2017年10月4日水曜日

弘前博物館と美術館

シンシナティ美術館の"dressed ton kill" 右から2つの鎧がケルシーの鎧

パンフレット

鎧の人形

 シンシナティ美術館のホウメイさんに、新著「須藤かく」を送ったところ、今年の2月から5月まで美術館での企画展「Dressed to kill」のパンフレットと人形を送ってくれた。1890年代に宣教医アデリン・ケルシーが美術館に売った鎧と日本刀を主として展示し、その説明をわかりやすく紹介している。何でも以前から展示しようと思っていたが、展示方法がなかったところ、鎧を展示するボディーを作る費用を寄贈してくれた方がいたので、こうした展示会を開いたとのことであった。パンフレットには、サムライの説明、漢字“侍”の紹介、俳句、戦闘の仕方、鎧の名称、ダクベーダーや忍者タートルの兜、家紋、Fierce faceの切り抜きなどの内容となっていて、面白い。作品の説明だけでなく、美術品を通じて日本の歴史、文化を説明している。

 アメリカの美術館は、町の文化のシンボルとして、多くの人々に支えられており、また子供達の教育の場となっている。弘前でも、再来年にはどうやら美術館ができそうだが、弘前市の方で勝手に動いているようで、市民の方からの動きがあまりない。現代美術家の奈良美智の展覧会”A to Z”の時は、多くの市民が財政的にも展示そのものにも参加し、多いに盛り上がり、その年に開かれた全国の美術展でも高い評価を受けた。実際、三回の展覧会は本当に楽しく、今まで見た展覧会の中でもベスト3に入る。この展覧会の面白さは、当然、奈良さんの作品そのものによるが、楽しさの半分は市民に参加による手作り感と吉井レンガ倉庫そのものの魅力によった。

 新美術館では、こうした弘前市民参加型の運営にはなっておらず、東京の美術館専門の方に丸投げ状態となっており、その骨子が全く見えない。最初述べたシンシナティ美術館は1881年の市民の寄付によってできた全米でも最古の美術館のひとつである。頻繁に美術館でパーティーを開いて寄付を募り、新たな作品購入や運営費に当てている。今でも市民が美術館を支えている。そのため美術品の寄贈者には大変配慮してくれる。私もオークションで、1万円で買った“芳園輝”の署名のある作品を送ったところ、可哀想に思われ、コピー品として所蔵してもらうことになった。それでも作品を展示する際の署名方法や展示法、さらには館長から丁寧なお礼の手紙をいただき、さらには展覧会のパーティーの参加カードをもらった。例のタキシードを着て、セレブがシャンペンなどを飲むようなパーティーである。

 今後、弘前市も美術館と博物館の棲み分けが必要となってくる。博物館は元々、殿様の博物館、弘前藩のお宝を展示するものであったし、今後も弘前のお宝を中心に展示、活用するものとなろう。そうなると郷土史との絡みが重要となり、市民、子供にもっとわかりやすく説明する工夫が求められていく。近くにある郷土文学館も含めて、静かに見る博物館から説明が聞ける参加型のものに変わっていくべきであろうし、ボランティアも含めてもっと市民の参加があってもいいだろう。企業や市民からの寄贈、博物館グッズの販売、ボランティアによる展示解説、小学校への出張授業など、さらには収蔵場所がなく、現在は中止しているが、市民からの寄贈、寄託なども積極的に求めていくべきであろう。確かにガラクタも多いだろうが、収蔵場所がないから受付ないというのも寂しい。長谷川前館長から博物館で公開歴史講座するなど、これまで以上に市民に開かれたものになってきたが、小中学生の参観もまだまだ少なく、展示方法や説明、パンフレットの工夫が必要であろう。

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