2007年5月13日日曜日

下澤木鉢郎2



左の写真は昭和44年青森の青荷温泉(ランプの宿として有名)で、棟方志功、チヤさんと一緒にとった写真です。あの志功がやや遠慮して写っています。郷土の先輩ということでしょうか。「版画集に寄す」に寄せられた文章を読むと、木鉢郎の人なりが彷彿できる。江戸時代なら知らず、これほどあちこちを旅し、句をよみ、絵を描いたひとも珍しいだろう。富岡鉄斎のようなストイックな画を求める旅ではなく、山下清のようにふらっと旅に出る感じである。生前「充分なる素描と観察に立脚しなくて、さらりとした作品の成立はありえない」とよく言っていたようだ。写真下の版画は小さな作品で、昭和8年、限定15部との記載があるだけで作品名はない。昭和8年頃といえば、国画会展にさかんに出品していた時期で、昭和9年にはパリ現代日本版画展に出品した「雪の山」がフランス国立図書館に買い上げられた。白と黒だけで水墨画のような濃淡をうまく表現している。寒い冬の雪の景色の中に訪れる春を予感させる。自刷にこだわったため、あまり数は刷っていないようだ。せいぜい50程度で、今の版画のようにエディションが200-500ということはない。知名度はかなり低いため、評価は低く、大体3−7万円くらいで取引されているようです。弘前市立美術館では相当な数の木鉢郎のコレクションがあり、またこの度できた青森県立美術館でも持っているようです。東京の世田谷美術館は好きな美術館ですが、一度作品を貸し出し、展覧会をしたらどうでしょうか。理想的には奈良美智のA to Zをやったことで有名な吉井レンガ倉庫が早く美術館になり、木鉢郎の作品が飾られることです。さびしい晩年だった木鉢郎にとっても幸せな話と思います。

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