2021年12月20日月曜日

弘前駅前、吉井酒造事務所と倉庫の用途を考える

 




ホテル東横INN弘前駅前の裏に、あまり弘前の人にも知られていない建物がある。吉井酒造の事務所と倉庫である。弘前駅前の日本チケットの前の道を線路側に行くと、左手に門が見える。個人の建物であるので、内部については全くわからないが、門の左手に事務所とそれに連結した白壁の倉庫がある。かなり大きな倉庫で、幅が20m以上、奥行きも30mくらいある。外から見る限り比較的、コンデションもよい。門の右手にも白い漆喰で塗られた小さな蔵のようなものが並んでいる。グーグルマップで見ると倉庫の裏には、さらに幅は15mくらい、奥行きは50mくらいのさらに大きな倉庫があり、奥は突き当たって右に30mくらい曲がる。そしてこれに連結するような形で別の幅15m、長さが30mの倉庫がある。コの字になった倉庫を合わせると、恐らくは全長で100m以上ある。

 

できたのは昭和14年で82年経つ。台風で、大きな倉庫の屋根が飛ぶ被害があったものの、その後、綺麗に修復された。全体的にはあまり利用されていない割にはよく管理されている印象を受ける。それでもオーナーであった吉井千代子さんが2年前に亡くなり、その後、この土地、建物が今後、どうなるのかは全くわかっていない。千代子さん自身、子供がいなかったので、その縁者が相続したものと思われるが、活用方法がなければ、壊され、土地売却となる。隣の日通の空き地と同様に、駅前の大きな更地ができるだけであろう。

 

明治頃のレンガ倉庫であれば、函館の金森レンガ倉庫や横浜の観光スポット、赤レンガ倉庫のように多くのテナントを入れて再開発という手はある。それらに比べるとこの吉井酒造の倉庫、事務所はそれほど古くはない。それでも戦前の古い建物であり、場所的には弘前駅前のいいところである。全く内部も知らないので、かってな推測で話をするが、その活用方法について検討したい。

 

まず入口の事務所と白壁倉庫は、レストランや青森市のA-Factoryのような観光物産品を売る場所が良かろう。駅にも近く、利便性は高い。一方、総全長100m以上ある大きな倉庫については、土を敷きしめ、雪の降る冬場の運動場にすれば、どうであろうが。弘前市も武道館近くに克雪トレーニングセンターがあり、人気があって利用者も多い。ここの大きさは幅が50m、横が55m、高さは15mと、野球場の内野くらいの広さである。吉井倉庫は克雪センターほど幅はないものの、全長はそこそこあり、ランニングやピッチングなどはできよう。またギリギリかもしれないが、フットサルコートやテニスコートも作れるかも知れない。また子供用の土の公園兼運動場も保育園など冬場の運動場のない園児には必要かもしれない。雪の降る弘前では、屋内の広い場所はそれだけでも貴重である。

 

他にはベルギーやフランス、リトアニアなどヨーロッパ各国に見られる屋内型のマルシェもいいかも知れない。肉や魚、野菜などの食材を売るだけではなく、花屋、ワインショップ、イートインの屋台などの立ち並ぶもので、若い人にさせれば、おしゃれなものになるに違いない。昔、えきどてプロムナードでしていたマルシェのようなものが、この倉庫に集結して、店をすれば、それは楽しいものになろう。また津軽三味線は全国的に知られており、毎年、弘前でも全国大会が開かれているものの、観光設備としては、常設演奏場としては津軽ねぷた村くらいしかなく、「津軽三味線博物」のようなものがあってもいいかも知れない。

 

色々と活用のアイデアはあるし、特に若者の知恵を借りれば、かなりおしゃれな空間に生まれ変わる可能性もある。ただ若者は資金、経営面では経験が不足しており、弘前市、国と所有者が協力して検討し、例えば国、市、民間企業、所有者が改築、リノベーションを行い、それを起業する若者に貸す。さらに最近ではクラウドファンドという手もあり、そのまま何もせずに、壊されるには避けたい。弘前市が音頭をとって、是非とも弘前れんが倉庫美術館につぐ新たなプロジェクトに臨んでほしい。

 

少なくともニュース、テレビや雑誌特集などでいいから、この建物を取り上げてもらい、その内部について紹介してほしいものである。


2021年12月19日日曜日

65歳での試験

 


