三菱の最新型旅客機MRJの初飛行、感激した。昨年、名古屋空港に行った時に、名古屋のタクシーの運転手からここで初飛行することを聞いたが、MRJが軌道に乗れば、名古屋も活性化すると期待していた。何でもトヨタはケチで、いくらトヨタが稼いでも、中小企業にはその恩恵はないが、三菱のMRJでは部品単価も高く、製造業の多くはこの生産に参加したがっている。
離陸は驚くほどスムーズだったが、着陸はやや風にあおられたのか、少し心配しながらの着陸であった。まあ初飛行としては上出来であろう。飛行機の場合はいくらコンピューターでシュミレーションできたとしても、試験飛行で色々な問題点が浮き彫りにされ、それを改善していく。有名な例が零戦開発での急降下時の空中分解で、その解決には時間がかかった。この試験飛行がスムーズに終了すれば、早期の量産化となろうが、ここで重大な問題が発生すると、量産化に時間がかかり、MRJの場合、今までの開発が遅れているので命取りになる可能性もある。
一方、アメリカ、ヨーロッパで売るためにはアメリカ連邦航空局(FAA)と欧州航空安全庁(EASA)の認証が必要となる。これが大変で、ネジ1本から審査され、膨大の書類が必要となる。三菱一社ではその対応が出来ないので、政府もかなり支援しているが、年々厳しくなる審査基準に適合するのは難しい。先行するホンダジェットは実績のあるアメリカのGEと共同開発という手堅い方法を取り、もうすぐ型式証明が取れ、量産化が行われる。
中国でも最新の旅客機、ARJ21が開発され、現在、FAAの認証を目指している。中国の飛行機で、そんなのは無理と思われるかもしれないが、実はこの飛行機はほぼ組み立てのみ中国で行っているだけで、部品の大部分はアメリカ製である。これらの部品のサプライヤーはすでにボーイングなどに部品提供している会社であり、そうした意味では三菱MRJより有利な面もある。逆にFAAを目指したため、開発に手間がかかり、今ではARJ21は時代遅れになってしまい、MRJと価格以外では競合できなくなってしまった。
三菱は過去にMU300という小型ジェット機を開発した。これは先に開発したMU-2という双発の傑作機の評価が高かったので、より巡行速度を高めたジェット機の開発を目指した。1975年から開発が始まり、順調に1978年、初飛行したが、飛行機事故の余波によりFAAの基準が突如、厳しくなり、型式証明まで2年近くかかってしまった。その間に景気後退などがあり、結局はあまり売れずに赤字となり、経営もビーチ社に移譲してしまった。
富士重工もかってFA200やその後、FA300など、ビジネス飛行機の分野に進出したが、なかなか売れず、撤退している。旅客機の分野では、小型旅客機ではカナダのボンバルディアやブラジルのエンブラエルなども健闘しているが、中型以上はほぼエアバスとボーイングで占められ、寡占となっている。アメリカでも昔はコンベア社、マクドネル・ダクラス社、ロッキード社などがあったが、今やボーイングに収斂している。
三菱MRJもこれからが勝負である。小型機の分野での最大のライバルはボンバルディアとエンブラエルであり、厳しい戦いとなるであろうが、ボーイングに比べるとまだしも勝算はあり、がんばってほしいところである。ただ航空機では保守、管理という重要な仕事があり、これこそが経験を必要とするところで、いかに故障が少なく、修理が容易かは、先行会社には相当差を付けられている。
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