2017年6月24日土曜日

日本近代洋画の誕生


 弘前博物館で「日本近代洋画の誕生—山岡コレクションを中心にー」 という特別企画展を見に行った。ヤンマーディゼルの創立者、山岡孫吉の収集した明治黎明期の日本の洋画を中心とした展覧会であった。ヤンマーディゼルについては、うちの母親の知人が、初代、三代目に使えた番頭のような人の奥さんだったので、この企業の話はよく聞いた。釜本は所属していたのはこの会社で、阪急線からも尼崎のサッカーグランドが見えた。セレッソ大阪の前身である。ただ山岡家は近江商人で、しぶちんというイメージがあり、こうした絵画のコレクターとは知らなかった。

 作品の中には、教科書で出るようなものも数点あり、明治期の日本人洋画家の葛藤のようなものを感じた。他の文化、学問と同様に、明治時代になると、西洋一辺倒となり、それまでのいわゆる日本画というものが時代遅れとなった。浮世絵師や藩のお抱え絵師も、生活に困るようになった。一方、洋画家もフランスに渡り、西洋画の手法を学ぶも、それを独自の画法にまで昇華できず、苦悩していた。今回の企画展はこうした時期の作品が多く、はっきり言って、絵としてあまり感銘を受けなかった。そこには画家の個性が少なく、画材自体は日本の風土を扱っていても西洋画の模倣という要素が強い。作品の価値を金で換算するのは無意味かもしれないが、こうした明治期の西洋画は海外の評価は非常に低いものと思われる。わずかに歴史画に幾分評価がでるかもしれないが、日本での売買される価格になることはない。

 戦前の日本人の西洋画家で比較的国際的に有名なのは、メトロポリタン美術館にある岡田謙三、フランス国立近代美術館には藤田嗣治、ニューヨーク近代美術館にある国吉康雄からいのもので、それとて北斎、広重など江戸期の版画家には全く及ばない。最近は、絵画においてもグロバリゼーションの波から、さまざまな分野の作品が活発に取引される。草間彌生、奈良美智などの現代絵画作家の評価は、日本、海外でも差はないし、逆に伊藤若冲、曾我蕭白、河鍋暁斎などは海外での評価が先であった。こうした個性的な作家の作品は世界的に評価される。

 明治期西洋画家のコレクターというのは、一体どうした観点から作品を収集したか、わからない。作品の質や面白さからすれば、同時期の日本画家の方がよほど優れていると思うし、一種の絵画史資料として集めたのかもしれない。であれば、こうした展覧会も絵画史、西洋絵画史の観点からもう少し説明があってもよかったと思われる。

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