2023年4月27日木曜日

忙しかったので

 





昔から嫌いな言葉の一つに、「忙しくてーーできなかった」という言い訳がある。患者さんの中には、装置が入ったまま、何ヶ月も来院されない人がいる。こちらからも電話をしたり、ハガキで連絡するも、全く返事はないが、突然、来院する。「どうして何ヶ月も来院されなかったのですか。こちらからも何度か連絡したと思いますが」と尋ねると、こうした患者さんはほとんど「忙しくて来院できなかった」という。これは言い訳にもならず、有名タレント、プロスポーツ選手、実業家など、本当に仕事で忙しい人でも何とか歯科医院にくる時間を作り、治療を行う。だいたい数ヶ月も忙しくて歯科医院、それも15分くらいの時間が取れないわけはない。ようするに面倒くさくて来院しなかっただけである。

 

例えば、友人から旅行や飲み会に誘われ、あまり行きたくないときは、ちょっと忙しいので行けないと言うことはあるだろう。実際は、暇な時であれば行きたいのであるが、今は仕事も忙しく、そのわざわざ時間を割いて付き合うほど行きたくはないということである。重要な要件や好きな人からの誘いであれば、いくら忙しくても万難を排して、行くであろうが、それほどでもないということを婉曲的に表現している。それでも、状況によっては違和感があり、引退して一日中、部屋でテレビを見ている人に、たまの息抜きに一緒に飲もうと誘うも、「忙しくて時間がない」と言われる。もちろんテレビをみるのが忙しいのかもしれないが、もう2度と誘うことはなくなる。この場合でも、正直に「誘ってくれるのは嬉しいが、外に出て酒を飲むのが今は何となく億劫と思ってしまう。今度、また連絡してくれ」と正直に言ってもらえば、まだ友情はつながる。気持ち的に飲みたくない時もあるだろう。

 

一方、会社や仕事関係で、本当に忙しくて断られることがある。仕事が多くて、これ以上仕事ができない、寝むれない、体を壊すという状況もあろう。ただこの場合も、1ヶ月以上こうした状況が続くことは稀であり、もしそういう状態が続くのであれば、人員の増加、システムの改善など、経営者サイドで何とかすべき問題である。ある矯正歯科材料会社に矯正用のワイヤーを注文したところ半年待ちであると言われた。主要生産物である。よく考えれば、半年も販売が中止されれば、生産工場は破産するはずである。担当者に聞くと、製作する人がいないとか、機械が故障したといった理由を言っていたが、よく売れている商品で、こうしたことで半年販売がないというのはあり得ない。

 

私のところも含めて歯科医院では、患者さんからの電話が来ても、「忙しくて予約できない」と答えると、すぐにGoogleのクチコミに酷いことを書かれる。こちらも空いているのに患者さんの予約を断っているわけではなく、実際に予約でいっぱいなために断っている。それも平日はかなり空いているのにも関わらず、土曜日しか来られないと言い、それでは1ヶ月後にならないと空いていないと答えると怒り出す、あるいは何とか予約を割り込ませろと凄む人もいる。中には日曜日は休診日であるが、なぜ開けないかとどなる人もいる。一方、歯科医の方にも問題があり、いっぱいで2ヶ月先まで予約できないというところがある。有名ミシェラン店ではあるまいし、それほど混むわけはない。不思議なことと思うかもしれないが、保険治療が主体の歯科医院では、患者数が多ければ、保険点数が上がり、収入も多くなる。それゆえ、昔の先生は来る患者は断らずに、すべて診た。中には一人で一日250名診たという先生もいるくらいで、50名くらいは普通に診ていた。こうした先生は治療自体もかなり早く、抜歯5分、形成5分とスタッフにもかなりのことをさせながら、どんどん患者をさばいていった。ところが今の若い先生は、そんな無茶な数の患者を診ると、診療レベルが下がる、1日に診る患者数は20名が限界とし、それ以上の患者は決して取らない。結果、これまでの来ている患者を見るだけで、予定数が終了してしまい、忙しいと言って新患を断ることになる。

 

忙しい、忙しいと言っても、早く治療できる人に比べると、それほど忙しいわけではなく、収入も少ない、本来ならもっと治療効率を高め、短時間で治療できるようにしなくてはいけない。一個、五円のネジを1日に1000個がやっとの職人が、1日に1万個作れるベテランの職人に、そんなに早い仕事はろくなものではないと批判できまい。ただ技術が劣っているだけで、もっと早くできるように修練すれば、給料も増える。同じことが歯科医にも言え、早い治療というのも臨床技術の一つであり、特に若いうちは体力のあるので、どんどん治療をして、早い治療をできるようにすべきであり、忙しいと言って断るのは勿体ない。私自身も、大学にいたときは一人の患者に1時間、1日に4名くらいしかみていなかったが、今は15分、観察も入れれば1日に40名くらいは可能である。診療内容はむしろ上がっていて、こうした技術というのは、あるレベルまではどんどん早くなり、かつ内容も落ちない。

