2024年2月4日日曜日

日本代表ゴールキーパー

 



アジア大会が終わった。アウエーでの戦いは、一点くらいのハンディがあるため、優勝するには難しい。それでも一般放送された2試合で負けるようでは情けない。特にゴールキーパーの鈴木彩艶選手への批判が多い。

 

ワールドカップでもそうであるが、こうした大会ではゴールキーパーの活躍がなければ優勝できず、“あの場面でゴールキーパーのスーパープレーがなければ負けていた”、という状況は必ずある。ゴールキーパーの活躍が優勝に大きく関与する。ライバルの韓国も際どい試合で何とかベスト4まで進んだが、ゴールキーパーのチョ・ヒョヌの活躍が大きく、アジア大会のベストGKにも選ばれている。

 

日本でもプロリーグができて、まず海外に進出したのが、中田英寿のような中盤の選手で、このポジションは多くの優秀な選手を輩出している。その後、日本人には無理とされていたバックスにも吉田麻也、酒井宏樹、そして最高峰のプレミヤリーグで活躍する富安健洋まで出てきて、中盤とバックはほぼ世界標準の陣容となっている。そしてフォワードについては、南野拓実、上田なども現れ、ついに三笘のような世界的な選手も登場した。そうなると残りはゴールキーパーである。これが難しい。と言うのは、ゴールキーパーについては他のポジション以上に体格が絡んでくる。現代のゴールキーパーでは、少なくとも185cm以上、できれば190cm以上の身長が求められ、元々外国人に比べて小柄なアジア人からは優秀なゴールキーパーは出ていない。

 

そうした中で登場したのが、今回、アジア大会の全試合に出場した鈴木彩艶選手である。身長は190cmあり、U15から全ての年齢別の日本代表となり、期待のGKである。21歳で、まだまだ伸びることを期待され、今回も森保監督も敢えて使い続けた。森保監督にすれば、アジア大会はあくまでワールドカップの練習であり、次回のワールドカップでベスト4以上になるためには、どうしても世界的なゴールキーパーが欲しかったので、敢えて経験の少ないGKばかりを招集してアジア大会に臨んだ。韓国のGKのチョ・ヒョヌは2018年のワールドカップにも出場したベテランゴールキーパーで、韓国はアジア大会に堅実なGKを持ってきた。ちなみに2018年のワールドカップの日本代表GKは川島永嗣である。将来性のある選手の経験のために鈴木選手を使うか、それとも試合重視でベテランの選手、例えば2022年のワールドカップに出場した権田修一選手などを使うか、監督にしても悩むところである。結果は失敗した。

 

鈴木選手を擁護する声もあるが、今回の試合も含めて、GKとしては及第点を挙げることができず、5試合で8失点、あまりにお粗末である。それもかなりの失点がゴールキーパーによる間接的、直接的な失点であり、もしプレミアリーグで、21歳の新人ゴールキーパーに試合出場の機会を与えられ、5試合連続のこのパーフォーマンスであれば、二度と試合出場はない。少ない出場機会で、監督や首脳陣にアピールできないと、ゴールキーパーは一人しかいないので、出場機会は減る。もちろん、鈴木選手は突出した能力を秘めた選手だからこそ森保監督も使ったのだが、経験不足を露呈したし、ましてやチーム全体の信頼を勝ち得たとは思わない。少なくとも3人のGK枠のひとりにベテランGKを入れておくべきで、例え出場できなくてもアドバイスは大きい。GKについては、監督や他のフィールドプレーヤはわからず、ベテランのGKからのアドバイスの重要となる。全体的にこのアジア大会では、年齢が若かったこともあるのか、鈴木選手はオドオドした印象であり、思い切った自信のあるプレーはなかった。身長が190cmあるのに小さく感じたし、どんな相手でも点が入りそうな気分であった。これが偉大なGK、例えばソ連のレフ・ヤシン選手がゴールを守ると点が入らない感じがした。昨日見た準々決勝でも、一点目の失点はまずキックが短すぎ、その後の相手側の攻撃も前へのダッシュが1、2歩遅れた。2点目も後方からの声による指示、あるいは前へのダッシュが遅れた。さらに言うなら、このPKを阻止する運も必要であろう。もう少し日本代表としての国際マッチで経験を積ませてからアジア大会に出場したかった。

 

昔、羽田空港で、元日本代表の川口能活を見たことがある。私の身長が176cmだが、何度も前を横切って川口選手の身長をチェックしたが、それほど変わらず、せいぜい178cnくらいであった。あの身長で、よく日本代表で活躍したと、むしろ感激したが、彼の優れた能力は判断力で、前への飛び出しと、頭からボールに向かう勇気には魅了的であったし、何度み見せた神ががりプレーはいまだに脳裏に焼き付く。彼の場合もそうだが、優れたゴールキーパーは、集中力が極度に高まり、ゾーンという状態に入る。この状態になると、視野がグランドのみとなり、音声はなくなり、どこにボールが来て、どんなシュートが来るかわかる。どんなボールでも止められるという暗示に入る。今回のアジア大会での鈴木選手のプレーにはこうしたゾーンに入った状態が見られず、これは彼の欠点なのかもしれない。これだけは練習で見ることができず、試合でのみ、それもここ一番の試合で発揮できるもので、偉大なゴールキーパーはこうしたゾーンに入る能力が高かっただけでなく、相手選手への威圧感も強かった。ソ連のヤシン選手、イギリスのゴードンバンクス選手、ドイツのカーン選手などは、シュートを打つ側のミスを誘った。

 

どうかイギリスのプレミアムリーグの正ゴールキーパーで活躍できるような日本人、ゴールキーパーが現れて欲しい。そうなれば、ようやくワールドカップにもベスト8の壁を突破できそうである。アジア大会で見る限り、鈴木選手は身体的能力が高くても、肝心な、それも厳しい試合で、どうもゾーンに入りにく選手のようで、もう一度、クラブチームの試合で鍛えてほしい。


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