2022年6月8日水曜日

インビザライン の失敗、結局、マウスピースを入れれば治ると思っている

 


最近は暇があれば、youtubeのインビザラインの動画を見ている。個人的には30年以上しているワイヤー矯正以外はしようと思わないし、講習会にも行こうと思っていない。このまま引退する予定である。

 

矯正先進国のアメリカでは、全矯正患者の1/3くらいはマウスピース矯正になっており、今後ともこうした傾向は増加していく。そこで、現状での問題点を探るために、日本のインビザラインの第一人者である尾島賢治先生の講演をyoutubeの動画で見ている。尾島先生は、大学の矯正科で矯正歯科の基礎教育を受け、ワイヤー矯正もしている先生なので、その考えは動画を見ていても納得いく。

 

動画を見ていると、矯正歯科における診断と治療法はワイヤー矯正であれ、インビザライン矯正であれ、同じであり、治療法が違うというだけである、その上で、尾島先生はこれまでインビザライン矯正での治療が難しかった症例をいろんな方法で解決している。インビザライン社からきたアライナーを単純に使うだけでは無理で、いろんな方法も駆使しないと治らないことを動画で訴えている。ただこうした解決法は、インビザラインでも次第に複雑となり、その理解と応用には、矯正歯科の基礎知識(セファロ分析を含む)とワイヤー矯正治療の理解を必要とする。ワイヤー矯正を習う時間がない、経営的に自費診療を増やしたいとする先生は、理解するのは難しいであろう。

 

先日、インビザラインで2年以上治療したが治らず、外科的矯正になった患者さんに、前の先生のところでの治療を聞くと、3ヶ月ごとに来院するが、先生は予定枚数の何番目であるかを確認するだけで、治療の進行についての説明は一切なかったという。五分ほど見て口腔衛生指導をして治療は終了ということである。あたかもインビザライン社からくるマウスピースを使って言えば、治ると思っている。同様なことはワイヤー矯正でもあり、5年間、矯正治療したが治らず、結局私のところで外科矯正になったが、この先生も毎回ワイヤーを変えるだけで、ゴムをかけたり、抜歯して治そうという行為は一切ない。ワイヤーを変えれば、自然と治ると思っているのだろう。

 

 

 

こうした光景は以前にも見た記憶がある。最初、日本にストレートワイヤーが紹介されたのは1970年代、当時、スダンダードエッジワイズを使っていた先生から、こんな治療では治らないと言われていた。その当時の雰囲気では、ストレートワイヤーでは誰でもまっすぐなワイヤーを入れておけば治るような宣伝をしていた。そのため一般歯科医向けのストレートワイヤー矯正治療の講習会が、当時、人気があったが、結局は、実際の治療はそんな簡単なものではなく、ワイヤーもほとんどの患者で曲げなくてはいけないし、ゴムの使用など、ほぼスタンダード矯正治療と変わらず、いつのまにか一般歯科医はやらなくなった。同様なことは、舌側矯正もインコグニートやハーモニーなどの決められたワイヤーを入れれば、治るような宣伝をしていたが、やはり患者ごとに個別の屈曲やゴムの使用が必要となる。現在、アメリカでは舌側矯正をするところはかなり少なく、日本でも多くの矯正歯科医は面倒なために症例数は少ない。一部の非常にうまい舌側矯正の専門医を除けば、私のような一般の矯正歯科医はあまり得意としていない。それでも舌側矯正で治療できない症例はほぼなくなったといえよう。

 

一方、インビザラインによる治療も、尾島先生の症例を見るとかなりのことができるが、ワイヤー矯正に比べて難しそうなのは、ゴムを使った治療となる。反対咬合を非抜歯で治療する場合、私はマルチループ、ゴムメタルによる治療を行う。強力なゴムで咬合平面を反時計回りに動かし、開咬の治療も同様な方法を用いる。これはインビザラインでは難しそうである。またワイヤー矯正では最終段階になると、前歯部に強力なアップアンドダウンゴムを用いて全体的に咬ましていくが、これもインビザラインでは難しいであろう。またインビザラインでは開咬の治療として大臼歯の圧下を勧めるが、どうしても前歯部の提出が必要なことがあり、これもゴムがかけにくので難しい。

 

結論としては、インビザラインも不正咬合を治す治療法の一つであり、抜歯が必要なこともあれば、手術が必要なことあり、最初の検査でそれをきちんと分析、診断し、その上でどの治療法が向いているか、あるいは患者が希望するかを決めていく。一般歯科医におけるマウスピース矯正がうまくいかないのは、この診断ができていないことと、その上で抜歯が必要と決まった場合、抜歯してのインビザライン治療ができないことによる。ワイヤー矯正においても、一般歯科医は歯を並べたらおしまいと考えており、きちんとしかみ合わせや前歯の関係を確立するのは狙っていないのか、できないかある。これはストレートワイヤーが出現した時と全く同じ流れであり、今後はインビザラインも一部のインビザライン専門医とワイヤー矯正の矯正歯科医が使っていくものとなるであろう。セファロ撮影もしない歯科医院でのインビザライン の治療は、成人患者からのクレームが殺到し、いずれ淘汰されていくであろう。




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