2013年2月15日金曜日

中国海軍の挑発行為

 個人的に戦争物には昔から興味があり、多くの書籍を読んできた。それでもわからないのが、どうして日本はアメリカと戦ったのか、という点である。山本五十六を例に出すまでも日米間の国力の差は大きく、冷静に考えれば当時でも戦争をして勝てる可能性はほとんどなかった。これは先の日露戦争でもそうであったが、国力差があるロシアに勝ったという僥倖が、アメリカとの戦いに何とかなるという淡い期待を抱かせたのはまちがいない。

 こういった理性的に考えると、負ける可能性の高い戦いに望むというのは、ある意味男らしい行為であり、かっこいいと言われるものかもしれない。日露戦争、大東亜戦争でも、政府、軍部以上に真っ先に開戦を望んだのは、マスコミであり、国民であった。国民はその情報のほとんどをマスコミから得るため、国民の意思を形成させるのは、戦前では主として新聞の影響が大きかった。本来なら最も知性的な媒体であるはずのマスコミが最も好戦的であった。これは日露、日米戦争の時もそうであり、冷静に分析を行った新聞社はほとんどなかった。政府首脳、軍部の方がむしろ冷静な分析をしているが、マスコミ、新聞は盛んに政府の弱腰を批判するというパターンである。でかい声の方が威勢がいいのである。確かに好戦的な論調の方が新聞が売れるであろうし、政府の覚えもよい。何より、こういった好戦的な論調は勇ましく、気持ちが高ぶる。極論すれば、先の大東亜戦争を起こした主犯は、朝日、毎日新聞などのマスコミだと言えよう。これに懲りてか、戦後、朝日新聞は180度方針を変え、平和主義を貫くが、どちらかと言うと親中、親ソ(ソビエト)など社会主義国に同調的な社風となった。最もひどいのが、今に始まる従軍慰安婦のでっち上げ記事、あるいは悪名高い中国文化大革命の讃美記事、これはひどかったし、その後の反省もない。アメリカの原爆実験には反対するが、中国、ソビエトの核実験をスルーするという態度である。今でも沖縄の新聞は、その傾向が強い。

 今回の日中の尖閣諸島問題についても、中国の報道機関の扱いは戦前の日本のそれに近似し、かなり好戦的記事が多いようだし、日本の雑誌でもそういった風潮のものが売れている。私も「日中もし戦えば」といった架空物語は好きで、関連書をよく読むが、現実の戦争を望むものは日中の首脳とも、ほとんどいないであろう。あまりにリスクが双方とも大きすぎるからで、そういう意味から第二次世界大戦後、大国同士の戦争はない。世界大戦後の戦争は、すべて弱い物いじめ、あるいは代理戦争である。勝てる戦争、被害の少ない戦争しかしないということである。イラク戦争のアメリカ軍の戦死者数は約4500名、アフガニスタン戦争の戦死者数は約2000名、硫黄島の戦いの戦死者数6800名に比べると、圧倒的に少ない戦死者数である。一方、イラクの戦死者数は10万人以上、アグガニスタンでは2万人以上と言われ、弱いものいじめといわれてもしょうがない。

 中国軍は昔から、兵隊になるのはどうしようもない連中で、一人っ子政策が浸透した現状では、馬鹿な息子を親が幹部に金をやって入隊させたり、配属を変えてもらったり、さらに軍幹部は会社を経営して私腹を肥やしている。こういった現状では、末端の兵士、あるいは将校のレベルも非常に低いものと思われる。先の自衛隊艦船に対する非常識なレザー波照射も完全に、中国海軍フリゲート艦の艦長、あるいは砲術長レベルのミス、あるいは子供じみた行為であろう。ヘリコプターの威嚇接近など、こういった中国軍の練度の低さによる事件は多い。2001年の海南島事件では、中国空軍のパイロットの常軌を逸した挑発行動が大きな事件となった。同様の偶発的事故はコソボでの米軍による中国大使館の誤爆、イラク戦争での民間機イラン航空機の撃墜などがあるが、アメリカでは報道の自由があり、ミスを認め、責任者の処罰を行ったが、官僚国家、社会主義国家では、基本的には罪は認めないし、正確な報道も望めない。そのため対中国においては、多くのパイプを持ち、相手側の正確な意図を把握する必要があろう。中国政府、軍部とも巨大な官僚組織であり、日本でも官僚内のミスはひたすら隠蔽する体質と同様、官僚組織は自己保存の性格を内蔵するものである。最大の官僚組織の中国軍をうまく扱うのは中国政府首脳にとっても難しい。早期の日中首脳会議の必要性が高まっているし、本音でしゃべれる日中間の人的交流が重要であろう。

 2年ほど前のことだが、韓国海軍が横須賀に表敬訪問したことがある。この時、韓国の軍艦はメインマストに何と、自国旗を掲げた。世界的なルールでは表敬訪問する場合は、相手国旗を掲げるのが常識で、自国旗を掲げるのは戦闘行動を意味する。世界中の海軍から大笑いされた事件であるが、外洋海軍の歴史の浅い中国海軍の艦長クラスはもっと国際的な常識に疎い可能性があり、今後もこういった挑発行動は続くであろう。

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