昨年の106日に日本矯正歯科専門医新規申請のための筆記試験を受けた。選択問題を中心にした60分のMCQ試験と60分の論述試験が、14:20から休憩も挟んで17:45まで行われた。周りを見渡すと60歳を超えたベテランの先生ばかりで、みんな久しぶりの試験だと思う。私の場合は、一番最後の試験が30歳の時に受けた自動車免許の筆記試験なので、35年ぶりの試験である。

 

はっきり言って、この歳での試験は、拷問に近く、2ヶ月前から診療の合間と日曜日、祝日を利用して勉強したが、もはや記憶力と呼ばれるもの自体が存在せず、覚えるうちから忘れていく。前の週の日曜日に覚えたものが、次の週にはすでに忘れており、自分の記憶力の減退にショックを受けた。若い頃は、記憶力にはかなり自身があって、歯学部のような記憶力が必要とするところでも、それほど勉強で困ったことはなかった。ところが40歳頃から、テレビに出ている俳優や歌手の名がなかなか出ないことが多く、最近ではむしろ思い出そうともしなくなった。

 

こういう状況で試験を受けるので、最初から困難が予想されたが、実際勉強を始めるとこれほど手こずるとは思わなかった。まず今回は初めての試験で、範囲は示されているものの、傾向は全くつかめず、どんな問題が出るかわからなかったことも苦労した点である。矯正歯科全体をおさらいするために、多くの歯科大学矯正歯科の教科書となっている「プロフィットの現代矯正学」の新しい版を購入して、2度ほど読み込んだ。その後、他の出題範囲についてインターネットを利用してまとめ、それを記憶するようにした。ただいくらこういうことをしても記憶できず、最後は自分で問題を作ってそれに答える方法を思いつき、ようやく何とか試験開始日までの覚えることができた。若い頃に比べて10倍以上の手間と時間がかかった。

 

 結果は何とか合格できたが、さずがにもう2度としたくない。医科の専門医試験でもこれほど年配の先生ばかりが受ける試験もなかろう。今回の試験は、日本矯正歯科学会、日本成人矯正歯科学会、日本臨床矯正歯科協会の三者の合同試験であり、それぞれの学会の専門医のみが受験できた。そのためにほとんどの受験者がベテランの平均年齢60歳以上の受験者となった。75歳以上のドライバーが受ける認知機能検査に匹敵する年齢の高い人の筆記試験である。今後の試験は、若い先生方も受験するので、平均年齢がこれほど高くなることはない。

 

不思議なもので、試験終了後の受験者同士の答え合わせは、全く高校生の頃のものと同じで、皆と一致すれば嬉しいし、間違っていれば凹み、そうした青春の苦い記憶も同時に思い出した。試験中、試験後の奇妙な高揚感も久しぶりの経験である。すでに試験から1年以上経って、ほぼ95%忘れてしまった。今受けると100%不合格である。こうした資格試験は、一回目より二回目、二回目より三回目と回数を重ねるごとに難しくなり、早めに受験してよかったと思う。

 

試験を受けてすでに1年以上経つが、いまだに日本歯科専門医機構というところで矯正歯科専門医が認められておらず、我々受験者も合格となっていない。結果が気になる。というのは今年の7月の厚労省告示で、「日本専門医機構が認定する専門医」が正式となり、将来的に「学会の認定する専門医」が広告に出せない可能性がある。すると現在のHPでは何とか認められている「日本矯正歯科学会認定医、臨床指導医という名称がネット上に出せないことを意味し、かえって一般の人からは誰が認定医かわからなくなる。さらに口蓋裂児の矯正治療に関連する「自立支援医療機関の指定審査基準」も変わる可能性があり、対象医療機関が少なくなる可能性もある。

 



2021年12月18日土曜日

歯科医院を選ぶポイント(子供の矯正治療)


 


2年ほど前から、子供の患者は治療終了まで数年以上かかるため、新患は原則的に断っている。そのため、患者構成も10年前は18歳以下が70%であったが、今は口唇口蓋裂患者を除くと、ほぼ成人患者が占めて、18歳以下の患者も20%程度になった。

 

私のところでは、マルチブラケット装置の調整では、まずワイヤーを外し、調整あるいは新たなワイヤーを曲げて装着し、説明して、終了となる。全て一人でしているので15分の予約を入れているが、衛生士による歯磨き指導以外には、他の患者が一緒に治療することはないため、同時間には一人の患者しか入れていない。さらにマルチブラケット装置の装着は1時間、治療途中の1年検査では30分かかるために1日の患者数はせいぜい20-30名くらいとなる。衛生士にワイヤーの交換などさせればもっと患者はみられると思うが、どうも自分でしないと気が済まない。それでも以前は、土曜日以外はだいたい10-15名くらいで多少は休憩の時間もあったが、最近は患者が多く、ほぼ毎日、20-30人、土曜日は40人程度となり、これ以上の患者は見られない。患者の多くは来院時に1ヶ月後の予約をするために、特に新規の患者の予約はかなり先になってしまい、ご迷惑をおかけしている。

 

子供患者を見ない点については、一番多い反対咬合の患者さんの例で説明する。早い患者さんでは45歳頃に来院する。ムーシールドという装置による治療を使ってかみ合わせが治ることがあっても、上の前歯が萌出する7、8歳の頃にまた治療が必要となり、骨格性反対咬合の場合は、ここまでが一期治療で、ここから成長終了まで経過観察となる。二期治療は、早くて女子で13,14歳くらいから、男子では16-18歳くらいからマルチブラケット装置による仕上げの治療となる。さらに2年ほど治療を行い、保定となる、ここまで10年以上となる。私の場合はとてもこの年齢までは仕事をしていないので、小児の患者を取っていない。同様に、叢生、上顎前突のケースも少なくとも高校卒業までは見ていく必要がある。

 

子供の歯並びについて、何とか見てもらえないかという電話も多いが、上記の理由と患者が多いため、誠に申し訳ないが断っている。それで、どこに行ったらよいかと聞かれるが、これは紹介にも責任が生じるので、基本的には自分で探すように言っている。まずネットや知人から評判を聞き、実際に何軒も訪ねて一番、信用がおける歯科医院での治療を選ぶのが良い。その際のポイントは

 

大まかな治療方針を聞く。いつまで治療が必要で、それまでにかかる費用を聞く。これは経験のある歯科医であれば、検査などしなくてもだいたいわかる。早期治療を勧められた場合は、治らなかった場合のことも聞く。子供の治療、一期治療で終わる症例は少なく、多くの場合はマルチブラケット装置による二期治療を必要とする。一期治療で治らない場合、二期治療は他院に紹介すると言われれば、料金についても聞いておく。二期治療を他院で紹介しても、まず新規の患者扱いとなり、一期治療費は無駄となる。それなら、最初から二期治療をする歯科医院に紹介してもらえばよいことになる。すなわち、最後まで責任を持って矯正治療をしてもらう先生が良い。ただ長期の治療となり相性などもあるため、必ず数軒の歯科医院で意見を聞いてから治療を始めてほしい。また転勤などの可能がある場合も、転医、その際の返金なども聞いておく。

 

日本矯正歯科学会では、上顎前突、反対咬合のガイドラインを示しているが、それによれば、あまり早期治療の意義を示されておらず、そうしたガイドラインを読んでおいて先生に質問することも大事である。こうしたガイドラインは治療の基礎的な資料であり、ある程度、矯正治療をしている先生であれば、十分に理解しており、患者さんの疑問に答えられる。中にはエビデンスのほとんどない治療法が勧められることもあり、気をつけたほうがよい。

 

https://www.jos.gr.jp/guideline

2021年12月16日木曜日

韓国の平均賃金が日本を超えた



韓国の一人当たりGDP、平均賃金が日本を超えたというニュースがネット上で話題になっている。2021年度の調査では、韓国の一人当たりのGDP43780ドル、日本は41507ドル、年収は韓国が462万円、日本が424万円で、いずれも韓国の方が優っている。これに対して、集計方法の問題だとか、韓国は海外分も入れている、年齢構成が違う、大企業のみの集計といった意見もあるが、それでも日本並みになってきたのは間違いない。

 

1965年(昭和40年)当時の日本人のサラリーマンの平均年収は448000円、当時の為替1ドル−360円で換算すると1240ドルに対してアメリカの年収はおよそ1万ドルで日本の8倍ほどであったが、その後、日本も物価上昇とともに年収も増え、1990年にはアメリカが47000ドル、日本は4万ドルと接近したものの、その後、2020年ではアメリカが6万9000ドル、日本は39000ドルと差が開いた。