 

忙しいと断るのは簡単であるが、忙しくても受けてみれば、いい経験になることもあるし、能力も高まる。ただ私のように引退間近な年配の先生は、忙しいという言い訳は許してほしい。体力、精神的に疲れている。



2023年4月19日水曜日

シンプルライフ

 

左上からアディダスROME, オニツカタイガーコルセア、ニューバランス990V4,
アディダス バルセロナ、ニューバランス990V5、アディダスSL72



玄関にあった5つの冬用のブーツも綺麗にして、来冬まで箱に入れて屋根裏部屋にしまった。いよいよスニーカーの季節になったが、玄関横の靴入れを見るとスニーカーだけで10足、さらにワークブーツが2つ、そしてスーツ用の靴が3つもある。一体、どれだけ靴があるんだろう。

 

そういえば、子供の頃、それも大学入る頃まで、基本的には靴は1つ、あとは長靴くらいしかなかった。足のサイズが大きくなる、あるいは破れて履けなくなるまで、同じ靴は履いた。よくあったのは、靴のサイドと靴底の境の部分が裂けて指が見える状態である。歩くたびにカポカポして歩けない。こうした状態になって初めて、母親に「靴が破れたので新しい靴が欲しい」と告げる。尼崎市の三和商店街の一番奥の方に安い靴を売っていた店があったので、そこまで母親と一緒に行って、買ってもらった。中学生になると、サッカー部に入ったので、靴は通学兼練習用のトレーニングシューズ、よく履いていたのはオニツカタイガーのリンバーという靴と、サッカー用のスパイクであった。これも基本的には破れて履けなくなるまで使い、そうなってから新しい靴を買った。

 

こうしたことは大人でもそうで、さすがに女の人はいろんな靴を持っていたが、親父についていえば、34足しか靴はなく、それを修理しながら使っていた。昭和50年頃までの話であるが、当時は、靴は非常に高く、貴重品だったし、そもそも、何足も靴を持つという発想がなかった。気に入った、あるいは履きやすい、歩きやすい靴があれば、一足で十分だという発想である。さらにいうなら、当時の靴、特に革靴はかなり硬く、新品の靴は履きにくく、歩きにくかった。豆ができたり、靴擦れができても、我慢して履き続けると次第に馴染んできて、歩きやすくなる。こうしたエイジングの期間もあり、一足を大事にした。もちろん、靴底が減れば、修理して直し、20年以上使う靴は普通であった。

 

こうした靴一足主義が失われていったのは、私の場合、大学生に入ってからである。時期は1970年の後半。雑誌「ポパイ」などが創刊され、それまでオシャレと無縁であった私も、こうした雑誌を読むと、アディダスのスタンスミスが、トップサイダーのデッキシューズが、セバゴのロファーが欲しくなり、金を貯めては買っていくと、たちまち狭いアパートの玄関が靴でいっぱいになった。自分では同じ靴を毎日履くと、傷みやすいと言い訳をしていたが、要はオシャレのために靴を買ったのだ。

 

同様に電化製品も、故障して、修理しても治らない、何度も故障する場合にのみ、新しいものを買ったが、最近では、故障していなくても、新しい電化製品を買うことが多い。まんまと資本主義のカラクリにはまっていて、結果、家中が物だらけになっている。アップルの創業者、スティーブジョブズは、一年365日、リーバイスの501ジーンズ、イッセイミヤケの黒のタートルネック、ニューバランスの992モデルのスニーカーであった。いずれも単体の商品として、機能的にもファッション的にも優れたものである。流石に衣料は、同じものを毎日着るわけにはいかないので、スペアを持たなくてはいかないし、冬用、夏用の衣料が必要となる。それでも自分の気に入ったものをとことん使っていくのも1つの生き方として、憧れる。

 

ここ数年、いろんな衣料を着てみたが、こうしたシンプルな衣服のコーデネートを考えると、まずスニーカーはニューバランス990で決まり。現在、V6まで進化しているが、あまり大きな変化はない。ズボンはLLビーンのドレスチノ(20年愛用)、冬はダブルエルチノ(同じく15年愛用、裏地付き)、上着は、冬はパタゴニアのキャプリーン・サーマルウェイトベースレーヤーとR2フリースのコンビ、夏はLLビーンのポロシャツ、などが着やすく、楽である。同様にダウンジャケットも、Nanga最強のマウンテンビレーコートもすばらしいだが、実際に一着となると、むしろLLビーンの初期のゴアテックスのWarden Parka25年ほど使っていて、こちらの方が良いかもしれない。今年は、Wild things のモンスターパーカーもかなり着た。ただパタゴニアのR2は生産中止となったし、最新のWarden Parka3wayになったのはいいが、重い。もはやスーツなど着ることもなくなったので、何とかできるだけ少ないワードロープで老後を過ごしたいと思っているが、最近着る服の80%はパタゴニアかLLビーンに偏っていている。どちらも高価であるが、10年以上は楽に持つので、使う頻度が高ければ、コスパは高い。


