2023年4月7日金曜日

日本人は評価が厳しい

 



コンピュータゲームソフトの会社が、以前、ネットで新しいソフトを販売するのは、日本よりまず海外にすると言っていた。理由として、ソフトの売り上げには、ユーザーの評価が大事であるが、日本のユーザーは海外のユーザーに比べて評価が厳しく、結果、日本での販売を先行すると低評価のソフトとなって売れないことになる。

 

星の数で評価する場合、5つ星で評価することが多いが、海外の人は5つ星が普通で、それより内容が落ちると減点されて、4つ星、3つ星となり、一つ星はありえないが、 日本では3つ星が標準で、それより内容が良ければ4つ星となるが、5つ星になることは極めて稀となる。これはゲームソフトの評価だけの話ではなく、レストランなどの評価、食べログや、病院、歯科医院、あるいは美容院の評価、Googleのクチコミも同じである。

 

アメリカの歯科医院のgoogleのクチコミを見ると、多くの歯科医で5つ星が普通で、まず一つ星というのはないが、日本の歯科医院のクチコミを見ると、1という厳しい評価も多い。普通に考えれば、星一つと評価するなら、そこに行かなければいいだけのことであるが、それを星一つと評価してコメントをするのは、明らかにおかしなことである。当然、その店や診療所が、実際に星一つに値するようなひどいところであれば、そもそもお客、患者は来ないし、最終的に潰れることになる。お客、患者を多く、長く繁盛している店や診療所は、それなりの理由があり、一つ星をつけて辛辣なコメントをする人は、むしろおかしな人ということになる。

 

実際、私のところの診療所に対して、厳しいクチコミをした患者さんがいて、内容や日時から投稿者が判明したケースが2例ほどあった。確かにこちらのミスや治療により痛かったりしたのだろうが、こうした歯科医院への怒りをすぐに投稿する。そしてこちらから指摘すると、慌て、否定し、認めるというパターンである。実に軽い気持ちで投稿し、そのまま忘れているようだが、こうした評価、クチコミは数年にわたって掲載され、当事者としては凹み続ける。普通、自分のことを他人から星一つと評価され、それがネット上に数年掲示されれば、どれだけ傷つくか、すぐに想像できそうなものである。匿名でバレないということがまず前提なのだろう。

 

私自身もコメントでは、反省することがあった。以前、豊田正義著、「妻と飛んだ特攻兵」のアマゾンのコメントで、同書に星一つをつけたことがある。この本の20年前に出版された吉村和夫著、「津軽異聞」という本があり、その中に「夫婦特攻」という記述がある。内容は「妻と飛んだ特攻兵」とかなり重複するだけでなく、故人を直接知る親戚などの重要なインタビューもあるが、同書の引用が全くなかったことに腹を立てたことによる。ノンフィクションライターの最初の大事な仕事は資料集めであり、こうした重要な本を見逃すのはプロとしてありえないと思ったからである。ところがすぐに豊田さんにインタビューを受けた遺族の方から抗議があり、豊田さんは熱心に取材をして本を完成された、「津軽異聞」という本はたまたま知らなかっただけで、あなたの評価は間違っているということであった。すぐにお詫びをして、訂正した。よく考えれば、「津軽異聞」は弘前で出版された郷土本で、出版数もせいぜい数百部程度で、全国の多くの図書館にもないし、1980年代に吉村さんから取材を受けた関係者もほとんどは亡くなり、そのさらに子供、孫の代になると、昔、吉村さんから取材を受け、その内容が「津軽異聞」や地元新聞でも取り上げられたことは知らないであろう。「妻と飛んだ特攻兵」の文庫本では、私が指摘した他の箇所も含めて修正があり、豊田さんの誠実な人柄がわかり、インタビューを受けた方からの抗議もよくわかった。

 

こうしたこともあり、それ以降、コメントやクチコミをする場合は、絶対に悪いクチコミはせず、良かったものだけ星5つでコメントするようにしている。あそこには行くなよりは、あそこに行った方が良い、使った方が良いと言った方は、社会のためにはプラスになるし、別に星一つと思うところは自然淘汰されるからである。もうそろそろ、匿名でのネット投稿は禁止にした方が良いかもしれない。

 


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