 

どうも日本だけ1990年代以降、物価、賃金の上昇もなく、韓国が追いついてきたというのが実際である。日本と近い国はイタリアで、他の欧米の主要国は軒並みに賃金と物価の増加が起こっている。このことは日本、イタリアは、他国からすれば相対的に物価が安く、逆にアメリカは物価が高いことになる。そのため観光客からすれば、日本やイタリアが最もコスパの高い国となる。逆に言えば、アメリカ製品のコスパは低い。それでもアイフォンは売れるし、B-35戦闘機も売れる。値段が高くても売れるものだけを生産しているのだろう。それではアメリカは何で儲けているかというと、ほとんどは金融、IT関係の企業によるもので、何かを実際に作って儲けているものではない。同じ百万円を儲けるのに、株で儲けるのは家にあるコンピューターで、わずか1日でできるかもしれないが、これを服を作って儲けるとなると、デザインを決め、工場に発注し、そして小売に卸して売る。恐ろしく手間が掛かる。

 

現代社会は、世界がインターネットでつながれ、例えばUSA Amazonを使えば、一部商品は買えないにしても、税金と輸送費を払えば、全く日本のアマゾンと同じように買える。以前は海外から購入した方が安い商品も多くなったが、ここ数年で関税も下がり、簡単に買えることから、海外との価格差も減ってきた。こうしたネットによる購買がさらに進むと、世界中から何でも買えるようになり、市場としての商品価値は均質化され、ある意味、世界共通の価格となる。中国製の時計はいくら頑張っても1万円以上することはなく、日本のセイコーやカシオは数万円、そしてスイスのロレックスは百万円の値段がつく。これが世界中の共通価格となる。国によりその生産品のブランド化が決まり、韓国製サムソンと日本製パナソニックのブランド差はなくなったのであろう。

 

青森県の平均賃金は東京の約半分の2万2000ドルくらいで、ポーランドやブラジルのリオデジャネーロの平均賃金と同じくらいだったと思う。青森県には農産品、漁獲品以外に大きな産業はなく、ましてや金融やIT関係の企業はほとんどなく、公務員が一番いい職業と考えられている。日本とアメリカの関係が、そのまま青森と東京の関係に相似しており、青森での生活を考えることで、ますますアメリカとの給与面での差がつく将来を予想できる。結論としては、料理、家賃など物価は安く、賃金が安くともそれなりの幸せな生活ができ、決して東京より賃金が安いからといって困ることはない。ただ、30年以上、物価も上がらないが、賃金も上がらないのは、かなり異常な状況であり、そろそろ賃上げ、物価の上昇となることは間違いない。また円ドルの為替レートも今の円安傾向より円高傾向が理にかなっており、例えば、1ドルが80円になるだけで、日本の平均賃金は56000ドルとなりカナダ並みとなる。個人的には1ドル115円は安すぎ、100円くらいが妥当と考える。

 

アジアでも賃金が最も高かったのが日本であったが、これからアジア諸国も賃金が上昇すると、海外技能実習制度などは崩壊するであろうし、ノーベル賞を受賞した真鍋淑郎のように優秀な人材の頭脳流出も顕著になってくるかもしれない。アジアの先頭を牽引してきた日本の役目は、そろそろ終了しているのかもしれないが、日本のような国がなかったアフリカの現状を見ると、日本の功績は大きい。


 

2021年12月12日日曜日

外資系歯科メーカーについて

 


現在、私の診療所では、保定患者を中心に、EMS社のエアーフローを用いた歯のクリーニングを行なっている。細かい粒子を高圧で、歯の表面い吹き付け、着色などを除去するもので、一部の一般歯科医院では、歯周疾患の治療のために積極的に使っている。ブラケットがついた歯についても、これまでのPMTCよりは綺麗にプラークを取ることができて、患者さんからも喜ばれている。

 

元々はモリタから出ていたハンディータイプのものを使っていたが、EMSの衛生士の方から、今度、新型のプロフィキシスマスターという製品が出るので、これを是非使って欲しいと言われ、日本で未発売の時から欧米のカタログをチェックし、日本で販売と同時に購入した。そのため東北でも早い導入であった。日本では松風が代理店として扱うことになったが、最初の導入のため、何度か故障があり、そのたびに松風の担当者が修理に来て、お世話になった。

