2016年8月2日火曜日

中国の軍事力




 最近の中国を見ていると、昔の日本を見ているようだ。明治維新によりアジアで最初の近代国家となった日本は懸命に欧米の制度、科学、工業を模倣した。明治初期のお雇い外国人に見られるように、自分で開発、研究するよりは、教えてもらい、模倣することで学んでいった。ことに兵器開発については、非常に幅広い周辺産業の成熟を必要とするため、もっぱら欧米からの兵器の直接輸入あるいはライセンス生産を選んだ。こうした流れは、太平洋戦争終結まで続き、戦前、純粋に100%国産で開発した兵器は少ない

 戦艦大和でも、その動力の主力となる蒸気タービンはイギリスのブラウン・カーチス社のものを発達させたものであり、零戦など戦闘機のプロペラもハミルトンなどのアメリカのライセンスで、有名は誉エンジンもプラット&ホイットニーのツインワスプのコピーに近い。さらにドイツから輸入した液冷エンジンはついにコピーすらできなかった。また飛行機に載せる機関銃、機関砲もスイス・エンリコ社、アメリカのブローニン社のライセンス品で、主要パーツはほとんど海外の製品のコピーあるいはライセンス製であった。自動車ですらまともにできない工業レベルでは、さらに高度な製品である兵器を自力で開発するのは、難しく、その改良に努めたのはしょうがない。そうした意味でも、中国の兵器の大半がロシアの兵器のコピーあるいはライセンス品であり、さらにオリジナルより劣るのも戦前の日本に似ている(それでも日本の場合は世界中から手に入ったが)。

 さらに日本で、致命的であったのが、航空用ガソリンと潤滑油であった。ついにアメリカ並みの100オクタンのガソリンは作り出すことはできず、また戦争初期はまだ備蓄したアメリカ製の潤滑油があったが、その後は粗悪な国産品しかなく、それによるエンジンの故障をまねいた。こうした状況では太平洋戦争中ずっと続いた。現在でも自国でほとんどの兵器開発、生産をできる国はアメリカしかない。そのアメリカですら、一部の材料、機械については、日本製を使うほどにはなっているが、それでも厳密な意味での国産化率はアメリカが最も高い。

 中国は、世界最大の官僚国で、上司の命令は絶対である。こうした兵器をいつまでに作れと言われれば、作る。あるいは作ったと報告する。これが官僚のやり方で、その性能はどうか、費用はいくらといったことは関係ない。官僚にとっては、命令されたことをきちんとすることが大事であり、その善し悪し、性能は問わない。性能を上げるよりはワイロを払った方が安い。有名な毛沢東による大躍進時代、地方の官僚は政策に沿った架空の米収穫量を競い合い、結果、大凶作にかかわらず数値だけは大豊作となった。役人は昇進したが、2000万人を越える餓死者がでた。こうした国である。兵器開発についても、ハッカーなどの手段で情報を手に入れ、それをコピーする。多少わからなくても、何とか形にすればよい。


 1990年の湾岸戦争は、中国に大きな影響を与えた。イラクはアラブ諸国の中では有数な軍事国家であったが、アメリカ軍の近代兵器、戦術の前には全く歯が立たず、多国籍軍の戦死者200-400人に対して、イラク軍の戦死者は2万人以上(10万人以上との推測もある)といわれており、一方的な虐殺状態であった。イラク軍は兵力100万人以上で、戦車もロシアの最新型T72など5500両、戦闘、攻撃機もMig25など300機以上あり、中国に次ぐ、世界第四位の軍事国家であった。それがこの惨敗であったから、さすがに人海戦術で何とかなると考えていた中国政府はこの結果をみて、ショックを受け、震い上がった。そこから25年、懸命に軍の近代化を図ったのが、結局は西欧諸国からの武器、情報供与は少なく、湾岸戦争で完敗したロシア製が主体であることは変わりなく、さらにその劣化版、およびコピー品であるため、実戦でどうなるかは、大変心配である。中国の最後の軍事紛争はベトナムと戦った1988年の南沙諸島でのスプラトリー諸島海戦に対して、アメリカ軍は2003年のイラク戦争で、常に最新の兵器を使用し続けている。兵器は使ってみないとわからないという真実から、アメリカ製兵器の実用度は高く、最も信頼性の低いのは中国と韓国の武器であろう。

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