今年度の日本矯正歯科学会は、九州、福岡で行われた。青森からは遠くてたいへんだったが、鹿児島大学にいた当時の旧友に久しぶりに会えてうれしかった。今回は少し、時間的な余裕があったので、太宰府と熊本城に行ってみた(どちらも天神からは時間は変わらない。40分で熊本までいける)。どちらも初めてだったが、外国観光客が多い。とりわけ太宰府は90%近くが中国人を中心とした観光客でやかましい。
今年度の学会は九州という地で行われたせいか、中国、台湾、韓国からの先生がたくさん来ており、発表も多かった。そのため、発表も英語のものが多かった。一時に比べて矯正用アンカースクリューの発表は減り、研究内容としては若干停滞気味となっている。ただ年々、参加者の数が増え、今回の学会ではあの大きな福岡国際会議場の大ホールで立ち見、通路にもいっぱいの聴衆者がいて、これからはもっと大きな会場が必要かもしれない。
こうした学会では基礎、臨床でも英語発表が主流となるであろうが、個人的に気になっているのは、歯学部の不人気に伴い、今後、学会のレベルの低下が危惧される。図のように近年、医学部と歯学部の偏差値格差がひどい。私立でみると医学部のトップは慶応義塾大学72.8、最低は川崎医科大学59.5であるのに対して、歯学部ではトップは東京歯科大学の53.2、最低は奥羽大学歯学部の39.5となり、平均でみると私立医科大学は63くらいに対して、私立歯科大学では45くらいとなる。科目数が違い比較はできないが国立大学歯学部の平均は58くらいで医学部の私立の最低よりさらに低い。40年前、医学部の偏差値は当時も高かったが、歯学部の国立、私立とも重複していており、東北大学でも試験結果からみると歯学部の1/3は医学部に入れた。
最近のノーベル賞の受賞者の出身大学をみても、東京大学、京都大学以外にも埼玉大学、徳島大学、山梨大学のような偏差値が劣る大学から優れた研究が出ているので、偏差値の低い大学といっても研究レベルが低いとは言えない。ただ私立の偏差値が平均で45くらいとすれば、理系では千葉工業大学、東海大学の工学部あたりとなり、さすがにこのクラスの大学からはノーベル賞レベルの研究は難しい。こうした歯科大学の学生に、優れた研究をさせ、英語で発表、論文を書かせるのは、指導する先生も大変だろう。
一方、日本以外の国では、歯科大学は非常に難しく、韓国ソウル大学でも医学部より歯学部の方が人気が高く、同様中国、台湾でも入学試験は難しい、実際にソウル大学歯学部や北京医科大学口腔医学の連中は非常に頭が良く、英語もうまい。優秀な生徒が集まる。こうした点を考えると、学生の質からみると、日本の歯科大学はアジアの歯科大学に比べて質が落ち、今後、研究においても日本は負けるようになる。歯科医は、頭より臨床の手技が重要なため、学生のレベルが下がっても、イコール臨床のレベルの低下には直接響かないが、こと研究となると、厳しい。今後とも歯科の研究分野でもグローバル化は進むが、次第にアジア諸外国に研究の分野でも追い越されていくだろう。
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