2023年4月9日日曜日

マウスピース矯正の詐欺事件を考える

 






最近は朝のワイドショーなどで、マウスピース矯正をめぐる金銭トラブル、健康被害などの報道がある。これに関しては、投資会社、弁護士、歯科医が責任をなすり合って、肝心の患者対応に関しては、当事者の歯科医、伊藤剛秀という先生がテレビで、被害にあった患者の治療継続を、責任を持ってするとインタビューを受けていた。治療費は3000円、アタッチメントをつける時は1万円と具体的な数字を挙げて説明していたので、期待したい。ただこの先生に関するツイッターの情報によれば平成31年(2019)に自己破産しており、とても自己資金で歯科医院を開くことはできず、どこかの歯科医院で勤務していると思われ、実際にこの費用でどこまで患者の救済ができるか不明である。インビザライン社も、最近救済処置を申し出ており、製品の供給の延期、新しい歯科医の紹介などを行うとしている。ただし日本矯正歯科学会認定医以上の先生との指定があり、おそらく多くの矯正専門医は、もう一度、検査をし、少なくともインビザラインの技工代を除いた費用は患者に請求するため、150万円の借金を背負った上のさらなる治療費がかかる。

 

矯正歯科専門医のところで治療をしても、結果に満足しない場合も多々あるとは思うが、確率からすると一般歯科、特に最近、開業したインビザライン専門医院でのトラブルが圧倒的に多い。今回問題となった“デンタルオフィースX”についても、そのHPの内容は、患者誘導、誇大広告など、医療広告法に抵触するものが多く、現行では6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金が科されるとされているが、実際に実行されたことはなく、ザル法に近い。HPでこうした患者にとっては甘い誘う文句があれば、そちらに行くのは目に見えており、まず広告法の厳守化が求められる。そのためには、厚労省による各歯科医院のHPのチェックが必要であるが、実際にそんなことができる時間もないし、人員もいない。となるとどこかの組織が自主的にチェックして、医療広告法を守る必要がある。日本矯正歯科学会では、認定医、臨床指導医については、すべて資格更新の際にチェックをして改定されなければ、資格更新をできないことになっているために、明らかに派手で、ひどいHPはない。

 

一方、一般歯科では、こうした医療広告法についてのチェック機関がないため、ほとんど野放し状態となっている。これはやはり都道府県の歯科医師会で、会員のHPをチェックして、修正を要求すべきであり、何度修正を求めても、修正されない場合は、厚労省につげ、厳密に罰金、懲役刑に課すべきである。また東京では、審美歯科、マウスピース矯正専門歯科医院などは歯科医師会そのものに入会していないが、それでも会員によるタレコミがあれば、歯科医師会でHPをチェックして、修正要求はできる。

 

悪貨は良貨を駆逐するというが、ネット社会となり、患者集客のために、かなり派手で、際どい宣伝をする歯科医院が多くなっている。そして患者もこうした歯科医院に流れる傾向がある。そのためもあって、医療広告法の規制は年々厳しくなっているが、それをかいくぐるように集客用の広告がなされる。イタチごっこになるのかもしれないが、物を売る商売に比べて、歯科医院は院長個人で医院経営をしているところが多く、またすぐに医院を畳むことができないため、脅せば、すぐに医療広告法の厳守はできる。例えば、HPで一箇所でも医療広告法に触れれば、歯科医師免許の剥奪といった処置をすれば、あらゆる媒体から宣伝はなくなる。私のところのHPも怖いので、即刻閉鎖するだろう。ここまで極端にしなくても、厚労省からの通知で脅すだけで、修正される。一番問題なのは治療前後の写真で、今は限定解除の要件を満たせば、OKであるが、これはすべて禁止、価格が安くなるなどの表現もこれまで品位に欠くといったグレイゾーンであったが、これも禁止、つまり医院の住所、医師の紹介、費用など決まった形式のものしか書けないHPにすればよく、グレイゾーンをなくして医療から広告要素を排除すればよい。

 

もし今回のマウスピース矯正の詐欺事件でも、こうした広告をHPで出すこと自体が禁止されていれば、そもそも被害者はいなかったはずである。1990年頃まで医院、歯科医院は、電柱看板、タウンページの広告しかなかったことを考えれば、確かに不便な点も多いが、何とかはなる。今回のことを契機に、さらなる医療広告の規制と罰則強化が望まれる。またマウスピース矯正に対しては、特定商法取引法の類型にしたほうがよい。契約を面倒にすれば、一時的に始めた歯科医院も面倒でやらなくなるからである。ホワイトニングについては、この制度が適用され、高額のコースはなくなった。

 



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