2017年7月26日水曜日

「日系アメリカ人最初の女医 須藤かく」発刊しました


 “日系アメリカ人最初の女医 須藤かく”を発刊いたしました。通算4冊目の本となります。ほぼ二年おきの出版となりますが、相変わらず全く自信はありません。

 今年の正月、例によって特に何もない静かな正月でしたが、前に出版した“津軽人物グラフィティー”で取り上げた人物のうち、女医、須藤かくについて東奥日報に投稿しようと突然思いつきました。全く急なことでしたが、火が付いたように、正月休みの5日間で、1600字、16回の連載をまとめました。その時に利用したのが、アメリカの新聞の検索サイト、“Newspaper.com”です。実は最初トライアルで、このサイトを無料で使っていたのですが、うまくできているというのか、騙されているというのか、自動的に6か月の登録料、確か30ドルくらいを払いことになりました。例えば、”Kaku Sudo”と検索し、”1860-1970”と範囲を絞ると、その間の多くの新聞が検索できます。さらに検索された新聞の中で“Kaku Sudo”と書かれたところが色分けされます。こうした検索システムがあるおかげで、わずか一週間くらいで100以上の古い新聞を見ることができます。こうしたシテテムは日本ではほとんどなく、早く導入してほしいところです。

 便利なサイトシステムである程度のことは概括としてまとめることができ、さて新聞に投稿しようかと思いましたが、1600字で16回の連載は実際問題として無理と判断し、800字で8回くらいに短縮して、知り合いの東奥日報の方に送付しました。すぐに何とかするという返事が来ましたが、その後、1か月経っても進展はなく、これは無理と判断しました。折角、まとめたのだから、何とか本にしょうようと考えたのが2月ころです。ところが1600字で16回、25600字では、本にするのは全く足りません。ある程度のボリュームにするのはこの10倍くらい増やす必要があります。ここからはさらにアメリカの古い新聞を細かく探していき、また全米各地の図書館に問い合わせました。さらに関係者を探すために、全く面識のない方にメールを送りました。空振りの終わることも多かったのですが、それでも少しずつ、新たな情報が溜まりだし、何とか、本にできるかと思ったのが3月ころです。ここから先は、実際に取材に行く必要があるとは思ったのですが、なかなか暇はなく、さらに例えば、アメリカのニューヨーク州オネイダに行ったとしてもネット上でわかる以上のことはそれほど多くないと判断しました。ただ、これは自分でも反省しているのは、“成田ヤソキチ”の“ヤソキチ”に漢字名については、東京に行って、外務省の外交文書を閲覧できれば、かなり高い頻度でわかったと思います。すいません。

 それでも何とか62ページの小册のまとめることができました。値段も800円(税抜き)としましたので、できるだけ多くの方の読んでいただければ幸いです。“須藤かく、阿部はな、アデリン・ケルシー”について最初に書かれた評伝です。誰か小説にでもしていただき、テレビのドラマや映画になればと夢のようなことを考えています。

 紀伊国屋書店弘前店、弘前中三ジュンク書店はじめ県内の書店で販売していますので、ご購入ください。

2017年7月19日水曜日

北東北コンチキバス旅行


 以前、欧米の若者に人気のあるコンチキツアーというバス旅行を紹介した。35歳以下の若者が現地、例えばロンドンに集合してそこから、いろいろな日程があるが、2週間、ヨーロッパのあちこちをバス旅行する。

  同じ土地には1、2泊しかしないが、それほど高いホテルに泊まらず、全体の費用もそう高くない。何より、世界各国から集まる参加者との旅行期間中の交流がウリで、このツアー終了後はみんな友達となる。これはいい旅行方法と思い、それでは日本のコンチキツアーと調べると、二つのコースが見つかった。

  ひとつは“ Japan –city to slopes ”という12日のコースで、大阪に二泊、京都に二泊、東京に三泊と、なぜか白馬に四泊し、費用は3720ドルと高い。12食の朝食は値段に入っているが、その他の食事は各自でとる。もうひとつは“Japan Unrivalled”という13日間のコースで、東京に三泊、箱根に一泊、高山に二泊、広島に二泊、京都に二泊、和歌山に一泊、大阪に一泊となる。費用はこれも4589ドルと高い。

 他のアジアツアー、例えば、”Asian Adventure”では、タイとベトナム、カンボジアを回る16日間の旅で1972ドル、ベトナム一周の12日間の旅で1496ドル、インド一周の12日間の旅で2095ドルと安い。確かに他のアジア諸国に比べて日本は物価が高いが、それでもヨーロッパの12日間、9カ国のツアーで1684ドル、アメリカ、14日間で2003ドルと、このツアーも目的は若い連中がバスで安い旅行をするものである。他のコンチキツアーに比べて日本のコースがかなり高いのがわかる。これではおいそれと若い連中が日本に来て参加しようとは思わないであろう。

