2024年10月6日日曜日

武器が高くて戦争できない

 

                   一機、1100億円のB-2爆撃機



武器の高騰が凄すぎて、もはや戦争がしにくい状況となっている。軍用機で言うと、アメリカ軍の戦闘機、B-35150億円、B-2爆撃機では1100億円、最新のB-21では1000億円となる。軍艦では最新空母、ジェラルド・フォードは1兆9千億円、コロンビア級原子力潜水艦は7700億円、アーレイ・バーク級駆逐艦で2900億円、ミサイルで言うと迎撃ミサイル、SM3ブロック2Aが一発、40億円、M1エイブラムス戦車が10億円となる。最も戦争でよく使われる500ポンド、Mk82爆弾で一発、400万円くらいで、B-1爆撃機であれば、一回の作戦で、最大84発の500ポンド爆弾を使う。3.3億円となる。

 

例えば、B-2爆撃機でどこかの場所を爆撃しようとすると、純粋の爆弾、あるいは燃料、整備費などで一回の爆撃で数億円の費用がかかってしまうし、万が一、撃墜されると、それこそ1100億円の機体がパアとなる。さらに一度、爆撃されると、再生産は簡単にできるものではないし、それこそ消耗していくものとなる。現在、航空自衛隊ではB-3540機くらい配備する予定であるが、零戦の生産数、一万機に比較すると100分の1以下であり、第二次世界大戦のような使用法は絶対にできない。そして数機の損失で、重大な戦闘作戦に支障が出るはずで、戦闘への投入は躊躇われる。

 

第二次世界大戦における武器の価格と比較すると、より鮮明となる。日本の例で言えば、現在価格に換算して、零戦は一機、1億五千万円、戦艦金剛で600億円、あの戦艦大和ですら2700億円など、少し換算がおかしいかもしれないが、それでもかなり安い。加賀や蒼龍などの海軍の空母でもおそらく戦艦並み、600億円くらいであろう。アメリカの駆逐艦アーレイ・バーグ級が2900億円で、戦艦大和と同じ建造費というには考えにくいが、それでも当時に比べて現在価格に換算しても武器価格が10100倍になっているのは間違いない。真珠湾攻撃で日本軍は、空母6隻、戦闘機350機以上を参加させたが、今の武器でこれだけの作戦を行うことはまず金銭的にも不可能であろう。

 

こうしたこともありウクライナ戦争でも、長期間にわたる戦争が続いているものの、双方数万の兵士、数千機の戦闘機、数千の戦車が投入されたクルクスの戦いのような規模の戦闘は不可能であり、せいぜい大隊あるいは中隊規模の戦闘が行われているだけであり、ベトナムあるいは近年の湾岸戦争に比べても戦闘機、ヘリの攻撃参加は少ない。より費用の安いドローンを使った戦闘が中心となっている。アメリカ軍はウクライナ戦争以前も無人機、RQ-1プレデターを使った偵察、攻撃をしてきたが、この機体の価格は450万ドル、7億円くらいする。ウクライナ戦争では、こんなに高い機体はほとんど使われず、トルコ製のバイラクタルTB21億円、あるいはもっと安いドローンが使われている。

 

いかに安い機材で最大の戦果をあげるかが、ウクライナ戦争におけるウクライナ、ロシア双方の戦略の基本となっている。特にロシアでは、西側諸国の経済制裁で、武器に必要な機材が手に入らないので、武器を喪失すると生産がしにくいために、かなり消耗に敏感である。もともと旧ソ連の戦略は、大量の兵器を用いた物量作戦で、兵士も兵器も大量に消耗して、大量に生産する方法をとっていた。ところがロシアでも兵器の価格が高くなり、また大量生産することもできず、伝統的なソ連軍の戦略、戦術が取れず、苦戦している。

 

同様なことは、今後のあらゆる戦争でも起こり得ることで、あまりに兵器の価格が高くなって戦争ができない、しにくい状況となった。これは軍事的新興国となる中国でも当てはまることで、空軍は数千機の機数を誇るが、現代戦に使える機数となると数百機であり、その多くが旧ロシア製の系譜のものである。ロシアの軍用機はもともとエンジン寿命が短く、消耗品として使うものであり、稼働率も低い。そうなると値段の安い(そうはいっても高い)ミサイルで、どれだけお互い数少ない戦闘機を潰すのが戦争の鍵となり、互いに価格の高い戦闘機をできるだけ温存しようとする。

 

孫子から始まる戦争理論についても、もはや兵器の値段の高さと消耗から見る経済的な側面が強くなり、こうした要素、できるだけ安い兵器、ドローンで、高い兵器を潰し、消耗させていく、新しい戦争理論が必要なのかもしれない。例えば、500万円の安いドローン、1000台でも費用は50億円、それで150億円のB-35を一機潰せは成功となる。おそらく世界一のドローン国の中国は、もし戦争するとなると大量の数十万、数百万のドローンを戦争に使っていくかもしれない。

0 件のコメント: