2017年3月31日金曜日

矯正治療診断は簡単

フェイシャルダイアグラム N点基準が多い


 矯正治療の診断というと、セファロ分析をして、その結果をもとに治療計画を立てるのが一般的である。分析方法は各種あり、セファロ分析ソフトを使えば、それぞれの分析法の結果を簡単に出力してくれる。最近では、CTを用いて三次元で分析する方法も提唱されており、より詳細に分析することが可能となった。

 ところが、ベテランの矯正専門医に話を聞くと、ほとんど分析はしていないという。私の場合も一応は側方と正面のセファロを撮影しているが、レントゲンをトレーシングペーパーでトレースして分度器で何カ所を計測して終わり、ものの5分で終了する。それも検査もしていない初診時の診断とほとんど変わらないのが普通である。つまり初診時に患者の口腔と顔を見て、大まかな診断とその治療法を患者に説明し、その後、検査をし、分析するが、ほとんど90%以上は初診時の診断の確認に過ぎない。つまり検査をしなくてもだいたい診断できるということである。これはベテランの矯正医であれば、ほぼ同じである。

 矯正治療は、主として顎骨の成長をコントロールする治療と歯を移動する治療に分かれる。それに舌突出癖などの機能的な問題や、先天性欠如歯などの付随的な問題が加わる。この内、顎骨のコントロールについては、上顎前突における機能的矯正装置、反対咬合における上顎骨前方牽引装置などが挙げられるが、こうした治療法は結果がわからない、確実性がないことから、否定するむきもある。さらに言うなら、こうした顎骨の問題、上下のアゴのずれは、セファロ分析で判明したところで、外科的矯正治療法以外は、数ミリ単位での治療は不可能なのである。つまり矯正治療分析をして異常が見つかっても、それを治療することができないことになる。あるいはやってみないとわからない治療法となる。一方、歯の移動については、マルチブラケット装置により三次元的に動かせるので、これだけが確実な治療法と言える。矯正治療分析で上顎切歯の傾斜が標準より10度、唇側傾斜しているとすると、これを歯の移動である程度、標準に合わせるように移動できる。さらにそれによる口元や、かみ合わせの変化を予想できるし、矯正用アンカースクリューなどの加強固定により計画通りにもっていくことも可能となる。つまり矯正治療方法のうち、歯の移動についてはかなり確実性も持つのに対して、顎のコントロールには確実性はなく、治療してみないとわからない面がある。

 こうした治療法の手段と確実性を考えると、セファロ分析のうち、歯に関係する分析値以外があまり大きな意味を持たないことになる。顎に対する分析値は参考にはするが、直接の治療対象にはならない先天欠如歯や習癖などの同じ扱いとなる。こうしたことから、セファロ分析の持つ意味は、ひとつは手術の必要性と成長による咬合の変化を予想する手段であり、顎骨についての分析は大まかな分析で全く大丈夫である。私の場合は、図形分析、フェイシャルダイアグラムによる視覚的な分析で全く支障はない。
 こうしたことから、CTによる三次元的な分析は、手術や術後のシュミレーションには必要であるが、一般的な治療においては、埋伏歯など特殊な症例を除いてほとんど必要ない。CTによる矯正診断を必須とする先生もいるようだが、これは完全に間違っており、矯正診断ミスの多くは、こうした分析結果の不足というより、術者の経験不足による結果の解釈の間違いであるところが多い。

 矯正専門医になって、30年になるが、計測するのは上下切歯の歯軸、下顎下縁平面角、SNASABANBE-lineWits appraisalだけで、それにフェイシャルダイアグラムとの重ね合わせを組み合わせることで、困ることはない。これなら10分くらいで容易に分析ができる。

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