2023年4月14日金曜日

若者の流出

 








東京の先生と話していて、羨ましいのは、転医患者が少ないことである。青森のような地方では、高校を卒業すると、進学、就職で東京など県外に出る場合が多く、そのため、東京の後輩に治療の継続を頼むことが多く、大変心苦しい。おそらく年間で10名以上の患者紹介をしているが、一方、県外からこちらに紹介いただく患者は数名くらいである。実際、東京の先生に聞いてみると、高校生は卒業後、東京の大学に進学することが多く、そのため転医も少ないという。同様に大学生についても、弘前市で言えば、弘前大学の学生も卒業後、東京の会社に勤務することが多く、これも結局は東京の先生に紹介することになる。

 

あまり紹介が多くて、後輩には一方的に世話になりっぱなしなので、ここ10年くらいは患者の受け入れにはかなり気を遣っている。高校生であれば、高校2年生、大学生も3年生以降の人は治療を断っていて、卒業後に治療することを勧めている。今は子供の治療をしていないので、受け入れ患者は限定していて、中学3年生、高校1年生、大学1、2年生、社会人以外はすべて断っている。それでも転職で県外に行く人も多くて、社会人についても、転職の可能性のある人は断っている。東京の先生は、こうした配慮をすることは少ないであろう。

 

これは単なる矯正患者について当てはまることではなく、東京への若者の流出という大きな問題につながっている。こういう言い方は誤解をされるかもしれないが、地方では優秀な人材がすべて中央に吸い上げられ、それ以外の人しか地元に残らない。まず、弘前高校など地元の進学校では、成績の良い生徒は、東京大学、東北大学、早稲田、慶應大学などの県外の名門大学に進学し、そこの大学卒業後も大企業に就職して、青森県に帰ることはない。それでも地元に国立弘前大学があるので、ここに進学する優秀な学生がいるが、これも大学卒業後は県外の大手企業に就職するために、地元に残らない。さらにいうと、若手でもバイタリティーもあって、何かやってみようという活力のある若者は、当然、上京するし、音楽や芸術に才能のある若者も上京するだろう。

 

結局、地元に残るのはこれ以外の若者ということになる。優秀な若者にとって地方は、給与や仕事も含めてあまり魅力のないところなのだろう。そのため、昭和60年頃には150万人であった青森県の人口も今は120万人ほどになり、さらに若者人口が急速に減少している。こうした流れは、東京都との賃金格差が広がるにつれますます強くなり、今後は、建設業、工場労働者、運送業の不足に伴い、大学進学者以外の若者についても、人口流出が起こりえる。

 

若者の人口減少に対して、青森県でもユーターンや転住制度など色々な工夫をしているが、あまりうまく行っていない。何かいい案はないかと考えるが、まず収入が高くていい生活ができなくてはいけない。まず公務員、たとえば警察官で言えば、一番月給の高い大阪府、東京都で49万円に対して、一番低い宮城県、青森県で41万円となる。家賃などを考えると、この差はむしろ宮城県や青森県の方が豊かな生活ができる。同様に教員など他の公務員についても、東京や大阪の都市部では給与的には厳しいが、地方ではそこそこに豊かな暮らしができる。地方にとって、公務員と地方銀行が給与の良い仕事に挙げられる。全国的に給与差が少ない職業が、地方で豊かに暮らせる仕事といえよう。公務員以外で言えば、全国企業に勤めるサラリーマンで、例えばJR、日銀、大企業の地方支社に勤める人は、地方は物価が安いので東京よりいい生活ができるであろう。同じようなことは、歯科医、医師についても、開業医、勤務医ともに地方と都市部はあまり収入、給与に差がなく、同様なことが言える。

 

