2007年5月2日水曜日

Q&A 治療は早くからした方がよいのですか(反対咬合)


これはよくお母さんから聞かれる質問です。かみ合わせが逆の反対咬合については私は早めの治療を勧めています。反対咬合の場合、上あごが小さい、あるいは下あごが大きい、両者を併せ持つ、骨格性のものが多いようです。この場合の治療法は、上あごの成長を促進する、下あごの成長を抑制する方法が考えられます。20年ほど前まではチンキャップと呼ばれる帽子のようなものを頭にかぶり、パットをあごに当てゴムの力で押さえる方法が一般的でした。一日11時間以上、あごの成長が続く限り長期に使用していました。10年以上使用していた症例も多かったと思います。ところが東北大学の研究で、確かにチンキャップにより下あごの成長は抑制されるが、やめると抑制した分が後で成長する、キャッチアップが見られることがわかりました。また使用時間や患者の協力度により効果が異なるため、あまり信頼のおける治療法としては見なされなくなりました。10年ほど前から上あごを横に広げながら、前に引っ張ってくる上顎骨前方牽引装置(MPA)の研究がアメリカで報告されるようになりました。最近の研究でもチンキャップ単独のものはほとんどなく、このMPAのものがほとんどです。装置は上の写真のような、マスクタイプが中心で、上の口の中の装置からゴムをこの装置に引っ掛けて上あごを前に引っ張ってきます。下あごのパットにも下あごを押さえる力が加わるため、正確には上あごの成長を促進させ、下あごも同時に抑制するものです。顔の真ん中の棒から引っ張るタイプもありますが、両眼の間にいつも棒があるのはかなり気になることから、私のところでは開業以来、このようなタイプを使用しています。。これまでに400例以上使用しましたが、あまり大きなトラブルもありません。二人の娘もこれを使用しました(上の写真は長女)。一日、11時間以上、1、2年使用するようにしています。その後は装置をはずし、経過をみていきます。6-9歳ころが効果が高いように思いますし、研究論文でもそうなっています。ただ遺伝的な要因が強い場合や、上下のあごの関係があまりに悪い場合は、この装置を使っても無理と判断し、経過観察のみを行います。成長終了をまって手術での治療を検討します。
女の子の場合は中学生ころまで経過をみると大体あごの発育については判断できますが、男の子の場合は高校生ころになってもまだあごの発育があり、長期の経過観察が必要になります。患者さんの中にはあまり長期の半年ごとの経過観察に飽きて、途中で来なくなるひともいますが、反対咬合の治療の場合はどうしても成長終了まで見ないといけないのでご理解ください。

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