2018年6月7日木曜日

スポーツの全国大会をなくせ





 つい最近も患者の親から「部活(バスケット)の先生から矯正装置をつけると試合で怪我しやすいので部活がすべて終了するまで1年、治療を遅らせるように」と言われた。先生の指導に逆らうと試合に出してくれないので、装置の装着は1年後にしてほしいと嘆願された。おそらくこの顧問は矯正治療のことは全くわかっておらず、アメリカのプロバスケットリーグNBAの選手の中にも矯正用ブラケットをつけている選手はたくさんいるし、それこそ中高校生まで入れるとアメリカのバスケットをするほとんど生徒が矯正治療を受けていることは知らないのであろう。母親にはバスケット部の顧問からこちらに連絡するように言った。多分、大きな理由もなく、適当に母親に言っただけで、こちらに連絡することはなかろう。

 矯正装置そのものが部活の邪魔と言われたのは初めてだが、練習が忙しくて月1回の矯正治療に行けないという生徒は本当に多い。一日でも部活を休めば、顧問の先生に睨まれ、試合に出られないという。強いチームなのかと聞くと、1、2回戦で負ける弱いチームである。毎日、毎日、月1回の矯正治療にもいけないほど、練習していて勝てないのは、中学生レベルではコーチ、監督の指導力の問題であろう。こちらが親であれば、月に一回も休めないくらい練習して一回戦に負けるのはコーチの責任であると言ってやるが。

 スポーツ強豪校のコーチは、自分が若い頃受けた経験で考えるのだろう。俺たちは毎日、それこそ休みは正月だけという練習で強くなった。お前達も一生懸命練習すれば強くなると言うのだろう。ところが私の場合は、進学校だったせいか、サッカー部の練習は週に3回、例えば中学なら月、水、土曜日、高校なら火、木、土曜日となっていた。日曜日は試合が多かったが、それ以外の平日の日の練習はない。もちろん、全国大会であっても学校の授業に支障があれば、出場辞退となる。あくまで学校の授業が中心で、部活はおまけとなる。平日の練習は授業の終わる4時から6時ころまでとなる。夏休みや冬休みでも毎日練習はなく、それも午前中で終わるという感じであった。それでも兵庫県や神戸市の大会では常に上位であったし、近畿大会では優勝した。まったく練習時間と成績は関係ない。

 子供が中学校の時にバレー部に入っていたが、練習中、膝の十字じん帯を断裂した。大学病院に入院し、退院後、体育館の椅子に座って練習をみていたら、監督から「何を椅子に座っているのか。立って見学しろ」と言われた。その話を聞いて、この監督はバカだと思ったし、娘もそう感じたようで、そのまま退部した。膝じん帯は退院したからといってまだ完治したわけではなく、無理に立たせる必要は全くない。座ってできる筋肉強化や理論の勉強などをさせるべきで、チームの士気が低下するという理由で、立たせるのは指導者としては失格である。同じ大学病院の整形外科病棟に二人の小学生は肘の手術を受け、入院していた。どちらも小学校野球部である。小学生で肘の手術をさせるような練習をさせるコーチはこれだけで失格であり、はっきりいって永久追放であろう。小学生の肩や肘を壊させる練習過多はその選手の将来の選手生命をつぶし、最もしてはいけないことである。きちんとしたクラブでは練習日数や投球数を規定して管理している。

 卓球、バトミントンなど多くの競技で、学校部活中心ではなく、優秀な選手を若いうちにピックアップして、中央の専門コーチにより指導をされるようになった。結果、トップレベルの選手の技術が飛躍的に高まり、オリンピック、世界大会での良い結果に繋がっている。つまりトップの選手を育てるのは、エリート教育をした方がよいのである。逆に言えば、中学校の段階で、こうした選抜に選ばれない選手は、将来オリンピックやプロの選手にはなれないことを意味し、それなら体を壊すほど練習する必要は全くない。

 欧米ではサッカーにおける10歳以下のヘディング禁止が流れとなっており、これも含めて青少年期のスポーツでは、子供の発育、健康への配慮が徹底している。日本の部活の最も大きな問題点はスポーツの全国大会の開催であり、その頂上を目指して各学校が勝ち負けを絶対視する。最近では、競技によって中学あるいは小学校の全国大会がある。これはすべて禁止すべきであり、せいぜい県レベルの大会で終了である。全国大会などなくても、今ではオリンピックやプロになる選手はピックアップでき、そうした選手は英才教育をすればよく、それ以外の選手は全国大会などなくてもよい。実際、卓球やバトミントなどの競技では、若くて優秀な選手がどんどん出現しており、彼等にとっては中学や高校の全国大会など全く意味はなく、オリンピックや世界大会が目標となる。実際、サッカーJリーグの選手を見ても最近では高校よりクラブユースの出身者が多くなり、プロの登竜門として高校サッカー部の価値は低下している。

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