ウォルマート効果というのは、巨大なスーパマーケットができることにより、進出地域から既存の店が一気に消失し、ウォルマートが唯一の店となり、地域の住民にとって生活の全てウォルマートになってしまう現象のことである。概念はすでに20年以上言われているが、最近になってウォルマートの進出を否定する地域が出たり、ウォルマートで買い物をしないという不買運動も活発化している。
アメリカの基本的な地方の街は、開拓時代に建設されたもので、鉄道、馬車の駅が中心となり、役所、教会、警察、図書館あるいは新聞社ができ、その周囲に次第に店ができるようになる。この中心街の周囲に住まいが発展し、映画館など、娯楽もここに集まり、街の文化の中心となった。日本でも同じで、弘前市でいうなら、江戸時代は本町が中心であったが、その後、隣の土手町、さらに駅前も繁華街となっていったが、ここ30年、大型スーパーが郊外にできたために、次第に中心街が凋落していった。
最近できたロピア弘前店も、完全にウォルマートの手法を取り入れた店で、大量購入をして安く提供する。さらに小分けの手間を省くために、できるだけ分量を多くして売る、コストコなども同じやり方である。鶏もも肉で言うと、大容量6枚で1500円、3枚では1200円という塩梅で、大量購入すればかなりお得というやり方である(数字は違います)。アメリカでは30年前からこうした大容量お得というやり方が浸透し、その結果、ひどい肥満社会となった。安いからといって大量の食品を消費し、太っていく。日本でも地方ではこうした方向になるかもしれない。
ウォルマート効果を一言で言うなら、街自体が消滅し、全ての土地が均質化していくことを意味する。つまり中心街、繁華街がないことから、土地の価値がどこでも同じ、土地価格も変わらないことになる。これも弘前の例で言えば、通常駅前というと土地価格は高いものだが、弘前市の駅から500m圏内は坪15万円くらいであるが、5kmくらい離れても価格はそれほど違わない。つまり弘前市全体の土地価格が低い値段で平均化されていく。大きなスーパーができると、周辺の土地が開発され、住宅ができる。一方、同じ世代の人が住むため、20 , 30年後にはそこに住む人々が高齢化し、スーパーも売り上げが伸びず、閉店となる。こうした大型スーパーが郊外にでき、周辺の個人店を全て消滅した挙句、最終的にはこのスーパーもなくなり、買い物難民がでる。
一方、東京や大阪の都会では、大型スーパーは土地価格が高く、採算性が低いために、小さなスーパー、あるいは昔ながらの市場が残っているところが多い。またロピアのような鶏もも肉大容量6枚を買う家庭がそもそもいないため、東京に進出しているロピアは小平市と府中市しかない。大型スーパーは全国から大量買い付けを主体とするため、ロピア弘前店でも青森県産が店頭に並ぶことは少ない。青森県は米、野菜、魚、肉などほとんどの食材を自給できるが、その青森人が地元のものが食べられない。30km離れた青森湾や日本海でとれた魚が売っておらず、1800km離れた長崎産の魚が店頭に並び、数キロ離れた畑で採れる野菜が売っておらず、400km離れた福島県産を買うことになる。
できれば、その日の朝にとれた魚や野菜を食べたいし、それを使った惣菜やレストランがあっても良いが、ウォルマートができるとそんなことができない。幸い弘前ではロピアができたが、その横には虹のマートという地元食品店街があり、重宝している。ここはほぼ青森県産のものばかりで、年寄り二人ではこの商店街の方が重宝している。ただ幸いなことに、ロピア弘前店が駅前のヨーカドーの跡地に入ってくれたので、郊外に店ができて中心街が空洞化するドーナツ化現象を免れた点であり、今は2階以上の店舗が空いているが、早くここにも店ができてほしい。土手町も含めて、街の中心街を守ることは、その土地の文化を守ることである。
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