2017年11月18日土曜日

20年後の歯科医院

50年前の歯科医院


 20年後、当然、私は引退しているが、その頃の歯科医院は果たしてどうなっているのか、想像してみる。

 全体として歯科医院数は、今よりは減少しているであろう。現在、50歳以上の先生はほとんど引退するのに対して、新たな歯科医数は最盛期の2/3くらいなので、後、十年で減少傾向に転じ、20年後は今よりかなり減ってくる。一方、う蝕が最も多い世代は老年化し、現在の30歳より若い世代はう蝕がほとんどない世代である。ということは20年後、50歳以下の世代は歯科医院に行くことは矯正歯科か歯周疾患以外には少なくなる。全体の患者数も必然的に少なくなるであろうし、補綴処置など現在、歯科医院の主要な収入源となっている処置も減るだろう。

 これまでの歯科の流れは、子供の頃にう蝕が見つかり、近所の歯科医院で充填(アマルガム、レジン)、それが二次カリエスになり、インレーに、さらに抜髄してクラウンへ、そして根尖病巣ができ抜歯、さらにブリッジ、インプラント、部分床義歯そして最終的に全部床義歯となる。こうした負の連鎖が、これからの世代が断たれるか、遅くなる。一方、歯周疾患については、加齢現象であり、20年後も、根治的な治療法は発見できないであろう。現在、日本歯科医師会では8020運動を進め、80歳で20本の歯は、ほぼ達成されているが、20年後でも8028はなかなか難しい。う蝕が減ることにより、当然、補綴処置は減り、歯科医療費は少なくなり、その分、矯正治療も反対咬合など一部の不正咬合については保険適用となろうし、遊離端欠損についてのインプラントも保険導入されるかもしれない。

 20年後の歯科医院を見てみると、子供の患者は、口腔衛生指導と矯正治療のみ、20-50歳の成人も定期検査と歯周疾患の処置(歯石除去、PMTC)、ようやく50歳以降になって、タービンを使った形成、印象、エンド、補綴が入ってくる。老人が主体となる歯科医院であり、訪問歯科治療専門の医院も多くできるであろう。同様に矯正歯科専門医院も増えるであろうし、エンド、補綴、外科、小児歯科も処置数が減るために、逆に専門医がでる可能性がある。20年後の弘前市の規模は15万人くらいで、現在100軒くらいの歯科医院があるが、おそらく一般歯科が50軒くらい、矯正歯科は10軒、補綴、エンド、外科の専門医が3軒ほど、あるいはこうした専門医が揃った大規模歯科医院が2軒ほどとなろう。

 現行の歯科助手制度は廃止され、歯科衛生士しか診療にはタッチできないし、そうなると歯科衛生士のサラリーも増える。技工物は、補綴の減少に伴い減少するし、その頃にはほとんどの補綴物は、デジタル印象で、データーをインターネットで全国的な大きな技工所に送るシステムとなり、場合によっては海外に送ることになる。ただレントゲン写真や検査データーの一元化は、医科の方が先行するであろうし、その結果がよければ、歯科でも使われ、個々の患者のこれまでのレントゲン写真、検査データー、処置内容もアクセスしてわかるであろう。マイナンバーをカルテ番号と連動させることで、口腔内写真、レントゲン、印象、カルテなどすべてがデジタル化されて、厚労省にデーターが送られる。実際、これとは違うが、ヨーロッパでは滅菌器のデーターがインターネット直結で所轄官庁に送られる。すでにデジタルレントゲンでは撮影データーはすべてバックアップのために自動的に会社のサーバーに送られている。それを厚労省に送るようにするだけなので、医療機器指定の条件にこうしたシステムを組み込ませば、容易に実現できよう。

 未来の20年後を予想するには、20年前と比較することも大事であるが、ここ20年の歯科の歩みを見ると、なさけないことに臨床面の大きな変化はない。さらに40年前に比較しても、矯正治療も含めて格段の進歩はない。インプラントもすでに1970年代にはブローネマルクインプラントが開発され、基本的には大きな変化はないし、矯正臨床でも1970年代には舌側矯正はすでにあり、インビザラインは20年前にできたが、その原型はすでにあった。義歯、充填、エンド処置も40年前とは大きな変化は基本的にはない。変化があるとすれば、院内の感染対策で40年前には手袋の着用は少なかったし、レントゲンも含めてデジタル化が普及した。

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