2011年12月15日木曜日

セファロの増感紙



 現在、事情があって、歯科放射線について勉強している。学生の頃も、歯科放射線の授業はあったのだが、殆ど記憶になく、その後も全く関心のないまま過ごしてきた。開業した時にパントモ、セファロ撮影装置を購入したが、他の先生が購入している機器の中から何となく選んだに過ぎず、それほど研究して購入したわけではない。

 当時、広島で開業していた花岡先生から希土類増感紙を使うようにといわれ、以来増感紙は希土類でやっているが、どういったものか全く理解せずに利用してきた。多くの先生方も開業時に購入したレントゲン撮影機をそのまま使っているのであろう。レントゲン本体は比較的故障は少なく、10,20年は十分にもつ。

 ドイツのレントゲンが1895年にレントゲンを発明した当時は、X線をフィルムに直接当てて、撮影していたが、その後、被爆線量の軽減から、いわゆる増感紙が発明された。100年くらい前の話である。増感紙はX線を一旦、青や緑に発光させてそれを写すというもので、線量は1/100くらいに大幅に軽減された。一方、歯科では歯そのものを写す、デンタルレントゲン写真は、より鮮鋭に撮るため、増感紙を使わない、ノンスクリーン法がとられている。これも以前に比べて感度がずいぶんよくなっている。最初はA、その後、B、Cとなり、現在はDからE、F感度へと移行している。D感度に比べるとF感度では感度が4倍、すなわち線量は1/4ですむ。

 顔面全体を撮影する頭部規格写真(セファロ)は、増感紙を使っているので、被爆線量は比較的少なく、先のデンタルレントゲンの1、2枚分、自然放射線の数日分程度であるが、それでも10歳以下の場合は、健康被害に対する30歳の相対リスクを1とした場合、3倍となる。注意深い使用と、さらなる線量の軽減が望まれる。

 現在、セファロで主として用いられている増感紙は、タングステン酸カルシウム蛍光体のブルー発光性のものであろう。希土類発光体のグリーン発光性のオルソタイプは、医科では10年以上前に普及率は90%を超え、さらに今では急速にデジタル化されているが、歯科ではフィルムがまだ主流であり、さらに二昔前の増感紙が使われているようである。現在、ブルー発光性の増感紙はほとんど生産されず、それに対応するフィルムもなくなりつつある。1975年ころにブルー発光性のものを凌駕する画質を示すグリーン発光性(オルソタイプ)が発明された。すでに30年以上たつ。この増感紙はその高い性能のため、感度を上げても画質の低下が少ないため、欧米を中心として、歯科医院では400感度のオルソタイプが主流となっている。

 ここで私も含めて多くの先生方が誤解しているのは、カメラのフィルムのようにISO64、100、400というものではなく、フィルムはブルー発光性とグリーン発光性の2種類に別れているが、フィルムそのものには感度はなく、増感紙に感度があることだ。Kodakで言えば、グリーン発光性増感紙は、レイネックス250と400しかなく(ブルー発光性増感紙は生産中止)、フィルムはTマットフィルムG/L RAしかない(セファロの場合、エクタビジョンは生産中止)。ブルー発光性増感紙用のフィルムがXマットDBFフィルムとなる。感度だけみればブルー発光性増感紙+DBFフィルムを使用した場合を100とすれば、グリーン発光性増感紙+G/Lフィルムで、レイネックス250で1.2倍、レイネックス400で2倍となる。当然、画質はグリーン系の方がよい。

 ではなぜ、30年前に登場した、こんなに優れているグリーン系増感紙が医科のように急速に広まらなかったのかというと、歯科医院側に一切知らされていなかったことが、その要因であろう。ある程度、知識のあるひとはこんなことはすでに知っていたであろうが、開業時に購入したまま経過した医院では、こういった増感紙の存在自体あまり知らないであろう。というのはパントモであれ、セファロであれ、装置購入時にカセットが附属しており、その詳細については一切知らされていない。さらに歯科用カタログにもあまり増感紙についてはくわしく載っておらず、極光PV-IIといった記載のみである。これをブルー発光性増感紙で感度200とはわからないであろうし、現在でも増感紙のことはカタログで一切載っていない。

 という訳で、不勉強な私のところでも、ようやくレイネックス400カセットを購入し、小児を中心に照射時間を検討しようと思ったが、何しろフィルム自体が縮小傾向のため、メーカーにも在庫がなく、納品まで1か月以上かかるとのことであった。比較した結果、後日お知らせする。

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