 ここで作年の外国人旅行者の日本での宿泊場所と人数を挙げると、一番多いのは東京都で1806万人、続いて大阪府1026万人、北海道692万人、京都府482万人、さらに沖縄県が448万人と多い。それに対して、北東北三県を見る青森県が16万人、岩手県が13万人、秋田県が6万人と非常に少なく、三県合わせても沖縄の1/10にも達しない。韓国、台湾、中国からの距離が遠いこともあるが、知名度が低いことが原因であろう。

 ここで人気のない北東北三県に注文したいのは、北東北三県を回るコンチキツアーのような外国人用のバスツアーを開設してほしい。バスは長距離走るので豪華バスであったほしいい、旅行中ずっと帯同する英語のできるガイドが必要だが、泊まるところは安いビジネスホテル、場合によってはラブホテルでもいいし、県や市の公共宿泊地や寺、神社でもよい。こうすれば10日間の旅でも宿泊費は7万円程度、バスのチャーター費100万円を加えても、50名集まれば、1500ドルくらいのツアーが企画できそうである。さらに三県で旅行者一人あたりに5万円くらい補助がでれば、もっと安くなり、利用者は増えるだろう。

 東京駅集合、そこから宮城県の仙台市、松島、そこで一泊し、岩手県の平泉、盛岡市で一泊、十和田湖に一泊、青森市、弘前市を巡り、そこで一泊、さらに秋田市で一泊の計5泊くらいでどうだろうか。少し余裕を持つなら仙台、弘前に一泊ずつ追加して、7泊8日、朝食のみ15002500ドルは難しいだろうか。できるだけ安いホテルでもよいし、夕飯はない、朝食もコーヒーと菓子パンくらいで十分である。ただ日本旅館は一日、二日はよくても畳で寝るのは疲れるため、ベッドのところがよい。例えば、弘前市の相馬ロマントピアは少し郊外にあるが、コテージなどもあり、みんなでバーベキュパーティーをすれば朝、夕食、宿泊込みで一万円で十分であろう。他の県にもこうした公共宿泊設備はあるだろうから、そうした施設を利用すれば、安くあげられる。

  北東北四県の観光課が、企画を練ってコンチキツアーとコラボすれば、若い外国人を主体として面白い旅行プランができそうである。

2017年7月17日月曜日

大相撲 宇良

関西学院大学卒業時の宇良

 大相撲で前頭四枚目の宇良が横綱、日馬富士から金星を挙げました。土俵後のインタビューでは感極まって泣いていましたが、これまでの苦労を思い出したのでしょう。

 宇良を初めて知ったのは、「マツコ有吉の怒り新党」で特集が組まれ、その多彩な組み手に驚いたものでした。その後、木瀬部屋に入門し、大相撲に挑戦することが決まり、ここから応援することにしました。たまたま娘とは大学が同じで(関西学院大学)で娘は経済学部、宇良は教育学部でしたが、卒業式は同じ時間でしていましたので、直接、宇良の姿を見ることができました。すでの学校初の大相撲というとことで注目され、多くのマスコミが集まっていましたし、一人だけ着物姿で入学式に出席していました。さすがに力士だけあり、大きな体ではありますが、身長も低く、力士としては体重は少ないように思いました。

 二年前の三月場所に序の口からスタートし、すぐに優勝し、その後も順調の昇進していきました。割と早い時期からファンが作った「宇良関」宇良和輝さんを応援するページというサイトがあり、ここでその日の取り組みの動画を挙げていました。場所中は毎日、その結果を見ていましたが、序二段、幕下とも優勝決定戦で負け、なかなか優勝こそありませんが、ずっと勝ち越しで順調に番付を上げていきました。

 ただ途中、さすがに大柄で体重の重い力士が揃う十両では、一度負け越しがあります。それでも、体重を増やし、入門時110kg程度の体重も最近では140kgくらいまで増やしている。当初は、マスコミで話題になったものの、相撲の専門家からはとても大柄な力士が大勢を占める大相撲では通用しないと言われていました。その後、序の口、序二段などで勝つようになると、フアンサイトでも怪我、それも大怪我を心配する声も大きく、十両で唯一負け越しと時も、かなり大きな怪我をしながらの出場でした。宇良は非常に頭のいい力士で、できるだけ大相撲で長く取ることができるように、体の柔らかさと押し相撲を中心とした怪我の少ない取り組みを目指しています。今場所の取り組みも押し相撲が多く、怪我をひやっとする場面はないが、これからも一番心配な点です。相撲博士こと旭国、サーカス相撲の栃赤城、技のデパート舞の海など、小兵力士の活躍はいつになっても面白い。大柄な力士に勝つと胸がスッとします。