 

その後、松風からスイスのEMS社が直接、EMSジャパンを作り、ここで扱うことになった。ただこうした外資系の歯科材料屋にありがちな、傲慢な経営方針に変わり、まず年に一度のメンテナンスを求められた。一回のメンテナンス料は5万円で、それ以外にも交換部品や修理費が必要となる。医療機材であり、構造上もパウダーなどが機械内に詰まることもあるので、年に一度のメンテナンスは、仕方ないと受け入れた。ただここでも外資系特有の合理的というか、せこい方法がとられ、メンテナンスをする場合、それ専用の箱が送られ、それに詰めて送るのだが、簡単には梱包できず、なかなか難しい。これまでの松風で扱っていた時は、青森の機材屋にそのまま渡せば、そちらから送ってくれるので、手間が省けた。さらにメンテナンス中の代品は以前が、タダであったが料金がかかるようになった。

 

ここまではまだ辛抱できた。かなり日数が経ってから、メンテナナンスが終了した機械が送られてきた。ところが今まで故障したことがない、スケーラーの調子が悪いと衛生士がいう。もう少し様子を見るように言ったが、やはり調子が悪い。メンテナンスに出して、すぐに故障が出るようならメンテナンスの意味がないような気がし、不満が残った。よほど前の松風の方が、対応が良かった。そこでこうしたユーザーの不満は直接会社に伝えた方が良いと思い、電話すると電話を取った女の方が対応し、上の人に電話を代わって欲しいと頼んでも、私が対処しますの一点張りで、結局、上の人にこうしたクレームがありましたと伝えて欲しいと言って電話を切った。せいぜい20-30名の小規模会社で、よほど電話をとる人と社長の間に距離があるのかと思った。常々、受付に、少しでも問題があるような電話は決して自分で対応しないように言っているが、受付、あるいは下の社員とトップとの風通しの悪い会社は、経験上、大きな問題が出る。知人で日本のトップの銀行、10万人以上の社員がいる銀行の役員がいるが、彼は俺が高給をもらっているのは、人に頭を下げる、謝るからで、部下の失態があれば、すぐに謝りに行くと言っていた。同じクレームでの上の人が謝りにくれば、それで済む場合が多い。外資系の会社、EMSだけでなく、カボ、シーメンス、デンツプライ、と言っても別に社長が外人ではないだろうが、どうも日本のメーカーとやり方と違い、私のような古い人間にはついていけない。ただ矯正機材の多くは、50年前から外資系会社であったが、非常にユーザーと長年、良好な関係を築いていたことから、外資系会社に問題があるわけでない。こうした外資系歯科機材の会社は、トップが歯科畑の人ではなく、他の分野の商法を歯科に持ち込もうとしているように思える。歯科用ユニットのプランメカもそうだが、最近はどうも日本のメーカーに任せず、本社が直接にタッチするようになってきたが、こうした傾向がうまくいけばいいのだが、心配である。医療系の会社は、物を売り、金を稼ぐだけでなく、ユーザーの向こうに患者がいるのを忘れないでは欲しい。そのため、利益が少なくても、それを利用する患者がいる限り、継続することも必要となる。会社の財務表を見て、利益の少ない部門を廃止し、成長する部門に集中するのは、確かに経営的にはいいのかもしれないが、同時に医療メーカーとして責任も忘れないで欲しい。特に外資系の社長の多くは、海外の大学出身者であり、こうした古い日本式の商慣習を知らないようだが、とても大事なことと思える。


 最近、カボもプランメカの傘下に入った。これまでのカボのやり方、CTの被ばく線量はパントモ以下として売る、故障すれば高い修理費がかかるので、月々のメンテナンス費を払った方がお得といったやり方は問題あるのはこのブログでも度々指摘した。前者は欧米のガイドラインに違反した販売法であり、後者は自分の会社のユニットは故障を起こしやすいと自分で言っているようなもので、売上だけを考えた浅はかで、ばかな戦略である。おそらくこれまでOEM

で売っていたCT、顎運動装置や、場合によっては歯科ユニットも、プランメカ製品と競合するため、販売の見直しが行われるだろう。


2021年12月10日金曜日

中国製エンジン

 



