2014年10月9日木曜日

ノーベル物理学賞





 今年のノーベル物理学賞には、青色ダイオードの開発に関わった赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3名の日本人科学者が選ばれた。青色ダイオードがどうして重要なのかは、今回、新聞を読むまで知らなかったが、赤と緑の発光ダイオードではフルカラーの表現ができないようだ。

 照明は基本的には白(電燈色)であり、青色ダイオードが発明されるまで、この色がだせないので発光ダイオードの用途はかなり限られていた。この発明により初めて発光ダイオードが照明に活用することができ、消費電力の減少や、長寿命に繋がり、家庭用電球の多くが、この発光ダイオードに置き換わっている。

 発光ダイオードは、日本人からすれば、家庭の電気代が少し安くなったという恩恵があるだけだが、これが全世界レベルでいうと大きな意味をもつ。開発途上国を中心に、未だに13億人以上の人々が電気のない生活を送っている。これらの人々の多くは、夜はオイルランタンや焚き火によるわずかな光で暮らしている。とてもではないが、こういった状況では日常の生活はできず、夜間の勉強や仕事は困難な状況となる。江戸時代の暮らしを考えればいいだろう。

 そこに登場したのが、ソーラーランタンである。パナソニックの開発したものは、小型のソーラパネルで6時間充電することで、最大90時間使える優れもので、USB端子もあるため、携帯電話にも充電できる。価格は5000円で、少なくとも2年以上の耐久性があるように設計されている。

 中国製品などを使うと、もっと安いシステムができそうだが、耐久性のある家庭製品は日本のメーカーが最も得意な分野であり、パナソニックのこうした貧困国への取り組みは、単純な貧しい人々を助けるということではなく、新たなビジネスとしての可能性がある。電化製品の全くない家庭に、ソーラーランタンが入ることにより、夜の生活は一変する。それまで何もできなかった夜に、本を読んだり、仕事ができたりするようになる。そうなると、今度は一家に三台のソーラーランタンになり、次は携帯電話、ラジオ、テレビとなっていく。少しずつ電化生活がすすんでいく。

 電気というと、かっては巨大インフラの最たるもので、発電所、送電線といった大きな事業であったが、最近は太陽光発電、小型水力発電、風力発電など、現地で小さな発電を行うやり方が普及してきている。アフリカなど開発途上国では幸い太陽には恵まれているので、太陽光発電が最も普及している。こういった地域では電力消費の少ないLED電灯の恩恵は非常に大きく、消費電力は白熱電球の1/5、寿命は40倍といわれ、LED電灯がなければ、不可能だったであろう。今後ますます、改善されることで、世界中から真っ暗な夜はなくなくことを期待したい。さらにLED電灯の発明により、工場での農産物生産が可能となり、トマトなど実際に多くの農産物がこういったやり方で生産されている。


 ノーベル物理学賞といえば、量子論といった日常生活とかけ離れたものが多かったが、今回はぐっと日常的なものとなった。単純なものだが、世界中から夜の暗闇がなくなる日は近い。

0 件のコメント: