2009年3月1日日曜日

天然ブスと人工美人どちらを選びますか



 ここ2週間で読んだ本、虹色のトロッキー1−3(安彦良和 中公文庫コミック)○、果てしなき渇き(深町秋生 宝島社文庫)○、まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん 文春文庫)△、テロリズムの罠 右巻、左巻(佐藤優 角川ONEテーマ21)△、ヤバい中国人(宝島編集部 宝島SUGOI文庫)○、パーフェクトプラン(柳原彗 宝島社文庫)△、天然ブスと人工美人どちらを選びますか(山中登志子 光文社文庫)◎、神器 軍艦橿原殺人事件(奥泉光 新潮社)×です。今、ちょうど読んでいるのがレイテ 史上最大の海戦(ゴッペル 扶桑社ミステリー)です。

 仙台の出張があったため、電車内でたくさん読んだ結果ですが、ほとんど何の脈絡もなく、支離滅裂な読書傾向です。このうち、最も感銘を受けたのが、山中登志子さんの「天然ブスと人工美人どちらを選びますが」で、最初タイトルを見たときは数多くある美人論の一種かと思いましたし、前半はその通りでした。私の読書法はつまらない内容のところはそれこそ速読で、1分間くらいで2ページくらい読む(眺める)のですが、この本も前半はこのペースで読んでいました。ところが中盤以降著者の恋愛遍歴やネット交際などが披露され、読むスピードを遅くなり、俄然おもしろくなりました。そして最後は顔が変わるアクロメガリの病気に著者かかっているのを知り、推理小説の最後の種明かしのような気分にさせられました。先日、ちょうどアクロメガリーの講演を受けたばかりなので、よけいに実感することができました。実に巧みな構成とプロットです。まさか新書でこういった小説のような展開があるとは思ってもいませんでした。さらにネットで著者の画像を検索すると、典型的なアクロメガリーの顔貌で、文中の著者のイメージ(これは文体によるのか読書中いろいろなイメージがでます)、林真理子のようなちょっとハイミスの辣腕編集者のイメージとのギャップに、二重の仕掛けにだまされました。そうしてもう一度最初から読むと、結構重い内容で、明らかにこの構成は著者の意図したものなのでしょう。

 古今亭志ん生の「おいてけ堀」は、さる旗本の殿様の娘、これは3歳のころに疱疹、その後顔にやけどをおい、二目と見られない顔になり、親、周囲からもばけもの扱いされますが、殿様のひいきの傘職人はひょんなことから殿様の家に居候することになります。冬のあまりの寒さに辛抱できず、ついにはこのお嬢様の部屋に寝ることになりますが、そこで関係ができ、妊娠させてしまいます。結局はこの職人はおいてけぼりをくわし逃げ、お嬢様を自殺するという哀しい話です。いまではとても落語のねたには使えないような内容のものですが、これが名人志ん生にかかると、おもしろい話になるから不思議です。話芸と人柄によるのでしょう(落語名人シリーズとしてダイソーの100円ショップで売っています)。

 山中さんも雑誌で鍛えた文章力と持ち前の好奇心、前向きな生き方のため、こういった哀しい経験を持ちながら、笑い飛ばすような、勇気づける内容になっています。外観オンチに対する著者の積極的な生き方、楽天的な考えは、外観を気にする若い女の子には参考になるでしょう。

 ただ本のなかで美容整形に行くと、手術の費用が164万円かかると言われたとなっています。アクロメガリーで下あごが大きく、噛み合わせも逆になっていれば、「顎変形症」の診断で、手術、矯正治療も保険適用になりますので、高額医療制度を使えばこれの数分の一の費用ですむはずです。著者の顔貌をみれば十分に保険適用になりますので、この箇所は誤解かと思います。

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