先日、知人が高校のミニ同窓会に参加し、そこで話題になったのは、小学校の教育実習生が次々と倒れるという不思議な現象のことである。弘前大学の教育学部では三年生、四年生は、附属小学校で教育実習をするが、最初は教室の後ろに立って授業を見学する。ところがものの1時間もすると実習生が次々と倒れていく。ひどい場合は完全に意識を失って倒れる学生もいるという。今年はすでに5人が実習中に倒れた。こうしたことが起こるようになったのは、10年ほど前からで、それまでは目立ってそういうことはなかったが、一人、次の年は二人と少しずつ増えてきて、今年はついに5人ほどが実習中に倒れたという。同じようなことは歯科大学で衛生士を指導している先生も言っていた。毎年、必ず診療室で見学実習していると倒れる生徒がいる。また医学部の先生も、手術見学中に倒れる学生が多いと言っていた。
熱中症で具合が悪くなることは毎年話題になっているが、昔は熱射病といったが、今ほど大騒ぎになっていなかった。おそらく昔の子供の方が暑さ、寒さに強かったのだろう。人間の体は案外、外環境に適用するように作られており、昔、南極探検のために白瀬中尉が寒い環境に慣れるために子供の頃から寒くても火に当たらず、千島で越冬して寒さに耐える体を作ったという。これは青森に住んでいる私でも、冬場のマイナスの温度に慣れてしまうと、南の方に旅行して気温が十度くらいになると汗ばむようになる。おそらくロシアの厳冬地、マイナス20度くらいのところに住む人々は、0度は暖かいと思うのだろう。若い人が、朝礼中に倒れると言うのは、医学的には神経調整性失神と呼ばれるが、ストレスや強いショックにより自律神経のバランスが崩れて脳への血流が不足することから起こるとされている。またスマホのしすぎによる睡眠不足や朝食の欠食なども原因とされている。
ただ教育実習では、実習生が初めて講義するという特別な状況ではなく、ただ後ろで見学している状況で起こるという。そのため教官は前日に、夜はしっかりと眠るように朝食、昼食はしっかり食べるように指導するものの、あまり実行してくれないと嘆いていた。知人が何かいい改善策はないかと言うので、私が東北大学入学時のことを話した。入学すると受講教科を決めなくてはいけない。体育は必須なのだが、教養部で選べるのはテニスやバレー、卓球、バトミントンなどがあるのだが、最初の体育の授業でまず体力測定が行われる。走力と筋力で、鉄棒の懸垂数をカウントする。私の場合、浪人していたせいか、体力が急激に低下していて、懸垂も3回しかできなかった。そのため、スポーツ部というところに回された。このスポーツ部は体力の向上を主としたもので、週に一回、1時間、走ったり、懸垂をした。たまには100mや1500mの記録を測った。終わると汗みどろで優雅のテニスをしている連中の横、スポーツ部はぜいぜいと息をして倒れ込んでいた。それでも1年もこうしたトレーニングをしているうちに、かなり体力がつき、懸垂も20回くらいできるようになった。将来、教師になると、小学校では体育の時間もあるので、学生はこうした体力向上の授業を受けさせたらどうかと言うのが私の意見である。
先日、深浦町の町長がトレーニングインストラクターの資格があるので、町内の小学校の子どもたちに本格的な走り方の指導をしていた。生徒は皆、早くなったと言っていたが、私自身、中高大と12年間、サッカーをしてきたし、国体の練習にも参加したが、ランニングの本格的な指導をしてもらったことはない。大学生の体育は今でも必須と思われるが、できれば、すべての学生にこうした体力増加を目的にしたトレーニングを科したらどうであろうか。卒業してもあらゆる仕事でまず必要なのは体力であり、走り方、歩き方、筋トレなど、基本的な体力向上のトレーニングを専門家からきちんと学ぶことは大事なことである。
もちろん最近の若者が次々と倒れるのは単純に体力の問題だけではなく、むしろ精神的な要素が大きいが、大学生になると運動部以外の多くの学生はほとんど運動をしていない。実際、1時間以上立つことも、こうしたバイトをしなければ、普段あまりない。栄養士による食事指導とともに、きちんとしたトレーニング方法を大学生のうちに身につけることはその後の人生でもかなり役立てのではないだろうか。社会人になるとお金を出してスポーツジムに通うくらいなら、大学の体育の授業の中にもそうした要素を取り入れ、生活、食事指導なども併せて指導し、実習中に倒れない学生を作ってほしい。
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