2015年5月14日木曜日

日本画 掛軸の暴落2





 前回、オークションで購入した土屋嶺雪の「唐美人とオウム図」がきた。なかなかいい作品で、床の間が明るくなる。

 時折、ヤフーオークションの「日本画 掛軸」で検索して、いい作品があれば、贋作かどうかチェックしてから購入する。

 近藤翠石についてはこれまで4本の作品を購入し、落款、署名、画風は周知しているので、まず贋作を掴むことはないし、落札価格もせいぜい3000円から1万円程度なので、こずかいでも買える額である。こういった価格帯になると偽物も本物も値段に違いはなく、どちらも安いので、情報が要となる。

 今回の土屋嶺雪についても、たまには美人画ということで、着目した。全く名が知られていない作家なので、まさか贋作はないだろうとは思うものの、それでも一応、インターネット上で検索した。

 ちょうど、インターネット上で、沖縄県立図書館の貴重資料デジタル書庫に土屋嶺雪の「漁翁図」(上記写真)が紹介されている。そこで、画風について確認する。この作家は西洋風の画風に、長い賛をつけるのが特徴である。ほぼ似通った画風であり、今回のオークションの方が書き込みが多い。偶然だが沖縄県立図書館の作品と今回の作品は発亥12年(大正12年、1923年)の作品であることから、同時期のものである。時期により署名、印は異なるが、同じ時期の作品なら署名、印は同じとなる。

 そこで次に印について調べた。作品に上下二箇所に「周龍起雲」と「嶺雪」の印があるが、全く一致する(下記3写真)。さらに署名「嶺雪散士」もほぼ一致する。ただ気になるのは、印が署名の上に押されている点で、一般的にはこういったことはしないし、作品婦人のスカート部に明らかにシミではない墨の点がある。署名時に墨のしずくが落ちたのだろう。初歩的なミスである。ああやっちゃったという感じだろう。多少の疑問はあるが、ほぼ90%は本物と考えて購入した(15000円)。若干高く、3000円くらいで購入できれば、さらによかった。

 沖縄県立図書館の解説を挙げる
嶺雪は詳細不明の近代の画家で、橋本関雪(かんせつ)に学んだこと等が伝わっています。老人や魚、少年の描写は活き活きとした輪郭線や均一な色面(しきめん)による伝統的な日本画の技法が見られ、犬の立体的で写真に近い描写には西洋絵画の伝統がうかがわれます。画面左下の署名落款(らっかん)から、この絵が大正12年(1923年)夏に和歌山県(和歌山城周辺)で描かれたこと、画家が東京に住んでいることなどが分かります。

 国立図書館の近代デジタルライブラリーで大正期、昭和期の画家を検索してもほとんど名がでないが、兵庫県、高砂市出身の画家のようだ。こういった賛のある画(富岡鉄斎が有名)は賛を読んで、作品を楽しんでほしいという作家の気持ちがあるようなので、少しずつ解読したいと考えている。

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