以前、青森発、羽田空港行の飛行機に乗ったところ、離陸して1.2分後に後方部でドカンという音がして、その後、機長から、片方のエンジンの故障にために、青森空港に引き返すというアナウンスがあった。あまりに急な展開に全くわからないまま、急旋回して無事に青森空港に着陸した。どうも鳥がエンジンに入ってしまうバードストライクによるものだと思われた。こうした事故はちょくちょくあるが、今の飛行機は片肺でも十分に飛行できるために大きな問題とならない。ところがこれが国際線の飛行機で、成田発、ニューヨーク便で、太平洋上で故障すれば、流石に片肺で、そのまま飛行を続けるのは厳しく、太平洋上のどこかの島に緊急着陸するだろうが、そうした事故はほとんど聞いたことはない。

 

旅客機のエンジンは、馬力や燃費だけでなく、故障をしない信頼性が最も重要となる。もちろん普段の整備点検も大事であるが、エンジンそのものが故障してもらっては困る。そうしたこともあり、軍用機と違い、旅客機のエンジンの多くは、アメリカのゼネラルエレクトリック、プラットアンドホイットニーか、イギリスのロールスロイスの3社しか提供していない。旧ソ連や中国など共産主義国では、米英からのエンジン供給が難しかったので、自国で開発したエンジンを使っていたが、近年では上記3社のエンジンを使うことが多い。ただ英米のエンジンメーカーの寡占を嫌い、ロシアはフランスと手を組み、パワージェットと言う会社を設立し、パワージェットSaM146という小型エンジンを開発し、スホーイ・スーパジェットと言う100座席以下の近距離空路用旅客機に使われている。同様に中国でも新型旅客機C919のための国産エンジンCJ-1000Aをフランスと一緒に研究しているが、現在はGEとフランスが共同開発したエンジンを使っている。おそらく設計図面などエンジンの構造は、不正取得して全て中国は把握しているのであろうが、実際の耐久性の問題がなかなか解決できないのであろう。

 

もともと軍用機エンジンについてもロシア製はアメリカ製の1/8くらいの耐久性しかなく、ロシア製エンジンのコピー、中国製のエンジンの耐久性はそさらに低いとされている。例えばアメリカのF15のエンジンは1万時間以上の耐久性があるのに対して、ロシア製のSu-27のエンジンでは2000時間以下、中国製のJ-11のエンジンは800時間しかないとされている。これは設計思想が耐久性を重視していないためで、周辺産業もそれに倣ったのだろう。

 

こうした旧ソ連、中国の航空エンジンは耐久性がもともと低く、旅客機用の耐久性が重視されるエンジンは作れないのであろう。このことは船舶用エンジン、自動車エンジンにも当てはまり、欧米に匹敵するものが作れてもその耐久性は劣っている。中国では、いまだに軍艦用の純粋なガスタービンエンジンは作れない。戦前の日本は、ドイツのダイムラーベンツ液冷航空エンジンを最後までまともに製造できず、現在の中国のような状況であった。エンジンは治金など工学技術の結集したものであり、信頼性のある旅客用の中国製航空エンジンが欧米のエンジンに勝つようになれば、中国の工業技術は本物になったといえよう。ただ中国人の現世主義、拝金主義から考えれば、利益につながらない耐久性に努力するのは、もっとも苦手な点かもしれない。

2021年12月9日木曜日

日本の歯科臨床教育の問題点

 



最近、検査を行った患者さんの治療を見て驚いた。上下左右の第一大臼歯にレジン充填されており、それ自体は問題ない。他の歯にう蝕なく、この4本の第一大臼歯に咬合面の2/3以上のレジン充填がなされ、すべての歯のレジンの一部が欠けてそこから二次カリエスとなっている。乳臼歯では、レジンを詰めた後、指で押したような治療は年配の歯科医では昔、見たことがあるが、永久歯では初めてだ。患者に聞くと一年前に治療されたと言う。もちろん、これほど歯質崩壊が大きい場合は、アンレーがフルクラウンの適用となり、レジン充填の適用ではない。ケースによっては、レジンアンレーやポーセレンにすることがあっても、流石に充填で済ますことはない。

 

患者にかなり年配の先生で治療されたのですかと聞くと、最近開業した30歳代の先生という。これには2度驚いた。一瞬、コア形成のためのレジン充填かと思ったが、治療はそれで終了と言われたという。若い時の記憶では、昔はこうしたひどい治療は年配の先生のところでした治療だった。というのは、大学六年の患者実習では、補綴、保存の先生が厳しく指導し、たとえ手が動かなくても、時間がかかっても大学での臨床レベルが常に頭にあった。そのため、卒業後に勤務した歯科医院で、そこの先生の治療を批判する先生もいたほどだ。ただ当時、青森県の先生は、1日に一人で100名以上の患者をみる先生もいて、そうした治療も無理からぬ事情もあった。

 

歯科医の治療技術が後退した時期が2つある。一つは国家試験から実習試験がなくなった時である。当時の補綴、保存の先生も国家試験から実技がなくなった結果、医局で改めて実習訓練をしなくてはと嘆いていた。実習試験のあった時は、模型を使った実技であったが、何度も何度も練習するため、医局に入ってからさらにリファインするだけでよかった。それでも6年生の臨床実習があったので、それほど臨床レベルが落ちることはなかった。

 

若手の臨床レベルが決定的に落ちたのは、歯科研修医が義務化されて時である。6年生は臨床実習をせず、国家試験勉強をすることになった。これにより患者の治療を行う臨床実習は、歯科大学卒業後、研修医になってから始めることになる。ここで問題なのは、かっての歯科大学の6年生の臨床実習と、研修医の臨床実習がどちらが中身が濃いかと言うことだ。結論から言えば、研修機関による差が大きすぎ、たとえば、弘前大学の歯科口腔外科で研修すると抜歯や全身管理はある程度できるようになるが、一般歯科の研修はそれ以外の研修機関で行う。まず一般歯科では、かっての歯科大学附属病院のように懇切丁寧に指導することは時間的に難しく、また自院の患者を見させるのは抵抗があるために、もっぱら見学のみというところも多い。同様に歯科大学附属病院でもかっての6年生ほど全部床、インレー、フルクラウンが何ケースといったケース制を取っていないところが多い。

 

アメリカの歯科大学では、開業医の半分から1/3の治療費で患者を集め、多くの患者を学生に配当している。翻って日本では、なかなか学生や研修医に見させる患者が集まらず、学生の教育に協力する患者も減っている。この点を何とかし、少なくともケース制を研修医制度に導入すべきである。現行の研修医制度では、学生の評価はあるものの、こうしたケース数が反映されることはない。最初の述べたような若手の先生は、特に例外的ではなく、よほど研修医卒業後にいい先生のところに勤めて鍛えられた先生以外は、臨床レベルはかなり低い。本来制度とは従来の制度より全体、平均レベルを上げることであり、その目的は優れた臨床診断、治療ができる歯科医の養成である。少なくとも研修医制度のなかった時代より臨床レベルを上げるためには、研修医の基本研修機関は歯科大学、歯学部附属病院が中心で、それに付随するような形で一般歯科、医学部歯科口腔外科などの研修を加える。そして全国的に標準のケース、たとえば全部床は印象から技工、装着、調整までのケースを2症例、エンド処置は抜髄、感染根菅治療を10症例、インレー、クラウンを形成、技工、装着まで10症例、抜歯も10症例など、最低症例数を決めて、研修期間内に達成するようにする。達成できない場合は、研修未終了とする。

 

こうした研修医制度へのケース制は、現行の歯科大学、研修機関からすれば、とてもできないというかもしれないが、世界中の歯科医はこうした教育を受けており、日本の歯科教育ほど臨床経験が少ない国はない。国民に良質な医療を受けさせるためには、まず歯科医が優れた臨床技術を持つ必要がある。こと歯科医師養成教育としては、世界でも最低水準であることは、誠に恥ずかしいことであろう。こうしたことを書くと、非難も多いが、それでは世界各国の歯科大学の卒業生と日本に歯科大学の卒業生、あるいは研修医修了生に、実際に患者の治療をさせて、比較すればよい。おそらく中国、韓国、台湾などアジア諸国やインドの卒業生より臨床技術は劣ると思われる。


PS; 歯質の欠損が大きく、明らかにアンレーやクラウンの適用症例にレジン充填するのは、金パラなどの金属が高いせいだという意見もあった。確かに保険治療では実質的に赤字になるかもしれないが、もしそれが原因でレジン充填をしたなら、これはこれで歯科医失格と思う。




