2017年3月23日木曜日

歯科用レントゲン撮影装置の買い替え


 どうも最近、診療所のパントモとセファロ撮影装置の調子が悪い。開業以来使っているものなので、22年目になる。メーカーに問い合わせると、修理部品はないので、修理はできない、壊れたら廃棄と言われた。矯正歯科ではパントモとセファロがないと仕事ができないので、これは困ったことになった。といっても写らないわけではなく、以前と同じ撮影条件で撮ると、パントモ写真が薄く写る。あと十年は仕事をするつもりだが、九年目に壊れると、これはばかみたいなので、早速、新しい機種の選定を始めた。以前、クインテッセンス別冊に「デジタル時代こそフィルムエックス線撮影装置が手放さない(2012)という論文を投稿したくらいの、筋金入りのフィルムエックス線写真の擁護派ではあるが、さすがにこの時代にフィルムエックス線撮影装置を買うのは躊躇われる。
この論文でも述べたが、オルソパントモ写真は明らかにデジタルの方がフィルムより優れている。まず画像が鮮明で、瞬時に見られること、過去の画像との比較が容易なこと、さらにこれは一般的なデジタルレントゲンに当てはまることだが、現像液、定着液、フィルムなどの消耗品がいらないこと、被爆線量が少ない(約半分)などが挙げられる。一方、セフォロレントゲン写真では、多くの矯正歯科医は一度、デジタルでもプリンターで印刷してから、トレースすること、さらに後で分析をするため即時性が必要ないことから、パントモほどデジタルの優位性は少ない。
  
 そこで、歯科材料屋にパントモーデジタル、セファローフィルムの機種を探してもらったところ、日本のメーカー、一社のみがそうした機種を出していた。ところが見積もりを出してもらうと、セファロ機種があまり売れないせいか、デジタルパントモ単独機種より三百万円も高い。それでなお、性能は二十年前に買ったのと全く同じで、撮影はマニュアルという。セファロはマニュアルであれば、実に単純な構成で、管電圧と照射時間で決定される。小児から大人までといっても、管電圧と照射時間の設定は数種類しかなく、私のところのセファロレントゲンはオート設定が十年くらいで壊れてからは壁に貼った設定表に従ってマニュアルで撮っている。例えば、カメラでいうと、シャッタースピードと絞りの関係が、1/60-F5.6, 1/60-F81/60-F11の3種類しか設定のないカメラのようなもので、ほとんどおもちゃのような性能である。これが三百万円アップとは全く解せない。

 結局、不本意ながらセフォロもデジタルのものを探したが、一番安いものは、CCDセンサーをパントモとセファロで共用するもので、セファロ撮影にはハイスピード設定で数秒かかる。人間がじっとしていられるのは、せいぜい2秒なので、数秒はかなり厳しい。セファロ写真を小さなCCDセンサーでスキャンして撮影するためにこの時間がかかる。これでもCCDセンサーの感度が多少よくなって、スキャンスピードが上がっている。これを解決するには、フィルムと同じ大きさのCCDセンサーを使うワンショット撮影だが、見積もりでは一千万円以上かかる。いまやCT撮影機でももっと安いだけに、勘弁してほしい値段である。

 ここ十年くらいデジタル撮影装置の発展を見てきたが、結論からすると、医療用デジタル撮影機はカメラの感覚からすれば、一、二年くらいの進歩しかしていない。デジタルカメラの価格競争は、センサーの低価格によるところが大きいが、こと医療用、X線検出用センサーとなると売れる台数が圧倒的に少なく、センサー部品製造会社も限られている。フラットパネルセンサーなどの新しいものも出てきているが、値段が下がったわけではない。さらにOSも含めて機器の陳腐化だけが早くなり、もはやデジタルX線撮影装置でも部品保管期間が十年程度なので、それ以降は修理不可能となる。歯科医院として、歯科用ユニット、レントゲン撮影器材とも十年程度のスパンで買い替えを迫られる時代になったのかもしれない。

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