2019年2月2日土曜日

揚州周延の明治浮世絵




 来月、アメリカから友人が二人、弘前に来る。また米山奨学生として世話している中国人の学生も3月で卒業となる。外国の方に何かいいお土産、記念品はないか、できればあまり高価なものは相手も気を使うので、できれば1万円以下のものが望ましい。今の時期は、ひな祭りの人形がデパートで売っていて、小さなものなら予算範囲内で買える。また最近、若者にも人気のあるこけしも、可愛くていいのかと思った。ただちょっとありきたりで、面白みに欠ける。もっと日本的で、できれば将来価値があるものはと思って見つけたのが、浮世絵である。

 浮世絵といえば、日本を代表する美術であり、外国人にもよく知られたものである。江戸時代の広重や北斎の浮世絵は高価でとても1万円以下では手に入らないが、近代のものであれば、買えるかと思い、ヤフーオークションで“明治 浮世絵”で検索すると、月岡芳年、小林清規、歌川国貞などの作品が出てくる。スタート価格は1000円くらいで、うまくやれれば安く手に入ると考え、その中から女性を多く扱った揚州周延(ようしゅう ちかのぶ)を検討した。大型浮世絵が3240円くらいから始まっている。版画は刷りのエディション、早い刷りが高く、後の刷りが安く、またコンディションの違いが値段の差となる。まず本物の値段がいくらくらいするか、“周延 値段”で調べると、“東風俗福つくし”シリーズで15000円から25000円くらいであった。これまでの経験から業者の買取価格はこの1/10、インターネットオークション価格はこの半分から1/3と推測した。すなわちオークションの価格は5000円から10000円くらいとなる。さらにエディションについては、このシリーズの版画が近代デジタルライブラリーに収蔵されているので、これを最高のものとして比較できる。

 最初に落札したのは“馥郁”という作品で、梅の香りを楽しむ人々が描かれている。非常に綺麗な作品であるが、この段階ではライブラリーとの比較は思いつかなかったので、後で比較すると、左の女性の打掛の柄が不鮮明であり、また制作年月日が入っていないことから、後刷りの可能性が高い。それでも4600円で買えた。次に買ったのが、“福寿草”というもので、明治時代には福寿草を売る夜店があったのだろうか、これは十分にライブラリーの絵と比較したし、コンディションも良さそうである。落札価格は7750円であった。届いた作品を見ると黒の外套が本当に美しく、キラキラ光っている。線も細くて綺麗で、美しい。これは買ってよかった。この二つはアメリカから来るお客さんにそのままあげよう。ボール紙に挟むか、円筒のボール紙に入れればかさばらず、スーツケースに入れられる。中国の学生は若いので、もう少し明るいものを探した。“ふくりん”という作品は色の対比が美しいのでこれを買うことにした。あまり競う人もおらず、4600円で購入し、いつもよく利用する額縁のタカハシでそれにあう大きさの額と額装マットを購入した。2682円となった。二つで7282円となる。まあ予算範囲内におさまった。喜んでくれるといいのだが。

 今回、始めて明治期の浮世絵版画を買った。これまで浮世絵といえば江戸時代、明治のものなど大したことはないと考えていたが、その作品を見ると版画そのものの技術は非常に高い。明治期の木版画が、日本版画史上、最高の到達点と評する人もいる。明治になると西洋から新しい色、顔料が入り、一方、これまでの浮世絵は廃れたため、より細かい、多色で精巧な作品が作り出され、そのレベルは驚くほど高い。一方、浮世絵コレクターからすれば、赤、ピンクなど原色は派手すぎて嫌いという人も多いだろう。ただ“Chikanobu”と検索すると驚くほどたくさんヒットする、とりわけ”Toyohara Chikanobu”Wikipediaはたくさんの画像があって詳しい。

 欧米ではこうした明治の浮世絵も人気が高く、これまでもかなり流出しているのだろう。ある意味、日本美術の海外への流出は、明治初期、戦後にピークがあったが、床の間、和室のなくなった現代もまた一つの流出ピークなのかもしれない。私も揚州周延の3つの作品を海外に出すのだから。周延の作品は多く刷られ、残っている作品も多いのだろう。それにしてもこうした優れた作品が5000円程度で買えるのは信じられない。作品内容を考えると将来的にはもっと高くなってもよい。

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