2021年6月2日水曜日

こども庁と矯正治療

 


 菅首相は、子供に関連する諸課題に一元的に取り組み「こども庁」の創設に意欲を示した。これからの日本の未来を担う子供、あるいはそれを育てる若い国民に対する教育や福祉政策を、分野、関係省庁をまたいで所管しようという試みである。確かにここ数年、保育料の無償化など、画期的な政策が実現され、働く若い夫婦にとっては歓迎されているが、まだまだ出生率を見ても減少傾向はないものの、増加しているとは言えない。結婚率の上昇とともに、少なくと出生率が2以上にならないと人口減少は止まらない。フランス、イギリスなどの先進国も少しずつではあるが出生率の増加が進んでおり、日本でも子供を育てる環境を整備することで、同じような増加ができると思われる。

 

 それに対しては、「こども庁」のような一元化する組織を作り、出生率を増加する政策を積極的に進めることは大きな意義をもつ。個人的には、まず教員を増やし、少人数学級にすることである。一クラスの人数が減ると、教師の目が届き、落ちこぼれが少なくなる。さらにいうなら退職後のベテラン教師を臨時職員で雇い、個別教育を徹底するのもよかろう。目標は落ちこぼれをなくすことと、不登校児を減らす、あるいはこうした不登校児については個別教育を行い、教育水準をあげることが重要である。不登校児の中には必要な教育を受けられず、成人になっても仕事に就けない場合もある。

 

 歯科においては、まず子供達の虫歯が減り、あまり歯科医院に行くことが少なくなった。感覚的に言えば、25歳以下の若い世代では、1/3くらいはほぼ虫歯はなく、歯科医院に行ったことがない。今後、こうした人はさらに多くなろう。健康保険料を払っているのに、歯科治療費に使っていないという不満があろう。平成20年度で見ると、歯科医療費のうち、0から14歳は1977億円、割合では7.7%15から44歳では7072億円、27.4%に対して、65歳以上が8447億円、32,8%となっている。0歳から15歳までの歯科医療費はますます減少することになり、こども医療における歯科の役割は、予防活動に限定されることになる。

 

 一方、子供を持つ若い世代にとって、不満なのは、なぜ矯正治療が保険適用にならないかという点である。すでにヨーロッパでは子供の矯正治療は保険でカバーされているし、アメリカでも民間保険でカバーされている。矯正治療には非常に費用がかかるため、現状では家が裕福であれば、子供の矯正治療を受けさせられ、子供は綺麗な歯並びとなるが、そうでないと不正咬合であっても治療を受けられないことになる。実際に、アメリカでは歯並びの悪い人は、子供のころ治療を受けられないほど経済的に困った家で育ったと思われる。日本でもそうした傾向が出て、歯並びで育った家のレベルを推測するようになるかもしれない。歯並びは見た目だけではく、物を咬むという点では重要であり、それを放置するのは問題であるだけでなく、社会心理的な問題として不正咬合をコンプレックスとなることがある。


 是非とも、「こども庁」ができたなら、子供の矯正治療の健康保険化を議論してほしい。子供虫歯が減った分をここに回すなら、医療費の総体としては増加しないはずであり、健康保険料の世代による恩恵格差も少しは解消できる。


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