矯正治療費は大きく分けて、1。総額制、2。基本治療費制、3。装置代別の3つに分かれ、1の総額制はすべての装置代、調整料を含めた価格で、患者はこれ以上、医院に払う必要はない、例えば、私の知人のところは70万円の総額制になっており、マルチブラケット装置、矯正用アンカースクリュー、ヘッドギア、パラタルバーなどの付加装置、調整料、保定装置料などすべての費用が入っている。そのため、受付は予約のみで会計はほとんどない。2。は日本では一番多いシステムだが、例えば基本治療費が50万円、この中にはマルチブラケット装置や付加装置などが入るが、調整料や保定装置は別料金となる。3は、大学病院などで取られているシステムだが、矯正歯科専門医院ではあまり使っていない。マルチブラケット装置が上下で20万円、パラタルバーが3万円など装置ごとに料金が決まっている。
私にところは、この2のシステムを使っており、基本治療費は40万円、保定装置料は4万円、調整料、観察料は3000円にしている。子供場合は、一期治療の基本治療費が20万円、二期治療に基本治療費が20万円としている。総額で見ると、税抜で検査診断料3万円+基本治療費40万円+保定装置代4万円+調整料3000円×30回の9万円、計56万円となる。治療期間の長さで多少変わるし、矯正用アンカースクリューが一本6000円かかるが、それでもだいたい税込みで60-70万円くらいだろう。以前、日本矯正歯科学会の臨床指導医の歯科医院の料金を見たが、安い方かもしれない。なぜこうした費用にしたかというと、1。青森県の県民所得は全国最下位であること、2。できるだけたくさんの人の治療を受けて欲しかったこと、3。家賃、人件費など経費も安いことなどから、この価格にした。もう一つの4番目の大きな理由は、弘前で最初の矯正歯科医院なので、少し安い料金で開業すれば、二番手、三番手が現れにくいと考えた。実際、4番目の理由の影響は大きく、それまで弘前で矯正というと100万円ということになっており、実際この値段で矯正治療をしていた一般歯科医の多くは矯正治療をしなくなったか、料金を大幅に下がった。
できるだけ収益を増やすために、家賃の安いビルの3階を借り、従業員0名、家内と二人で診療した。また技工は外注せず、すべて一人でした。家内と一緒に掃除をして、診療をして、技工をした。その後、子供の世話もあり、家内は午前中のみとなり、午後からはパートの衛生士、最終的には常勤の衛生士一名と受付は午前が家内、午後はパートの受付の最小限のスタッフでやってきた。土曜日は衛生士学校の学生にも手伝ってもらった。これでも一日、平日で20-30人、土曜日は40名くらい治療した。また矯正材料は、製品を集約して、業者と価格交渉して安く購入した。こうしてできるだけ経費を減らすように常に努力してきた。
こうなると、普通は弘前と周辺の矯正患者を独占すると思うが、実際は一般歯科や他の矯正歯科で治療する患者も多い。こう言っては僭越であるが、一般歯科の先生に臨床技術で負けることはありえないし、他の矯正歯科専門医に対しても少なくとも劣ることはない。驚いたのは一人200万円出して東京の一般歯科のところに夫婦で通院していた人がいた。トラブルのため、私の診療所に来たのだが、それはひどい治療であった。私だったら、治療技術が同じか上で、料金が安ければ、迷わずそこで治療するが、実際はそうではないようだ。
この理由について、ずっと考えてきたのだが、1。まず世の中には料金が高い=良い治療という人が一定数いる。こうした人は40万円の私にところの治療よりは、200万円の東京、銀座の歯科医院を選ぶのであろう。2に一般歯科、あるいは友人から紹介されると、他のところで相談もせず、そのままそこで治療をするパターンである。こうした人は先生や歯科医院で矯正臨床技術や料金の差はないと考えている。一般歯科で矯正を勧められたら、その先生は矯正治療ができるものと信じている。3は2とも関連し、これが一番多いのだが、全く情報を入れようとしない患者である。矯正治療は保険がきかないのも知らないし、いくらくらい、専門医がいることも知らない。学校検診で歯並びを指摘され、かかりつけの歯科医院に行き、そこで矯正治療を勧められたら、そのまま治療をする。ただこれは子供の矯正治療で、大人の場合は、ネットでかなり調べてくるので、まず私のところにくる患者が多い。医療関係者、例えば歯科衛生士、看護師、医者、医学部学生などは、ほとんど私のところで治療を受ける。1994年から弘前大学医学部の非常勤講師をしているからで、相談する人が周りに多いからであろう。ただ歯科医師の子供で私のところで治療を受けたのは30年間でも5、6人で意外に少なく、これも不思議である。
2年前から新規患者を取らなくなったが、器材屋がいうのは新規間業する先生はセファロを設置するし、レントゲン室を拡張してセファロを入れる歯科医院が増えたという。セファロを設置し、矯正歯科医のバイトを入れても、料金的には私のところの治療費に対抗できないため、ここ30年間に新規開業をした歯科医院にはほとんどセファロは設置していない。新規患者の受け入れをやめる前、2022年は子供を一切受け入れない状況(2020年から子供は受け入れず)で、成人患者だけで240名来院した。コロナバブルのせいであるが、それでも通常、子供の矯正患者が半分くらいだったので、私のところだけ年間300-400名の矯正患者がいたことになる。弘前市内には矯正歯科認定医が3人いるが、矯正患者数がそのまま増えてはいないようで、一般歯科に流れた可能性も高く、それがセファロの設置が多くなった理由であろう。
結局、日本では歯科医も患者も、矯正治療の専門性を知らないようだ。歯科という小さな分野でさらに専門医制で細分化するのはどうかという声も大きく、単純に矯正歯科くらいは俺だってできると信じている先生も多いし、患者もどの歯科医で治療を受けても同じだと信じている。
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