2013年6月12日水曜日

そのとき、空母はいなかった 検証パールハーバー と「社長洋行記」


 最近読んだ本は、「蒋介石に棄てられた女 陳潔如回想録」(陳潔如、草思社)、「江戸の地図屋さん 販売競争の舞台裏」(俵元昭、吉川弘文館)、「兵士は裁つ自衛隊史上最大の作戦」(杉山隆男、新潮社)、「言志録」(佐藤一斎、川上正光訳、講談社学術文庫)、「名刀虎徹」(小笠原信夫、文藝春秋)、「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」(村上春樹、文藝春秋)、「秋月梯次郎」(松本健一、中公文庫)、「龍馬史」(磯田道史、文春文庫)、「八月からの手紙」(堂場瞬一、講談社文庫)、「さいごの色街 飛田」(井上理津子、筑摩書房)、「新宿で85年、本を売るということ」(永江朗、メディアファクトリー新書)、そして今回紹介する「そのとき、空母はいなかった 検証パールハーバー」(白松繁、文藝春秋)である。

  週に4、5冊ペースで本屋で買ってきて読む。基本的には「積んどく」はしない主義なので、つまらない時は得意の速読で、飛ばして読んでいく。上記の本でも何冊かは、速読で、1時間くらいで読んだ。小説家、歴史家とはいえ、100のネタを1にしぼって書くひとと、1のネタを100倍した書くひとがいる。ざっと読めば、こういった荒い仕事の本はすぐにわかり、速読モードに入る。逆にあまりの専門的すぎるのも素人の読者にすれば、それは作者の自己中じゃないかと思い、これもわからないから速読する。

 ただ「言忘録」などは1ページ、1ページがあまりに深く、ものすごく時間がかかる。内容が濃すぎて、絶対に速読できるものでなく、4巻買って、仕事の合間に読んでいるが、1巻がやっとである。

 「そのとき、空母はいなかった 検証パールハーバー」もどちらかというと、オタク的な本で、日米開戦のなぞ、ルーズベルト大統領は日本の参戦を知りながら、なぜ真珠湾に警告しなかったのか、どうして日米開戦が始まったかを、アメリカの資料を基づいて、くわしく検証している。実は、面白かったのだが、結局は速読してしまい、最初半分は3時間くらいかけたが、後半は1時間くらいで読んでしまった。ややくわしくすぎる感じがする。

 内容については、アメリカの暗号解読の日本軍に対する有意性を改めて示したもので、よく知られたものである。ただ、これだけくわしくアメリカ側の資料を示され、日本の外交文書の100%、海軍のD暗号にしても20%だが、実際はほぼ100%近く、解読されていたとはっきり示されると、愕然とする。ショックを通り越して、よくこんな状況で戦争したなあ、負けるのは当然であると日本政府の暗号について懐の甘さに本当に腹がたつ。

 著者は、真珠湾攻撃については、アメリカが完全に把握しており、空母は偶然、真珠湾にいなかったのではなく、最新の巡洋艦、駆逐艦も含めて攻撃前に避難させたとしている。そして、あれほど犠牲者が多かったのは想定外であったが、旧式の戦艦のみを真珠湾に残したと結論している。事実であろう。ほぼ外交文章の暗号は完全に解読されていたのである。こういった話になるとミッドウェイーの敗北が論じられるが、真珠湾、珊瑚海開戦から戦争の最後まで日本軍の行動はすべてアメリカ軍が把握していた。勝てるわけなない。

 日清、日露戦争では日本も、こういったインテリジェンスには積極的で、日清戦争後の下関条約では佐藤愛麿などの活躍で清国の暗号を完全に解読して交渉を有利に進めた。こういった成功経験があるにも関わらず、その後、暗号解読、情報漏れには熱心でなかった。それでも陸軍はポーランドの情報局から勉強し、国民党の暗号は解読していたし、日本陸軍の暗号は最後までアメリカ軍には解読されなかった。アメリカも日本陸軍の動向にはそれほど関心もなかったせいもあるが、それにしても日本外務省、海軍はあまりにおそまつであった。少なくとも、海軍、外務省も陸軍と協力するような体勢はできなかったのか、残念である。

 あまり腹が立つので、「社長洋行記」(東宝)を見た。森繁久彌、三木のり平、小林桂樹、加藤大介のからみ面白く、笑わせる。とくに香港の大スター尤敏(ゆうみん)を初めて見た。知人がファンというので、この映画をレンタルしたが、確かに美人である。一部、Youtubeを載せる。松任谷由実は彼女の名からユーミンの愛称をもらったようだ。

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