平成28年度の調査によれば、市町村別農業産出額ランキングでは、一位が愛知県の田原市で858億円だが、10位に弘前市が入っており435億円と健闘している。田原市は取り立てて有名な農産物もないが、野菜、果実、肉など幅広い農業をしており、6万人の人口だが、弘前市の約2倍の農業収入を上げている。そのため田原市の平均所得は594万円で全国所得平均より90万円も高く、地方での生活を考えると豊かな市といえよう。このことは3Kの代表的な仕事とされる農業でも、やりようによってはそこそこの収入が上がることを意味する。また円安とアジアを中心とした経済発展、給与の増加に伴い、日本製品の割安感は強くなり、昔は安いアメリカ、中国産のリンゴが日本に入ってきたが、これからは青森のリンゴが高級果実として輸出できる時代になってきた。また日本でも数少ない自給率の高い青森県は、農産物、水産物、林産物、あるいは電力、軍隊、などを高い付加価値をつけて都市部に売ることができる。たとえば、三沢には米空軍が、車力には米陸軍のXバンドレーダー基地、さらに陸上、海上、航空自衛隊の基地、むつの釜臥山のガメラレーダーがあり、これらは青森県を守っているのではなく、都市部を含む日本の防衛に貢献している。青森県人はおとなしいので、沖縄ほど、金をよこせとは言わないが、それでも戦争になると真っ先に攻撃されるリスクを考えると沖縄振興予算に該当するような補助金を要求してもおかしくはない。同様に東通村、六ヶ所村には原発、核再処理工場などがあり、万が一の場合、同地区だけでなく、青森県全般に被害が出る。電力の多くを県外に送電している点を考えると、単にむつ地域に金を落とすだけでなく、青森県の電気料金を安くしてもおかしな要求ではあるまい。

 

要するに県内の優秀な人材を毎年、都会に送り続けるなら、単に地方交付税以外の恩恵あってもいいし、農産物を含む一次産業品の輸出を県としてはサポートし、より高価値となれば、国内消費分も高い金額を要求できる。結果として、農業、水産業、林業などの第一次産業が魅力的な職業となり、高い収入が得られるなら、若者の地元への定着率は高まるのではなかろうか。ぜひ新しい県知事に期待したい。





2023年4月11日火曜日

E-bike Giant Escape RE+

 


ようやく電動アシストバイクを買った。数年前から、坂道を自転車で登るのが苦になって、電動アシストバイク、最近の言い方ではE-bikeが欲しかった。電動アシスト自転車はもともと日本のヤマハが発明したものであるが、日本では、ママチャリの電動アシスト化として主としてお年寄りの自転車から出発し、さらにパナソニックが子供を乗せる自転車として電動アシスト自転車を作り、発展したが、欧米では10年ほど前まえから若者を中心として、よりスピードが出る自転車としてE-bikeが出てきた。そのためデザインも日本のものは、従来のママチャリにモーターとバッテリーを積んだものだが、欧米のものは、クロスバイク、ロードバイク、マウンテンバイクなどにドイツのボッシュのモーターを積んでいる。こうした流れがあって、ここ3、4年前から日本のメーカーも若者向けのE-bikeを出しているが、どうもカッコよくない。

 

E-bikeのメーカは、日本ではヤマハ、パナソニック、ブリヂストン、ミヤタなどがあるが、欧米ではスペシャライズド、トレック、キャノンデールなどが有名で、さらに台湾メーカーではGiantや新しいメーカーとしてはBESVなどがある。最近の欧米のE-bike はバッテリーがフレームと一体化してものが多く、とりわけ、アメリカのスペシャライズドは自社開発のユニットを装備しているので、E-bike13kgとかなり軽く、外から見ただけではEbikeとわからない。Trekの最近でたE-bikeもリアタイヤにユニットを装備したものでは15kgと軽いが、他のメーカのものはだいたい20kg前後で、スポーツバイクとしては重い。

 

最初は、車体重量が軽いのでスペシャライズのE-bikeを購入しようと思ったが、値段が高く、2021年から22年に数万円上がったり、また販売を直営化していて近くの自転車屋で購入できなかったこともあり、諦めた。次にトレックのE-bikeを候補に挙げたが、ここも直営販売がメインで、扱っていない。実際に近所の自転車で扱っているE-bikeは国産のものと、台湾の2社、そしてキャノンデールのものであった。そのため、台湾の2社、Giant BESV の2社から絞り込み、最終的には世界でも自転車シェアの大きなGiantE-bikeがヤマハのユニットを使っているので、ここのE-bikeを買うことにした。Escape RE+というエスケープというクロスバイクをE-bikeしたものにした。当初ついているペダルは1200円くらいもママチャリ用のものだったので、最近流行りの三ヶ島のフラットペダルに交換した。

 

注文したのが3月初めだったが、雪が完全に消えるまで預かってもらい、実際に納車したのは2週間前くらいである。まずショックだったのは、Sサイズ(160-180cm)176cmの私からすれば余裕と考えていたが、一番、下げたサドル位置でも両足が完全につかない。焦った。169cm家内に座らせると両足ともがっちりとつき、サドル位置を10cmくらい上げたところがベストポジションだったということは、私の足がいかに短いかということを物語っている。ただフレームサイズ(高さ)はXS445cmS485cmM525cmMサイズは日本人では厳しいと思うし、165cm以下の男女ではSでもサドルが高いかもしれない。それでも一番低いポジションで、何とか乗れそうなので、これで慣れることにする。まず乗ってみると、そのアシスト力に驚く、すべての坂が全く力を入れずに登れるし、普通の道であれば、一回漕ぐと10mくらいは進むので、ずっと漕ぐ必要がない。アシストモードは、ECOTOURACTIVE, SPORTモードの4つであるが、通常はTOURモード、やや坂がきついと、まず変速機で軽いギアーにして、それでもきついようならACTIVEにする。まだSPORTにしたことはないが、かなりきつい坂が長く続くようならこのモードを使うのだろう。車体重量は重いが、アシストがお尻を押してくれるような感覚で、それほど重さは感じない。これまでの自転車に比べてほとんど漕ぐ力がかからないので、いくらでも進める感覚が起こり、いつの間にかかなり遠くまで行ってしまう。以前に自転車に乗っていた時に比べると1.5倍くらい走行距離は伸びた気がする。

 

近くの川沿いに自転車道が5kmくらい続いているので、そこを走ってみると、一番重いギアで軽く走って平均で20kmは出るが、25kmすぎると制限がかかるので、そこからが自力によるが、30kmまでは簡単に出た。この車体重量、タイヤの太さで、このスピードは感激する。ただ今回、生まれた初めてヘルメットをかぶって自転車に乗っているが、軽いものを選んだつもりであるが、それでも慣れていないのか、肩が凝る。何とかならないだろうか。

 

折りたたみ椅子も買ったので、リアの荷台に積んで、今流行っているチェアリング、あるいは弘南鉄道、大鰐線のバイクトレーンも使ってみようと思う。



2023年4月9日日曜日

マウスピース矯正の詐欺事件を考える

 






最近は朝のワイドショーなどで、マウスピース矯正をめぐる金銭トラブル、健康被害などの報道がある。これに関しては、投資会社、弁護士、歯科医が責任をなすり合って、肝心の患者対応に関しては、当事者の歯科医、伊藤剛秀という先生がテレビで、被害にあった患者の治療継続を、責任を持ってするとインタビューを受けていた。治療費は3000円、アタッチメントをつける時は1万円と具体的な数字を挙げて説明していたので、期待したい。ただこの先生に関するツイッターの情報によれば平成31年(2019)に自己破産しており、とても自己資金で歯科医院を開くことはできず、どこかの歯科医院で勤務していると思われ、実際にこの費用でどこまで患者の救済ができるか不明である。インビザライン社も、最近救済処置を申し出ており、製品の供給の延期、新しい歯科医の紹介などを行うとしている。ただし日本矯正歯科学会認定医以上の先生との指定があり、おそらく多くの矯正専門医は、もう一度、検査をし、少なくともインビザラインの技工代を除いた費用は患者に請求するため、150万円の借金を背負った上のさらなる治療費がかかる。

 

矯正歯科専門医のところで治療をしても、結果に満足しない場合も多々あるとは思うが、確率からすると一般歯科、特に最近、開業したインビザライン専門医院でのトラブルが圧倒的に多い。今回問題となった“デンタルオフィースX”についても、そのHPの内容は、患者誘導、誇大広告など、医療広告法に抵触するものが多く、現行では6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金が科されるとされているが、実際に実行されたことはなく、ザル法に近い。HPでこうした患者にとっては甘い誘う文句があれば、そちらに行くのは目に見えており、まず広告法の厳守化が求められる。そのためには、厚労省による各歯科医院のHPのチェックが必要であるが、実際にそんなことができる時間もないし、人員もいない。となるとどこかの組織が自主的にチェックして、医療広告法を守る必要がある。日本矯正歯科学会では、認定医、臨床指導医については、すべて資格更新の際にチェックをして改定されなければ、資格更新をできないことになっているために、明らかに派手で、ひどいHPはない。

 

一方、一般歯科では、こうした医療広告法についてのチェック機関がないため、ほとんど野放し状態となっている。これはやはり都道府県の歯科医師会で、会員のHPをチェックして、修正を要求すべきであり、何度修正を求めても、修正されない場合は、厚労省につげ、厳密に罰金、懲役刑に課すべきである。また東京では、審美歯科、マウスピース矯正専門歯科医院などは歯科医師会そのものに入会していないが、それでも会員によるタレコミがあれば、歯科医師会でHPをチェックして、修正要求はできる。

 