2021年12月2日木曜日

矯正治療費 平均賃金から考える

 



矯正治療費は、国により違い、かなり高い国から安い国まであるが、基本的には平均所得とほぼ相関関係があるように思える。2020年度の国別の平均賃金トップはアメリカで69000ドル、続いてカナダが55000ドル、ドイツ53000ドル、イギリス47000ドルとなり、日本はG7で下から二番目の38000ドル、イタリアが37000ドルで最下位となる。1990年の統計では、アメリカが47000ドルに対して日本は4番目で37000ドルであったが、その後、日本の賃金の増加がほとんどなく、こうした結果となった。

 

アメリカの矯正治療費は、現在、5000から7000ドルくらいで、1990年頃から1000ドルくらいは高くなったが、医療保険で半分くらいカバーできるので、賃金の割に矯正治療費は安くなったことになる。平均賃金2位のカナダでほぼ矯正治療費はアメリカと同じくらいである。3位ドイツ、4位イギリスは、いずれも18歳以下の子供の矯正治療は健康保険が適用され、成人矯正でも民間の健康保険で30%くらいはカバーされる。調べる限りにおいては60-80万円くらいで、実際の支払いはこれの70%となる。

 

成人矯正の治療費は主要国では大体60-80万円くらいで、日本はこれよりやや高いか同じくらいとなる。お隣の韓国は、最近、平均賃金が日本を上回るようになったが、韓国の矯正治療費は日本より安くで40-60万円くらい。台湾の平均賃金は日本の約半分、200万円くらいで、矯正治療費は日本の約半分、30-40万円くらいとなる。フィリッピンの平均賃金は約50万円、日本の1/8位となるが、矯正治療費は15万円くらいで、収入に比して高額となる。インドでの平均賃金は160-180万円くらいで、矯正治療費は10-30万円と安い。アジアでは、日本と韓国の平均賃金、矯正治療費が高い。

 

日本の平均賃金はおよそ400万円になるが、地域格差が大きく、東京の平均賃金が約600万円に対して、私が住む青森県は367万円と2/3以下となる。もちろん青森県の方が老人人口が多く、一人当たりの平均賃金は東京が多くなるが、それでも感覚として賃金は2/3くらいと思われる。ちなみに青森県の平均賃金367万円はドル換算で31900ドルとなり、ポーランド、チェコ並みとなる。逆に東京の平均賃金は52000ドルくらいとなり、ベルギー、ドイツ並みとなる。ポーランドで矯正治療をした人のブログでは、総治療費は394000円で、日本よりはかなり安い。単純な平均賃金からみた矯正治療からすれば、東京の治療費は主要国並みの60-90万円くらいが相場と言えるが、青森、沖縄県のような所得の低いところでは、ポーランドあるいは韓国並みの40-60万円くらいが相場となりそうである。

 

ついでに言うと、家電や車などは全国同一値段であるが、アパート代、家賃、土地代などは地域によりかなり違うし、美容院代などサービス業に近い値段も違う。例えば、美容院でのカット料金(2020)は、東京が9位で4024円だが、これには地方ではあまり存在しない格安店も含まれているので、1位の新潟市より安いことはない。少なくとも1位の新潟市の4643円を超えることは間違いない。逆に安い都市、一位は那覇市で2133円、青森市は2900円で、4643円のおよそ60%となる。消費実態調査を見ると、一世帯当たりの1ヶ月の消費支出は。東京都が343000円、青森県が268000円、東京の78%であるが、一世帯人数が東京では1.99、青森では2.48であるので、一人当たりの消費支出は、東京が172000円、青森が108000円、63%となる。

 

給与、消費支出から見る限り、青森県は東京の2/3位となり、そうした意味では美容院のカット代が東京の2/3であるのは理にかなっている。確かに矯正治療においても材料費は全国共通の価格であるが、人件費、家賃は東京の2/3であることを考えると、矯正治療費は東京の2/3くらい、すなわち40-60万円くらいが適切といえよう。ただ多くの矯正歯科医は、こうした観点から自院の矯正治療費を設定することは少なく、治療費の地域差が少なく、東京に比べて地方では相対的に高く、治療を受けにくい状況となっている。