大きな損害、費用も使わず、侵略が可能である。

 

さらにいうと先見の明のある安倍元首相の発案で、沖縄、南西諸島への地対艦ミサイルの配備をしてきた。これは台湾の武力侵攻を狙う中国にとっては、喉元の棘となり、大きな抑止力となる。安倍元首相の置き土産で、重要な布石である。日本の南西諸島へのミサイル基地への先制攻撃は、日米との開戦を意味し、さすがの中国も第三次世界大戦につながる戦争を起こす勇気はない。


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