悪貨は良貨を駆逐するというが、ネット社会となり、患者集客のために、かなり派手で、際どい宣伝をする歯科医院が多くなっている。そして患者もこうした歯科医院に流れる傾向がある。そのためもあって、医療広告法の規制は年々厳しくなっているが、それをかいくぐるように集客用の広告がなされる。イタチごっこになるのかもしれないが、物を売る商売に比べて、歯科医院は院長個人で医院経営をしているところが多く、またすぐに医院を畳むことができないため、脅せば、すぐに医療広告法の厳守はできる。例えば、HPで一箇所でも医療広告法に触れれば、歯科医師免許の剥奪といった処置をすれば、あらゆる媒体から宣伝はなくなる。私のところのHPも怖いので、即刻閉鎖するだろう。ここまで極端にしなくても、厚労省からの通知で脅すだけで、修正される。一番問題なのは治療前後の写真で、今は限定解除の要件を満たせば、OKであるが、これはすべて禁止、価格が安くなるなどの表現もこれまで品位に欠くといったグレイゾーンであったが、これも禁止、つまり医院の住所、医師の紹介、費用など決まった形式のものしか書けないHPにすればよく、グレイゾーンをなくして医療から広告要素を排除すればよい。

 

もし今回のマウスピース矯正の詐欺事件でも、こうした広告をHPで出すこと自体が禁止されていれば、そもそも被害者はいなかったはずである。1990年頃まで医院、歯科医院は、電柱看板、タウンページの広告しかなかったことを考えれば、確かに不便な点も多いが、何とかはなる。今回のことを契機に、さらなる医療広告の規制と罰則強化が望まれる。またマウスピース矯正に対しては、特定商法取引法の類型にしたほうがよい。契約を面倒にすれば、一時的に始めた歯科医院も面倒でやらなくなるからである。ホワイトニングについては、この制度が適用され、高額のコースはなくなった。

 



2023年4月7日金曜日

日本人は評価が厳しい

 



コンピュータゲームソフトの会社が、以前、ネットで新しいソフトを販売するのは、日本よりまず海外にすると言っていた。理由として、ソフトの売り上げには、ユーザーの評価が大事であるが、日本のユーザーは海外のユーザーに比べて評価が厳しく、結果、日本での販売を先行すると低評価のソフトとなって売れないことになる。

 

星の数で評価する場合、5つ星で評価することが多いが、海外の人は5つ星が普通で、それより内容が落ちると減点されて、4つ星、3つ星となり、一つ星はありえないが、 日本では3つ星が標準で、それより内容が良ければ4つ星となるが、5つ星になることは極めて稀となる。これはゲームソフトの評価だけの話ではなく、レストランなどの評価、食べログや、病院、歯科医院、あるいは美容院の評価、Googleのクチコミも同じである。

 

アメリカの歯科医院のgoogleのクチコミを見ると、多くの歯科医で5つ星が普通で、まず一つ星というのはないが、日本の歯科医院のクチコミを見ると、1という厳しい評価も多い。普通に考えれば、星一つと評価するなら、そこに行かなければいいだけのことであるが、それを星一つと評価してコメントをするのは、明らかにおかしなことである。当然、その店や診療所が、実際に星一つに値するようなひどいところであれば、そもそもお客、患者は来ないし、最終的に潰れることになる。お客、患者を多く、長く繁盛している店や診療所は、それなりの理由があり、一つ星をつけて辛辣なコメントをする人は、むしろおかしな人ということになる。

 

実際、私のところの診療所に対して、厳しいクチコミをした患者さんがいて、内容や日時から投稿者が判明したケースが2例ほどあった。確かにこちらのミスや治療により痛かったりしたのだろうが、こうした歯科医院への怒りをすぐに投稿する。そしてこちらから指摘すると、慌て、否定し、認めるというパターンである。実に軽い気持ちで投稿し、そのまま忘れているようだが、こうした評価、クチコミは数年にわたって掲載され、当事者としては凹み続ける。普通、自分のことを他人から星一つと評価され、それがネット上に数年掲示されれば、どれだけ傷つくか、すぐに想像できそうなものである。匿名でバレないということがまず前提なのだろう。

 

私自身もコメントでは、反省することがあった。以前、豊田正義著、「妻と飛んだ特攻兵」のアマゾンのコメントで、同書に星一つをつけたことがある。この本の20年前に出版された吉村和夫著、「津軽異聞」という本があり、その中に「夫婦特攻」という記述がある。内容は「妻と飛んだ特攻兵」とかなり重複するだけでなく、故人を直接知る親戚などの重要なインタビューもあるが、同書の引用が全くなかったことに腹を立てたことによる。ノンフィクションライターの最初の大事な仕事は資料集めであり、こうした重要な本を見逃すのはプロとしてありえないと思ったからである。ところがすぐに豊田さんにインタビューを受けた遺族の方から抗議があり、豊田さんは熱心に取材をして本を完成された、「津軽異聞」という本はたまたま知らなかっただけで、あなたの評価は間違っているということであった。すぐにお詫びをして、訂正した。よく考えれば、「津軽異聞」は弘前で出版された郷土本で、出版数もせいぜい数百部程度で、全国の多くの図書館にもないし、1980年代に吉村さんから取材を受けた関係者もほとんどは亡くなり、そのさらに子供、孫の代になると、昔、吉村さんから取材を受け、その内容が「津軽異聞」や地元新聞でも取り上げられたことは知らないであろう。「妻と飛んだ特攻兵」の文庫本では、私が指摘した他の箇所も含めて修正があり、豊田さんの誠実な人柄がわかり、インタビューを受けた方からの抗議もよくわかった。

