現在、自衛隊が想定する中国軍による尖閣諸島侵攻作戦は以下のようになっている。
中国浙江省などの沿岸から出漁を装って出航する500-1000隻の漁船が一気に尖閣諸島を目指し、漁船群の後方には武装した海監や漁政などの政府公船が控え、海上保安庁の巡視船の警告を無視して上陸する。上陸後は演習中の海軍が陸軍部隊や海兵隊を島に上陸させ、橋頭堡を構築するというシナリオである。中国の漁船に乗り込んだ海上民兵を先頭に、海監や漁政などの軍事組織以外の法執行機関を押し出して侵攻するのに対して、ここで日本が真っ先に自衛隊を出動させると、「先に軍事力を行使したのは日本だ」、「侵略した過去を反省していない」と国際世論に訴える(尖閣衝突 問われる日本の覚悟 勝俣秀通 世界の艦船 10月2012)。
これに対する対抗策は、まず尖閣諸島を占領させてから、奪取するという考えである。国際世論で中国の暴挙を訴えながら、まず海上自衛隊、航空自衛隊が出動し、尖閣諸島を完全に封鎖する。航空自衛隊は沖縄の嘉手納基地がベースとなる。日米安保条約は、在日米軍が日本の基地を使えるだけでなく、逆も可能であり、アジア最大の航空基地を拠点に、早期警戒機、補給機を使って、かなりの数の戦闘機を送り込むことができ、さらに機材の整備、補給の点でも嘉手納基地ほど理想的なところはない。一方、中国軍の問題点は、浙江省から尖閣までの距離は330kmであるが、最短距離で戦闘機を送るには、台湾の防空圏内に入ることになり、台湾との摩擦をさけられない。制空権を握れば、ほぼ戦闘は決着がつく。後は、海上自衛隊の護衛艦と潜水艦で包囲すれば、占領軍は万事休すである。
いずれにしても、これは自衛隊単独のシナリオであるが、米軍が加われば、全く中国軍は歯が立たない。もともと中国は旧ソ連と同じく、陸軍国で、海軍、空軍の実力、練度は低い。海軍国家である日本は明治以後の長い歴史、戦後も実際の戦争経験はないものの、アメリカとの数多くの軍事訓練と信頼性の高い武器によって、海上自衛隊および航空自衛隊の実力は高い。核を使用しない通常兵器による局地戦では、現状でもほぼ上記シナリオ通りになるであろう。
逆になぜ中国が尖閣、沖縄に固執するかというと、上図のように中国から見た地図では、日本および沖縄諸島があたかも、防護壁のようにぐるっと囲まれているため、日米による海上封鎖を恐れている。尖閣周辺の地下資源などは大きな問題ではない。石油も含めて、現代中国では海上からの輸送路が途切れると、国家の浮沈に関わる。昔のような自給自足生活はできない構造となっている。
かって中越戦争、ベトナムと中国の戦争があったが、当時、鄧小平はアメリカにまずお伺いをしてから開戦に踏み切った。第二次世界大戦以降、大国間による戦争はあまりに経済的な損失が多く、イラク、アフガニスタンなど弱いものいじめに近い戦争しか発生していない。当然であろう。尖閣諸島についても鄧小平の棚上げ論は、いかにも鄧小平らしい実際的な大人の考えで、これでいいと思う。変に白黒をつけようとするよりは、灰色のままの方がお互いによい場合も多いのは、人間関係でも同様である。
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