 最近の大学生力士の多くは、幕下あるいは三段目付け出しでデビューし、宇良のように大学を卒業して、一番下の序ノ口からスタートすることは少ない。私も知らなかったが、大相撲は序ノ口、序二段、三段目、幕下、十両そして幕内となる。テレビ放送は幕内から放送するため、ここに上がるのがいかに大変からわからないが、比較的順調に進んだ宇良でも丸二年間かかっています。東京農大から角界入りした豊山は三段目付け出しからスタートして三段目、幕下を優勝、一年で幕内に入っています。また遠藤は日大でアマチュア横綱となったため、幕下付け出しからスタートし、二場所で十両へ、そこで優勝して、四場所で幕内に入りました。将来を期待された力士で人気があるが、怪我に悩まされ、最高位で前頭一で三役にもなっていません。

 宇良の今後は、全くわかりませんが、この力士は角界の中でも最も頭がよく、素直で稽古好きです。相手に掴ませない宇良独特なスタイルを確立してもらい、できれば大関くらいになってくれれば最高です。甲野善紀という古武術の先生がいます。この古武術を野球やバスケットに応用していますが、個人的には大相撲が最も活用できる分野と思います。相手の力の中心をはずす、これは今でもかなり出来ているのですが、もっと洗練して、大相撲史でも歴史に残る力士になってほしいと思います。

2017年7月16日日曜日

司馬遼太郎のウソ


 兄の知人の歯科医に伊地知先生がいる。先祖は鹿児島県の出身で、日露戦争で乃木大将の参謀をしていた伊地知幸介中将の子孫である。昔、「二百三高地」という映画があり、ここで描かれた伊地知中将はとんでもない頑固で、融通のきかない役となっている。さすがに乃木大将は愚将とは描かれていないにしろ、丹波哲郎演じる児玉源太郎により何とか二百三高地を争奪できるという内容であった。伊地知中将の子孫の歯科医は、「会う人ごとに嫌みを言われるので、恥ずかしくて子孫と名乗れない」と言っていた。脚本には、かなり司馬遼太郎の「坂の上の雲」の史観が入っている。私も司馬遼太郎はファンでほとんどの作品を読んでいるので、そうした史観をそのまま信じた方であった。

 ところが「乃木希典と日露戦争の真実 司馬遼太郎の謝りを正す」(桑原嶽著、PHP新書、2016)はそうした乃木、伊地知の印象を一変させる優れた著書である。新書は読んでみて全く内容がないものを多いが、本書は元陸軍少佐、中央乃木会事務局長であった著者が、平成二年に「名将 乃木希典」を復刊したもので、旧陸軍の指揮者、歴史家として司馬遼太郎の「坂の上の雲」を徹底的にこき下ろしており、痛快である。論理が的確で、司馬遼太郎の資料の読み込み不足と乃木、伊地知への思い込みを詳細に分析、非難している。司馬遼太郎は生前、「坂の上の雲」のテレビ化、映画化を許可しなかったといわれるが、この本(平成二年発行)を読んで司馬はその誤りに気づいたのかもしれない。

  司馬からすれば「坂の上の雲」は小説なのだから、事実とは多少異なってもよいと考えたのかもしれないが、読者の多くはこれを史実と考えてしまう。ここが歴史小説の問題点であろう。

 同じようなことが韓国の歴史ものの映画、テレビでも起こっており、「宮廷女官チャングムの誓い」では歴史書にわずか一行書かれている大長今という称号を得た女医をドラマにしたことで、それが確固とした歴史上の人物となっている。今、話題になっている従軍慰安婦についてもヒット映画「鬼郷」の世界が真実と信じられ、世界中の慰安婦像を建てている。韓国人は日本人以上に本を読まないので、こうしたドラマ、映画の歴史観がそのまま実際の歴史と混同する状態に陥っている。

 それでは、学術的な歴史が正しいかと言えば、これもいい加減なもので、かってのマルクス、エンゲルスの唯物史観に染まった歴史解釈は今から見るとおかしなもので、こうした例は多いし、新たな資料の発見により180度歴史が変わることもある。


 私事で恐縮するが、8月に「日系アメリカ人最初の女医:須藤かく」を発刊予定している。先般、「津軽人物グラフティー」を出版してから、まだ2年しか経っていないが、それでも新たな資料の発見により内容が違ってきている。今後、さまざまな資料を見つけたとしても、ジクソーパネルの一ピースが埋まっただけであり、すべてのピースを埋めるのはできっこないし、空白の部分は想像力で埋めるしかない。空白部分が多いと歴史小説になるが、空白部分が少なくても想像の部分はある限りは小説の要素は残る。司馬遼太郎も初期の作品、「龍馬がゆく」は、空想部分が多かったが、晩年の「跳ぶが如く」になると、台詞が少なくて歴史観が全面に出てくる。司馬さんの影響はあまりに大きく、高知では坂本龍馬を讃えるために空港名も高知龍馬空港となったが、この坂本龍馬という人物も実像とは大分違うように思われる。