 

こうしたこともあり、それ以降、コメントやクチコミをする場合は、絶対に悪いクチコミはせず、良かったものだけ星5つでコメントするようにしている。あそこには行くなよりは、あそこに行った方が良い、使った方が良いと言った方は、社会のためにはプラスになるし、別に星一つと思うところは自然淘汰されるからである。もうそろそろ、匿名でのネット投稿は禁止にした方が良いかもしれない。

 


2023年4月6日木曜日

歯科医の引退

 






先日、診療終了後の6時半頃に近所を散歩していると、知人の歯科医とその診療所の前で会った。なんでも今日で、診療所を閉院するというこことであった。体の調子が悪いのかと聞いたが、特にそうした問題もないが、そろそろ引退かと思い、思い切って引退したようだ。私の診療所の壁には、20年ほど前に弘前市歯科医師会で作った市内の歯科医院の場所を示す地図がかかっている。閉院した歯科医院はその都度、サインペンで消しているが、すでに30件以上の歯科医院が閉院している。もちろん新たに開業した歯科医院も書き込んでいるが,せいぜい15件くらいで、閉院する歯科医院の方が多い。

 

一般企業では、60歳定年が80%65歳定年が16%くらいであり、近年、定年退職年齢は上がっているとはいえ、70歳まで働くとことはない。歯科医院では、こうした定年制度はないので、体が元気なうちは働こうという先生もいて、私の父も歯科医であったが、85歳まで現役で歯科医をしていたし、兄も70歳を過ぎてもまだまだ歯科医をしている。ただ弘前市の歯科医に聞いてみると、70歳で歯科医を辞めたという先生が多く、最近では65歳くらいで辞める先生もいる。とにかく老後の資金があれば、一刻も早く辞めたいという先生が多い。

 

私の友人の歯科医、多くは66歳前後であるが、皆会えば、早く辞めたいという。その理由を尋ねると、まず仕事がきつい、とりわけ患者との応対に苦労するという。具体的に言えば、患者からのクレームが多く、その対応に苦慮する。私のところの矯正歯科でも、患者さんからの治療へのクレームでへこたれることが多い。数は少ないのだが、それでもこうしたクレームがあると、つい早く引退したいと思ってしまう。昔はこうしたクレームがあってもそれほど落ち込まなかったが、年齢をとると、体力的な疲れ以上の、こうした気苦労によるストレスがきつい。子供の頃から父親の仕事を見ていると、朝9時から夜の10時まで働き、体力的にはきついとは思ったが、それほど患者からのクレームがなく、むしろお中元、お歳暮を送ってくる患者が多く、毎回20-30件あったし、それ以外にも患者さんからのお礼として作った野菜をくれたり、大相撲や野球のチケットをくれたり、一番驚いたのはロレックスの時計をくれた患者もいた。私の場合も、小児歯科にいた1980年頃は、修学旅行に行ったと言ってはお土産を買ってくれた子供がいたり、1985年から矯正歯科にいたときはお礼の現金を持ってくる患者がいて困ったことがあった。開業した1995年頃もまだ、患者からケーキやアイスの差し入れがあったが、ここ10年ほどはほとんどこうしたお礼もなくなった。別のお礼が欲しいわけではないが、こうした患者から医師、歯科医への感謝が実感として感じにくくなった。

 

矯正治療の場合は、自費で高額な費用がかかるために、お礼どころでないことはわかるが、保険を主体としている友人の歯科医でも、患者からお礼の品を受け取ることは少なくなり、一方、治療の方でうまくいかないとクレームが来ることが多い。作ってきた補綴物の適合が悪く、もう一度、再製作する場合があるが、わざわざ来たのに補綴物が入らないのはそちらの責任だから、ここまでの交通費を払えという患者がいる。こうした患者はもちろん例外的あるが、こうしたクレームが多いと歯科医、あるいは医師もだんだんやる気がなくなり、引退を考えるのは事実である。

 

近所の安くて美味しいレストランが閉店するという。残念だ、続けてほしい、閉店日には多くのお客でごった返す。テレビや新聞で毎日のようにこうした報道があるが、閉店を残念がる前に、どうしてその店で食べにいかなかったのか。みんながしょっちゅうそのレストランに食べに行き、いつも混雑して、収入も多ければ、息子も後を継ごうと思ったかもしれず、閉店しなくてもすんだかもしれない。同様に、歯科医院、医院も患者がクレームばかり言っていると、いつの間にか近所に歯科医院、医院がなくなったということになる。昔の人は料理がうまかったら、美味しかったと支払いの時に言っていたが、こうした言葉はお店の人や料理人にとっても気持ちのいいものである。食べログで、低評価をして、いろんな注文をつけるよりよほど建設的である。

