2024年3月2日土曜日

弘南鉄道を潰すな

 



全国の路面電車の収支について考えてみた。以前、住んでいた鹿児島市にも路面電車があり鹿児島市郊外の谷山と市内を結ぶ路面電車があるが、市バスと合わせた令和4年度の赤字は2億800万円となる。同じく函館の路面電車でも毎年、2から3億円の補填をしている。また札幌市電では令和5年で2億5千万円の赤字、最新の電車を導入している富山市電でさえ令和5年では34千万円の赤字、熊本市電では令和4年で5800万円の赤字であったが、昨年は黒字になった。長崎の市電も2020年度で言えば38000万円の赤字など、多くの路線で経営的には厳しい状況が続いている。

人口の多い東京都でも、バス運行に限って言えば、令和3年度は565千万円、令和4年度は178千万円の赤字であるが、東京メトロは令和5年度で88億円の黒字となっており、同様に大阪シティーバスも赤字であるは、地下鉄が黒字で、バスの赤字を地下鉄がカバーしている構図である。同様に名古屋でも市バスは63億円の補助金を受けながら9億円の赤字、地下鉄は大阪や東京都違い、76億円の補助があるが、34億円の赤字となっている。

まあこうして各地の公共交通機関の収支を出してみたが、ほとんどは赤字で、黒字のところをみても、多くの補助金が出ている。通常の会社経営という点からすれば、全国の公共機関のほとんどは倒産ということになり、それを防ぐとすれば、収益性の高い路線のみを残し、収益の低い路線は廃止するということになる。そうなると同じ市内に住んでいるのに全く公共交通手段がないところが出てくる。公共機関という位置付けからすれば、こういうことが起こってはいけない。

最近、弘南鉄道の大鰐線の廃止を求める弘前市会議員の発言が相次いでいる。木村隆洋議員は「大鰐線は財政支援せずに、弘南線に集中すべきだ」、竹内博之議員は「公共交通機関の責務を果たせるだけの体力や組織力があるのか。2路線両方は無理で、選択と集中が必要ではないか」と発言している。大鰐線は弘前中央弘前駅から大鰐までの路線で、並行してJRの奥羽線が走っているので、大鰐までというなら必要ないのかもしれない。現在、大鰐線は1時間毎の運転であるが、JRも1日に12本の運転である。ただ大鰐線が廃止されると、沿線の津軽大沢や石川などの住民はバス路線の活用ということになる。沿線の地域の公共交通はバスに代替りとなるが、バス会社の母体は、同じ弘南鉄道で、ここも乗客数の減少で、経営的に厳しく、例えば、大沢までのバス運行も実際は廃止したいところであろう。この地域に1時間に1本のバス運行をさせる余裕はこの会社にはない。イトーヨーカドーのような全国的な会社であれば、とっくに弘南鉄道(大鰐、黒石線)や弘前バスは廃止にするか、黒字路線のみを残すであろう。地元企業なだけに撤退できないだけであり、本音を言えば、弘前市に引きとって欲しいと思っているだろう。

 

弘前市及び周辺市町村による活性化支援協議会は、路線存続のためにこの5年間で51千万円の財政支援をしてきた。額として年間1億円になる。それでも弘南鉄道はこの金額では足りず、さらなる支援を求めているが、市議会では、これ以上の支援はできないということである。もし弘南鉄道、弘南バスが民間の会社ではなく、市営であったなら、こんなに簡単に廃止という意見が出るだろうか。青森市バスの経営状況をみても平成24年度は2億円程度の赤字であるが、青森市議会から市バスを廃止しろ、赤字路線を廃止しろと言った乱暴な声はない。公共交通機関であるからである。一番、廃止して欲しいのは実を言えば弘南鉄道、弘南バスであり、民間の会社としては、赤字路線を廃止したいのは山々であり、赤字でもやっているのは、市町村から公共交通と言われ、それに協力しているからである。私だったら開き直って、市議会の誰それが廃止を求めているようなので、それに従って廃止しますと言いかねない。

 

弘前バス、弘南電鉄の事業が公共交通機関であるなら、本来、市がやるべき事業であり、民間に責任を押し付けるなら、弘前市も相当な覚悟と協力は必要であろう。やめるのは信じられないくらい簡単で、元々会社自体がそれほど乗り気でないので、市長が廃止といえば、すぐにでも廃止になるだろう。潰すのは簡単であるが、一度潰せば、もう二度と復活することはできない。仮にヨーロッパのように市内への車両通行禁止となると、バスと電車が主要な通行手段となる。地球温暖化対策の一つの方法として、これは一つの方法であり、車を乗らない私からすれば、弘前の旧市内を原則として車禁止として、バスと電車、徒歩、自転車のみとすれば、これは日本でも最初の試みとして、逆に脚光を浴びるかもしれないと思う。本当に潰すのは簡単なだけに、何とかして弘南鉄道は存続してほしい。個人的な意見としては、大鰐線に旧式 2両編成の車両は必要なく、宇都宮ライトレールのような新世代路面電車「LRT」のような車両を弘前市の補助金で買ってほしいくらいである。実際に熊本市電では、昨年度の予算で、3億円の予算で新型車両を購入することが決まり、さらに路線延長のために135億円の予算をとっている。近年、路面電車は観光の目玉となり、世界的に復権傾向となっている。大鰐線で言えば、14の駅のうち、弘前市内にある駅は11駅で、ほぼ市内を運行する路面電車と同じものと考えてよい。



0 件のコメント: