2026年7月10日金曜日

Gift From Japan

 








昨年、アメリカ、オハイオ州のシンシンナティ美術館に私の集めた絵画(主として日本画の掛け軸)、40点ほどを寄贈しました。香川芳園、土屋嶺雪、田中蘭谷、望月玉泉、近藤翠石、など、ほとんど美術専門家でも知らない、明治から昭和にかけての画家の作品です。最初にヤフーオークションで掛け軸を買い始めたのが、2006年ですから、20年前のことになります。新しい家には和室があり、床間もありますので、実家から古い掛け軸、2点を持ってきました。一つは、正月にいつも実家の床間に掛けられていた土佐光貞の「業平東下り」のものですが、よく調べると、印鑑、落款とも土佐光貞のものとは違い、いわゆる偽物であることがわかりました。もう一点は、翠石の双幅の山水画で、実家では大橋翠石ということでしたが、虎の絵で有名な大橋翠石はほとんど山水を描かないようで、これも印鑑、落款とも大橋翠石とは違います。そこでさらに調べてみると、同時代に近藤翠石という南山画の森琴石の派の人で近藤翠石という人がいて、どうも画風からすればその人にような気がします。そこで同じような作品がヤフーオークションで売っているかとみると、大橋翠石の偽物扱いで5000円程度の安価で売っています。そこで4点ほど近藤翠石の作品を購入しました。ほとんど1万円以下です。

 

ヤフーオークションでは何度かオークションを利用すると、ホームページでおすすめの日本画が紹介されます。十年ほど前に、そこで紹介された「唐美人」という作品があり、嶺雪という落款があります。調べると大正から昭和に掛けて姫路を中心に活躍した土屋嶺雪という作家がいます。ほとんど展覧会に出品していませんので全くの無名です。ヤフーオークションでもあまり出てきませんが、それでも注意して見ていると少しではあるが、出ていて、誰も興味がないのか、ほとんどが1万円以下で落札された。その後、他の競合者も現れ、少し落札価格が上がったものの、ほぼ2万円以下で20点くらいの作品が集まった。最終的には25点くらいになったが、これだけ集まり、書かれた年代もわかってくると、作品の変遷や、うまい、下手も区別できるようになった。同じ作家でも作品がうまく描けた時もあれば、そうでない時もある。また加古川の市立松風ギャラリーの館長とも連絡でき、その生涯や他の作品も分かった。さらに以前から知り合いのシンシナティ美術館のホウメイ博士とも連絡しながら、シンシナティー美術館、大英博物館、にる“芳園”という落款のある画家を調べて関係で、香川芳園という幻の作家を見出し、その画家の作品も3点ほど、購入した。さらに田中蘭谷、望月玉泉、三浦文治の作品なども含めて40点ほどをシンシナティ美術館に寄贈した。

 

一戸建てからマンションに引っ越すにあたり、断捨離が必要だったからである。おそらく骨董屋や買取評者に見てもらっても40点で、1万円以下は間違いない。無名の作者の日本画、掛け軸を店においても売れないからです。そこで友人のシンシナティー美術館の東洋部門にいるホウメイさんに聞いてみると寄贈を受け付けるということであった。日本の美術館ではあり得ないことで、深い友情を感じた。通常、家にある無名の安い掛け軸を美術館に寄贈すると言っても、そんなことは不可能で、ほぼ拒絶される。美術専門の引越し業者がやってきて、包装をしてアメリカに巣立った。その後、シンシナティ美術館で毎年出すクリスマカードの一枚として田中蘭谷の美人画が選ばれ、今回は図録にしてもらった。費用もかかり、美術館理事会の承認を得ての上のことと思う。個人的は大変、名誉なことであり、画家にとってもこうした歴史ある美術館に納められたことは大変な名誉である。ありがたいことである。

 

古書店で見つけた陸羯南から伊東重への書簡とヤフーオークションで落札した小説家の佐藤愛子の祖父、佐藤弥六の書は、弘前市立郷土文学館に預けられ、展示してもらっている。一方、知人からいただき、弘前市立図書館に寄贈した明治二年弘前絵図は一度も公開されていない。その理由として絵図の一部にエタ、ヒニンなどの差別的な表現があることで、弘前市はこれを重視して、研究者以外の一般公開を行なっていない。せっかく私から弘前市に寄贈したのに、これでは全く死蔵ということになる。また明治二年弘前絵図については学者が研究していないことも理由の一つのようで、以前の担当者からは研究者のお墨付きがないと指摘された。はっきり言って私が二冊も本を出版しており、今更歴史学者は取り上げない。さらにおかしなことは、この明治二年弘前絵図のコピー、現在、弘前市立博物館にある明治四年未七月士族在籍引越際之地図並官社学商現在図は、博物館でよく展示されている。こちらにも誰も指摘はしていないが同様な表現があるが、これに対しては不問である。弘前市立図書館にはこれまで何度も抗議したが、そのままになっている。同じ差別用語が載っている絵図が、図書館では公開がほぼ禁止されながら、一方、博物館では一般公開され、さらにこれまで何度の出版にも使われている。浪川健治先生の著書「北の被差別の人々 乞食と革師」に記載されているように弘前藩の被差別者の人々は特殊技術を持つ集団として扱われた歴史があり、こうした説明を加えれば、大きな問題とはならないはずで、一刻も早く、一般公開をしてほしい。

 

話はそれたが、それでもアメリカと日本ではどうも寄贈品に対する扱いが違うように思える。公的機関による寄贈のシステム上なんとかしなくては、古い書籍、美術品は、ゴミとして捨てられる可能性もある。





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