2021年12月19日日曜日

65歳での試験

 


昨年の106日に日本矯正歯科専門医新規申請のための筆記試験を受けた。選択問題を中心にした60分のMCQ試験と60分の論述試験が、14:20から休憩も挟んで17:45まで行われた。周りを見渡すと60歳を超えたベテランの先生ばかりで、みんな久しぶりの試験だと思う。私の場合は、一番最後の試験が30歳の時に受けた自動車免許の筆記試験なので、35年ぶりの試験である。

 

はっきり言って、この歳での試験は、拷問に近く、2ヶ月前から診療の合間と日曜日、祝日を利用して勉強したが、もはや記憶力と呼ばれるもの自体が存在せず、覚えるうちから忘れていく。前の週の日曜日に覚えたものが、次の週にはすでに忘れており、自分の記憶力の減退にショックを受けた。若い頃は、記憶力にはかなり自身があって、歯学部のような記憶力が必要とするところでも、それほど勉強で困ったことはなかった。ところが40歳頃から、テレビに出ている俳優や歌手の名がなかなか出ないことが多く、最近ではむしろ思い出そうともしなくなった。

 

こういう状況で試験を受けるので、最初から困難が予想されたが、実際勉強を始めるとこれほど手こずるとは思わなかった。まず今回は初めての試験で、範囲は示されているものの、傾向は全くつかめず、どんな問題が出るかわからなかったことも苦労した点である。矯正歯科全体をおさらいするために、多くの歯科大学矯正歯科の教科書となっている「プロフィットの現代矯正学」の新しい版を購入して、2度ほど読み込んだ。その後、他の出題範囲についてインターネットを利用してまとめ、それを記憶するようにした。ただいくらこういうことをしても記憶できず、最後は自分で問題を作ってそれに答える方法を思いつき、ようやく何とか試験開始日までの覚えることができた。若い頃に比べて10倍以上の手間と時間がかかった。

 

 結果は何とか合格できたが、さずがにもう2度としたくない。医科の専門医試験でもこれほど年配の先生ばかりが受ける試験もなかろう。今回の試験は、日本矯正歯科学会、日本成人矯正歯科学会、日本臨床矯正歯科協会の三者の合同試験であり、それぞれの学会の専門医のみが受験できた。そのためにほとんどの受験者がベテランの平均年齢60歳以上の受験者となった。75歳以上のドライバーが受ける認知機能検査に匹敵する年齢の高い人の筆記試験である。今後の試験は、若い先生方も受験するので、平均年齢がこれほど高くなることはない。

 

不思議なもので、試験終了後の受験者同士の答え合わせは、全く高校生の頃のものと同じで、皆と一致すれば嬉しいし、間違っていれば凹み、そうした青春の苦い記憶も同時に思い出した。試験中、試験後の奇妙な高揚感も久しぶりの経験である。すでに試験から1年以上経って、ほぼ95%忘れてしまった。今受けると100%不合格である。こうした資格試験は、一回目より二回目、二回目より三回目と回数を重ねるごとに難しくなり、早めに受験してよかったと思う。

 

試験を受けてすでに1年以上経つが、いまだに日本歯科専門医機構というところで矯正歯科専門医が認められておらず、我々受験者も合格となっていない。結果が気になる。というのは今年の7月の厚労省告示で、「日本専門医機構が認定する専門医」が正式となり、将来的に「学会の認定する専門医」が広告に出せない可能性がある。すると現在のHPでは何とか認められている「日本矯正歯科学会認定医、臨床指導医という名称がネット上に出せないことを意味し、かえって一般の人からは誰が認定医かわからなくなる。さらに口蓋裂児の矯正治療に関連する「自立支援医療機関の指定審査基準」も変わる可能性があり、対象医療機関が少なくなる可能性もある。

 



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