 

弘前市内で言えば、後10年で、歯科医院は、20年前のほぼ半分になることが予想されており、郡部では無歯科医となるところも出てくる。最近の患者は医療を受ける場合、他の商売同様に金を払えば、それに見合うサービスを受けると割り切って考えている。別にそれは構わないが、逆に言えば医師、歯科医側も、無医地区になって、住民が困ってもそれは関係ないという理屈となるし、自費の患者と保険の患者では費用が違うのだからサービスにも差があって当然となる。これで本当にいいのか。


2023年4月2日日曜日

コロナ禍に便乗

 

冬の歩道(代官町)、高さが1mくらいの登り



最近は、コロナ禍に便乗した商品の欠品が目に付く。半年前に注文したゴムメタルというワイヤーがいまだに入荷しないので、メーカーに連絡したところ、「コロナのせいで製品が作られない」という、「確かおたく製品は日本の工場で作っており、あまりコロナとは関係ないのでは」と尋ねると、「実は製品を作っている工場の従業員がいない」という。作っている従業員がいないのであれば、何とか雇って作らせたらよいように思えるのだが。そこで「その製品はよく宣伝しているが、おたくの会社であまり売れていない製品なのか。」というと「主力製品でよく売れています」という。流石にこの時点で少しキレ、「主力製品が6ヶ月も生産されず、入荷しないという状態に社長は何にも思わないのか。もしそうなら社長失格だ」と言って電話を切った。その後、2、3日して何とか入荷することになりましたとの連絡があったが、客からのクレームでこんなに早く解決することを6ヶ月も放置するのは怠慢であろう。

 

同じように事例が昨日もあった。これも昨年の10月に学会で注文した矯正用器具、ピンカッターである。注文して5ヶ月経つので、会社に連絡すると、「コロナのせいで原料が手に入らず、工場の生産が遅れている」という。「5ヶ月も原料、金属が入らず、生産できていないのであれば、会社は倒産するのではないか」というと、今度は「いや全製品の生産が遅れているのではなく、注文した製品の生産が遅れている」という。ここで再びキレ、「いつになったら、注文した製品が生産するのか」というと「年内には」というので、「年内というと今年の12月。さらに9ヶ月待つというの」、「それは他の似たような商品に注文をかえてほしいということか」というと「はいそうです」ということになり、結局は他の商品に注文を変えた。

 

営業マンも大変であるのはわかるが上記のようなコロナのせいにする言い訳がどうも最近多い。現在の社会は世界中のサプライチェーンで結ばれているので、中国での生産停止が世界中に影響を及ぼすことは十分に理解している。それでも生産が半年も停止すれば、会社自体が消滅するのははっきりしており、何とか材料の確保に躍起になる。それ故、よほど売れている自動車では1年待ちということはあっても、それはコロナのせいではなく、人気車種で生産が追いつかないだけである。おそらくコロナによる注文、納期についてのクレームが日常化して、もはや当たり前のことになり、本気で解決しなくなったのであろう。それが負の連鎖で、ますます物は生産されても、流通が正常化しても、遅れて当たり前という言い訳が罷り通るようになったのであろう。

 

さらに状況がひどいのは建築業界で、ここはコロナ前から資材と人材が不足していた。まず大工になる若い人が少なく、業界自体が高齢化しており、足場作り、佐官などの周辺の仕事をする人も同じような状況であった。これに追い討ちをかけるように輸入木材が高騰し、さらに人材不足から賃金が上昇し、結果的に建築コストが大幅に上がったばかりでなく、納期も遅れている。弘前でもマンションブームで数年前から多くのマンションが建っているが、最初のマンションが2LDK4000万円台であったが、23年前には5000万円台となり、今建てて分譲しているマンションは何と6000万円台となっている。土地代はむしろ下がっており、この価格の上昇は建築費の高騰と考えてよい。知人も、新しい老人ホームを黒川紀章の設計を依頼し、土地まで買ったが、建築費の高騰で中止となった。今後も若者人口の減少と3K職への忌避から、ますます建築作業員が減少し、結果的には建築費が増加していくだろう。全国建設労働組合総連合の調査によれば、2021年の大工の平均年収は449.8万円、これは前年より23.4万円、5.5%の上昇である。一方、建設就業者は4年連続減少、2022年は前年に比べて6万人減っていて、ますます人材確保が今難しく、賃金上昇をもたらす。

 

コロナ禍もようやく終息に向かっているが、ウクライナ戦争の影響もあり、どうも物価は上昇傾向にあり、サプライチェインもまだ回復していない。どうもコロナ禍前の日常生活に戻ることはないかもしれない。