2021年12月2日木曜日

矯正治療費 平均賃金から考える

 



矯正治療費は、国により違い、かなり高い国から安い国まであるが、基本的には平均所得とほぼ相関関係があるように思える。2020年度の国別の平均賃金トップはアメリカで69000ドル、続いてカナダが55000ドル、ドイツ53000ドル、イギリス47000ドルとなり、日本はG7で下から二番目の38000ドル、イタリアが37000ドルで最下位となる。1990年の統計では、アメリカが47000ドルに対して日本は4番目で37000ドルであったが、その後、日本の賃金の増加がほとんどなく、こうした結果となった。

 

アメリカの矯正治療費は、現在、5000から7000ドルくらいで、1990年頃から1000ドルくらいは高くなったが、医療保険で半分くらいカバーできるので、賃金の割に矯正治療費は安くなったことになる。平均賃金2位のカナダでほぼ矯正治療費はアメリカと同じくらいである。3位ドイツ、4位イギリスは、いずれも18歳以下の子供の矯正治療は健康保険が適用され、成人矯正でも民間の健康保険で30%くらいはカバーされる。調べる限りにおいては60-80万円くらいで、実際の支払いはこれの70%となる。

 

成人矯正の治療費は主要国では大体60-80万円くらいで、日本はこれよりやや高いか同じくらいとなる。お隣の韓国は、最近、平均賃金が日本を上回るようになったが、韓国の矯正治療費は日本より安くで40-60万円くらい。台湾の平均賃金は日本の約半分、200万円くらいで、矯正治療費は日本の約半分、30-40万円くらいとなる。フィリッピンの平均賃金は約50万円、日本の1/8位となるが、矯正治療費は15万円くらいで、収入に比して高額となる。インドでの平均賃金は160-180万円くらいで、矯正治療費は10-30万円と安い。アジアでは、日本と韓国の平均賃金、矯正治療費が高い。

 

日本の平均賃金はおよそ400万円になるが、地域格差が大きく、東京の平均賃金が約600万円に対して、私が住む青森県は367万円と2/3以下となる。もちろん青森県の方が老人人口が多く、一人当たりの平均賃金は東京が多くなるが、それでも感覚として賃金は2/3くらいと思われる。ちなみに青森県の平均賃金367万円はドル換算で31900ドルとなり、ポーランド、チェコ並みとなる。逆に東京の平均賃金は52000ドルくらいとなり、ベルギー、ドイツ並みとなる。ポーランドで矯正治療をした人のブログでは、総治療費は394000円で、日本よりはかなり安い。単純な平均賃金からみた矯正治療からすれば、東京の治療費は主要国並みの60-90万円くらいが相場と言えるが、青森、沖縄県のような所得の低いところでは、ポーランドあるいは韓国並みの40-60万円くらいが相場となりそうである。

 

ついでに言うと、家電や車などは全国同一値段であるが、アパート代、家賃、土地代などは地域によりかなり違うし、美容院代などサービス業に近い値段も違う。例えば、美容院でのカット料金(2020)は、東京が9位で4024円だが、これには地方ではあまり存在しない格安店も含まれているので、1位の新潟市より安いことはない。少なくとも1位の新潟市の4643円を超えることは間違いない。逆に安い都市、一位は那覇市で2133円、青森市は2900円で、4643円のおよそ60%となる。消費実態調査を見ると、一世帯当たりの1ヶ月の消費支出は。東京都が343000円、青森県が268000円、東京の78%であるが、一世帯人数が東京では1.99、青森では2.48であるので、一人当たりの消費支出は、東京が172000円、青森が108000円、63%となる。

 

給与、消費支出から見る限り、青森県は東京の2/3位となり、そうした意味では美容院のカット代が東京の2/3であるのは理にかなっている。確かに矯正治療においても材料費は全国共通の価格であるが、人件費、家賃は東京の2/3であることを考えると、矯正治療費は東京の2/3くらい、すなわち40-60万円くらいが適切といえよう。ただ多くの矯正歯科医は、こうした観点から自院の矯正治療費を設定することは少なく、治療費の地域差が少なく、東京に比べて地方では相対的に高く、治療を受けにくい状況となっている。

0 件のコメント: