2016年8月22日月曜日

シーレーン


 
日本は周囲を海で囲まれた海洋国家であり、国土が狭く、食物、エネルギー資源など主要な物品を輸入に頼っている。そして、輸入のほとんどを船舶による輸送に頼っているだけに、シーレーンの確保が国土防衛の中心的なテーマとなる。太平洋戦争での敗北は米軍によるシーレーンの封鎖と爆撃による生産破壊であったことは身にしみた。それ故、海上自衛隊の編成は、旧海軍で最も不十分であった輸送船を護衛する護衛艦(駆逐艦)、哨戒機、掃海艇、潜水艦の充実が第一であり、ある意味、非常に偏った編成となっている。

 こうした戦略のため、四方の海に出口を持つ日本のシーレーンを外部から完全に断つのは非常に難しく、おそらく本土の港を徹底的に爆撃しない限りは海上での封鎖は、あの米軍をもってとしても不可能であろう。現在、中国が南シナ海でさかんに軍事拡張をしているが、あの海域を完全に中国に抑えられても日本の海路はいくらでもあり、輸送費の高騰を招くとしても国がつぶれることはない。一方、中国はどうかというと、鹿児島から沖縄までのラインを抑えられると、南シナ海からのラインしか残されていない。何度か、太平洋から石垣島—沖縄—鹿児島ラインを越えようとしているが、平時での警戒態勢でも、その侵入は日本に把握されており、これが戦時化となると、このラインを越えることは厳しい。ライン上には複数のソノブイが重層に張り巡られており、すべての船舶の音源も解析されている。地対艦ミサイルや誘導追尾型機雷(91式機雷)とのコンビネーションで哨戒能力の劣る中国海軍ではまず通れないし、さらに自衛隊の潜水艦と哨戒機による防御を突破するのも厳しい。

 中国は元来、大陸国家であり、外国に頼らなくても食糧、エネルギーを自給自足できる国であったが、ここ40年の改革開放政策により外国からの輸入なくては立ち行かない国となった。その当然の帰結としてシーレーンの確保が生死の要となってきた。これを確実にするための方法は、南シナ海の制圧か、石垣島—沖縄—九州ラインの切断であろう。尖閣列島自体、エネルギー資源を別にして、島自体はあまり価値がないが、このラインにくびきを入れる上では重要なポイントとなる。とりえず最終目標、沖縄の勢力化への橋頭堡となる。

 一方、日米からすれば東シナ海、南シナ海を抑えれば、中国のシーレーンを封鎖できる。あれだけの大国でありながら、海への出入り口は東方のみであり、また四方は必ずしも友好国に囲まれておらず、一旦封鎖されると国の崩壊にも繋がる。それ故、近年、シーレーンの確保にやっきになっているのである。日本がやる政策は、東シナ海の台湾—沖縄—九州のラインの防御密度を高め、宮古島、石垣島など離島へ地対鑑ミサイルの配備と基地化、台湾、周辺諸国との連携、できれば秘密裏の武器輸出、ベトナムへの中古潜水艦の譲与など、徹底的に中国のシーレーン封鎖を脅かすことが挙げられる。一方、大陸国家である中国が不慣れな海上国家に変換するには途方もない費用がかかり(アメリカと対抗するには)、ソビエト崩壊のような財政的な危機を生みかねない。シーレーンの確保だけが目的なら日米も含めた周辺諸国との条約を締結することで目的は達成できる。


 中国が中進国から先進国への向かうためには、今後、ますます年金、医療、学校などの社会主義的な保障の充実が必要で、これにも途方もない金がかかり、これ以上の軍事費の増大は中国国民にも不満がでるかもしれない。隣国の日本に息づく社会主義的な政策、これは本来の社会主義国である中国国民が最も渇望している政策である。くやしかったら医療の無料化、保育所から大学までの学校の費用の無料化、安心して老後を暮らせる年金、安い公営住宅の供給など、日本共産党が言うような政策を是非とも実施してほしいものである。

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