2009年11月4日水曜日

どこの歯科医院がいいのか



 どこの歯医者さんがいいのかとよく患者さんから聞かれます。当然、私ども矯正歯科医の立場、紹介していただくという立場からは、どこがいいとは明言することはできませんが、内心ではここはやめた方がいいというところも実際にはあります。

 矯正歯科というのは、基本的には自分ところで一般歯科はやっていませんので、虫歯の治療や抜歯はすべて紹介して治してもらうことになりますし、最初の検査でこれまでの治療の善し悪しを判断します。私の場合は、小児歯科に3年いました関係から、子どもの虫歯治療については少しうるさい気がします。

 歯科というのは、医科と違い、かなり職人的な要素があります。どれだけ細かく、きちんとした仕事をするか、それも現行の保険制度ではどんなにきちんと治療しても雑に治療してももらえるお金を同じですので、治療に対する誠意はこういった倫理観、職人魂に依存します。ところが開業医ではサービス業の要素もありますので、かなりきちんとした治療がなされても愛想がないところは、人気がないといった現象がおこります。口の中をみても、それはきちんとした治療が保険でなされ、レントゲン写真をみても見事な根っこの治療がなされていて、感心して患者さんに聞くと、ここは無愛想だから今は違ったところに行っているという患者さんも多いようです。

 例えば、前歯にレジンという充填物を詰める時、色が合わなかったり、つめたところに段差がでることがあります。職人の先生は気に入らないからもう一度再治療するわけですが、患者さんからすればまた痛い思いもするでしょうし、時間もかかり、こういったところはもう行かなくなります。また根っこの治療、これは最も歯科医の力量を示すものですが、きちんとした治療をしようと思うと、大変時間もかかりますし、リーマと呼ばれる針のようなもので長時間、根っこをかき回されるのは苦痛でしょう。ただこのあたりが難しいのですが、ベテランの先生は失敗なく、すぐにできても、新米の先生では失敗ばかりして、時間もかかります。だから丁寧で時間を掛けるというのも、必ずしもいいとは言えないのです。

 私が歯科医の技量を評価する点は、ひとつはきちんとした定期検査をしているかという点です。現在の歯科治療では、とくに歯周病の治療には3か月ないし6か月ないしの定期的なフォローアップは必須であり、これをきちんとしているのが重要です。次に根っこの治療の良否です。根っこの治療はブラインドで治療するためかなり難しい技術が必要です。ただ外からは見えないことから、手を抜こうと思えばいくらででも抜けるところです。根っこの先まできちんと充填されているかがポイントです。術後のレントゲン写真をきちんと見せてくれるところ、痛くなくても定期的にレントゲンを撮りチェックするところがいいでしょう。被せたり、つめたりするのを評価するのは難しいのですが、あまり歯科衛生士や歯科助手がやっているとろころは感心しません。確かに先生よりベテランの助手の方がうまいかもしれませんが、やはり責任の所在となると先生が処置すべきだと考えています。さらに転住した場合、これまでの治療経過を資料とともに渡してくれ、転住先の先生を紹介してくれる先生がいれば、これは名医です(矯正歯科ではこれは当たり前ですが、一般歯科では非常にめずらしいと思います)。

 最近では、根っこの治療に自信がないので、歯を抜いてインプラントをするといった先生もいます。こういった先生と話すと、根っこの治療より統計的なデータからインプラントの方が予後がいいといった論を展開します。確かにその先生がきちんとした根っこの治療を行い、20年以上その患者の経過をみていき、一方、インプラントでの治療でも20年の予後をみて、両者の比較からそういう結論に達したのであれば、説得力があります。開業して5年や10年の先生でこういったこと言うのはおかしなことです。

 職人というのは、自分の仕事に誇りをもつと同時に、できないことはしません。私には自信がないし、よそでやればと言うか、あるいは紹介するものです。患者さんのいいなりにならないし、患者さんに問題があれば怒ります。こういった態度は、患者さんに誤解を招くかもしれませんが、私はこういった職人気質の歯科医が好きです。こういった歯医者さんははでな宣伝もしませんので探しにくいかもしれませんが、きっとすぐそばにいると思います。

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