2023年4月14日金曜日

若者の流出

 








東京の先生と話していて、羨ましいのは、転医患者が少ないことである。青森のような地方では、高校を卒業すると、進学、就職で東京など県外に出る場合が多く、そのため、東京の後輩に治療の継続を頼むことが多く、大変心苦しい。おそらく年間で10名以上の患者紹介をしているが、一方、県外からこちらに紹介いただく患者は数名くらいである。実際、東京の先生に聞いてみると、高校生は卒業後、東京の大学に進学することが多く、そのため転医も少ないという。同様に大学生についても、弘前市で言えば、弘前大学の学生も卒業後、東京の会社に勤務することが多く、これも結局は東京の先生に紹介することになる。

 

あまり紹介が多くて、後輩には一方的に世話になりっぱなしなので、ここ10年くらいは患者の受け入れにはかなり気を遣っている。高校生であれば、高校2年生、大学生も3年生以降の人は治療を断っていて、卒業後に治療することを勧めている。今は子供の治療をしていないので、受け入れ患者は限定していて、中学3年生、高校1年生、大学1、2年生、社会人以外はすべて断っている。それでも転職で県外に行く人も多くて、社会人についても、転職の可能性のある人は断っている。東京の先生は、こうした配慮をすることは少ないであろう。

 

これは単なる矯正患者について当てはまることではなく、東京への若者の流出という大きな問題につながっている。こういう言い方は誤解をされるかもしれないが、地方では優秀な人材がすべて中央に吸い上げられ、それ以外の人しか地元に残らない。まず、弘前高校など地元の進学校では、成績の良い生徒は、東京大学、東北大学、早稲田、慶應大学などの県外の名門大学に進学し、そこの大学卒業後も大企業に就職して、青森県に帰ることはない。それでも地元に国立弘前大学があるので、ここに進学する優秀な学生がいるが、これも大学卒業後は県外の大手企業に就職するために、地元に残らない。さらにいうと、若手でもバイタリティーもあって、何かやってみようという活力のある若者は、当然、上京するし、音楽や芸術に才能のある若者も上京するだろう。

 

結局、地元に残るのはこれ以外の若者ということになる。優秀な若者にとって地方は、給与や仕事も含めてあまり魅力のないところなのだろう。そのため、昭和60年頃には150万人であった青森県の人口も今は120万人ほどになり、さらに若者人口が急速に減少している。こうした流れは、東京都との賃金格差が広がるにつれますます強くなり、今後は、建設業、工場労働者、運送業の不足に伴い、大学進学者以外の若者についても、人口流出が起こりえる。

 

若者の人口減少に対して、青森県でもユーターンや転住制度など色々な工夫をしているが、あまりうまく行っていない。何かいい案はないかと考えるが、まず収入が高くていい生活ができなくてはいけない。まず公務員、たとえば警察官で言えば、一番月給の高い大阪府、東京都で49万円に対して、一番低い宮城県、青森県で41万円となる。家賃などを考えると、この差はむしろ宮城県や青森県の方が豊かな生活ができる。同様に教員など他の公務員についても、東京や大阪の都市部では給与的には厳しいが、地方ではそこそこに豊かな暮らしができる。地方にとって、公務員と地方銀行が給与の良い仕事に挙げられる。全国的に給与差が少ない職業が、地方で豊かに暮らせる仕事といえよう。公務員以外で言えば、全国企業に勤めるサラリーマンで、例えばJR、日銀、大企業の地方支社に勤める人は、地方は物価が安いので東京よりいい生活ができるであろう。同じようなことは、歯科医、医師についても、開業医、勤務医ともに地方と都市部はあまり収入、給与に差がなく、同様なことが言える。

 

平成28年度の調査によれば、市町村別農業産出額ランキングでは、一位が愛知県の田原市で858億円だが、10位に弘前市が入っており435億円と健闘している。田原市は取り立てて有名な農産物もないが、野菜、果実、肉など幅広い農業をしており、6万人の人口だが、弘前市の約2倍の農業収入を上げている。そのため田原市の平均所得は594万円で全国所得平均より90万円も高く、地方での生活を考えると豊かな市といえよう。このことは3Kの代表的な仕事とされる農業でも、やりようによってはそこそこの収入が上がることを意味する。また円安とアジアを中心とした経済発展、給与の増加に伴い、日本製品の割安感は強くなり、昔は安いアメリカ、中国産のリンゴが日本に入ってきたが、これからは青森のリンゴが高級果実として輸出できる時代になってきた。また日本でも数少ない自給率の高い青森県は、農産物、水産物、林産物、あるいは電力、軍隊、などを高い付加価値をつけて都市部に売ることができる。たとえば、三沢には米空軍が、車力には米陸軍のXバンドレーダー基地、さらに陸上、海上、航空自衛隊の基地、むつの釜臥山のガメラレーダーがあり、これらは青森県を守っているのではなく、都市部を含む日本の防衛に貢献している。青森県人はおとなしいので、沖縄ほど、金をよこせとは言わないが、それでも戦争になると真っ先に攻撃されるリスクを考えると沖縄振興予算に該当するような補助金を要求してもおかしくはない。同様に東通村、六ヶ所村には原発、核再処理工場などがあり、万が一の場合、同地区だけでなく、青森県全般に被害が出る。電力の多くを県外に送電している点を考えると、単にむつ地域に金を落とすだけでなく、青森県の電気料金を安くしてもおかしな要求ではあるまい。

 

要するに県内の優秀な人材を毎年、都会に送り続けるなら、単に地方交付税以外の恩恵あってもいいし、農産物を含む一次産業品の輸出を県としてはサポートし、より高価値となれば、国内消費分も高い金額を要求できる。結果として、農業、水産業、林業などの第一次産業が魅力的な職業となり、高い収入が得られるなら、若者の地元への定着率は高まるのではなかろうか。ぜひ新しい県知事に期待したい。





1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

お世話になっております。

まわりみち文庫の奈良です。若者の流出、深刻ですよね。

つい昨日もお客さんとその話題になりまして、弘前の人口がここ数年で2万人近く減ったという話題になりました。優秀かつ地元に残ってくれる若者が増えるように当店も微力ながら貢献できたらと思っております。


前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題でして『津軽人物グラフィティー』+『須藤かく』のセットを購入希望のお客さんがいらっしゃいまして、まだ在庫はありましたでしょうか?

直接ご来店あるいはe-maiでも構いませんので、お返事頂けると幸いです。

お返事は急ぎません。


アドレス→mawarimichibunko@gmail.com


お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。