2016年8月13日土曜日

矯正治療と夏休み

クリスティアーノ・ロナウド選手


 夏休みは矯正歯科医院では1年の中でも最も忙しい時期である。私の診療所では、一般歯科とは違い、普通の日は午前中に2、3人、午後も4時頃までは2、3人で、学校が終わる4時頃から患者が多くなり、一日で10-15人くらいの患者数となる。たた土曜日はほぼ15分ずつの枠で患者を入れ、重複もあるので、通常30-40名くらいの患者数となり、平日と土曜日の差が大きい。土曜日以外の平日は比較的すいているので、診療の合間に結構休めるが、夏休みとなると、土曜日ほどではなくても毎日25-30名くらいの患者がくるため、休むひまがない。

 夏休みは新患も多いが、どうも特徴的な傾向がある。主訴、気になる点は他の時期と同じであるが、来院時期が遅すぎるのである。高校3年生になって来院する患者さんも多い。高校3年生というと卒業まで8か月しかなく、平均2年間はかかる矯正治療では期間が足りない。高校卒業後は県内の大学を希望しているといっても、進路を変更することも十分にありうるため、高校3年生あるいは高校2年生については一切、受け付けていない。すべて卒業後、進路が決まった時点で治療するように言っている。そして青森県外に進学、就職する場合は最適な矯正歯科医院を紹介するようにしている。

 東京や大阪では高校卒業も地元に残る場合も多いが、地方では半分以上の若者が就職、進学で県外に行く。そのため、治療のデッドラインを高校一年生にしている。叢生(歯のでこぼこ)などでは、高校二年生で始めても何とか卒業までに終了できるが、反対咬合では男子の場合はまだ成長が残っているので、できればもう少し治療時期を延ばしたいし、また上顎前突ではオーバーバイトの深い症例ではかみ合わせを浅くするのみ思いのほか期間がかかることも多い。こうしたことから、少なくとも高校一年生、それも入学直後くらいから治療を始めたい。

 これ以外に多い受診理由は、“学校健診”で不正咬合を指摘されたというものである。本人、あるいは親に“どこか歯並びで気になることはありますか”と聞いても、“特にありません。学校健診で指摘されたので来ました”という。不正咬合は確かに咀嚼、発音あるいはう蝕、歯肉炎などとも関連するが、矯正治療の大きな目的が審美性と社会心理的な改善である。つまり本人、親が不正咬合を気になり、それを治そうと考えなければ必要ない。成人になって来院する患者の中には“これまで学校健診でも指摘されなかった”と非難する方もいるが、不正咬合は隠れたあるいはわからない疾患ではなく、見ればわかる疾患であるため、敢て健診して指摘する必要も少ない。当然、学校健診で指摘され、来院する患者には一応、矯正治療の概略、期間、費用などの説明を行うが、気になければ治療を勧めることはしない。

 オリンピックでは、毎回、何人かのアスリートが矯正治療しているのを見つける。日本体操団体女子のメンバーの中にも矯正装置をつけていた選手がいた(杉原愛子選手)。飛び込みの板橋美波選手やバトミントンの金メダル候補、奥原希望選手もこの前まで矯正装置をつけていた。外国人選手にも矯正装置を付けていた、あるいは矯正治療をした人が多く、むしろ歯並びが悪い選手は一流の選手なれないのかもしれない。患者さんの中には未だに矯正装置を付けても運動は大丈夫ですかと尋ねられることも多いので、こうした有名選手の例がありがたい。サッカー部であれば、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウド選手の例を出すのが一番よい。

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