2021年12月10日金曜日

中国製エンジン

 



以前、青森発、羽田空港行の飛行機に乗ったところ、離陸して1.2分後に後方部でドカンという音がして、その後、機長から、片方のエンジンの故障にために、青森空港に引き返すというアナウンスがあった。あまりに急な展開に全くわからないまま、急旋回して無事に青森空港に着陸した。どうも鳥がエンジンに入ってしまうバードストライクによるものだと思われた。こうした事故はちょくちょくあるが、今の飛行機は片肺でも十分に飛行できるために大きな問題とならない。ところがこれが国際線の飛行機で、成田発、ニューヨーク便で、太平洋上で故障すれば、流石に片肺で、そのまま飛行を続けるのは厳しく、太平洋上のどこかの島に緊急着陸するだろうが、そうした事故はほとんど聞いたことはない。

 

旅客機のエンジンは、馬力や燃費だけでなく、故障をしない信頼性が最も重要となる。もちろん普段の整備点検も大事であるが、エンジンそのものが故障してもらっては困る。そうしたこともあり、軍用機と違い、旅客機のエンジンの多くは、アメリカのゼネラルエレクトリック、プラットアンドホイットニーか、イギリスのロールスロイスの3社しか提供していない。旧ソ連や中国など共産主義国では、米英からのエンジン供給が難しかったので、自国で開発したエンジンを使っていたが、近年では上記3社のエンジンを使うことが多い。ただ英米のエンジンメーカーの寡占を嫌い、ロシアはフランスと手を組み、パワージェットと言う会社を設立し、パワージェットSaM146という小型エンジンを開発し、スホーイ・スーパジェットと言う100座席以下の近距離空路用旅客機に使われている。同様に中国でも新型旅客機C919のための国産エンジンCJ-1000Aをフランスと一緒に研究しているが、現在はGEとフランスが共同開発したエンジンを使っている。おそらく設計図面などエンジンの構造は、不正取得して全て中国は把握しているのであろうが、実際の耐久性の問題がなかなか解決できないのであろう。

 

もともと軍用機エンジンについてもロシア製はアメリカ製の1/8くらいの耐久性しかなく、ロシア製エンジンのコピー、中国製のエンジンの耐久性はそさらに低いとされている。例えばアメリカのF15のエンジンは1万時間以上の耐久性があるのに対して、ロシア製のSu-27のエンジンでは2000時間以下、中国製のJ-11のエンジンは800時間しかないとされている。これは設計思想が耐久性を重視していないためで、周辺産業もそれに倣ったのだろう。

 

こうした旧ソ連、中国の航空エンジンは耐久性がもともと低く、旅客機用の耐久性が重視されるエンジンは作れないのであろう。このことは船舶用エンジン、自動車エンジンにも当てはまり、欧米に匹敵するものが作れてもその耐久性は劣っている。中国では、いまだに軍艦用の純粋なガスタービンエンジンは作れない。戦前の日本は、ドイツのダイムラーベンツ液冷航空エンジンを最後までまともに製造できず、現在の中国のような状況であった。エンジンは治金など工学技術の結集したものであり、信頼性のある旅客用の中国製航空エンジンが欧米のエンジンに勝つようになれば、中国の工業技術は本物になったといえよう。ただ中国人の現世主義、拝金主義から考えれば、利益につながらない耐久性に努力するのは、もっとも苦手な点かもしれない。

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